2022年のトレンドは、「新欧風カレー」で決まり!

日本最古のカレーであり、“日本食”としての地位を確立した「欧風カレー」。今回は、その成り立ちなどを通して、今年、大きなトレンドとなりそうな「新欧風カレー」について紹介します。

続々誕生中の「新欧風カレー」とは

明治時代にイギリスから日本に伝わったカレー。日本でカレーが食べられるようになって以来、多くの食品メーカーや飲食店、さらには各家庭が工夫を凝らし、日本中に数えきれないほどのオリジナルのカレーが生み出されてきました。

日本で独自の進化を遂げてきたのが、ジャパニーズカレーとも呼ばれる、今の「欧風カレー」です。

そして今年、もう一段階の発展を見せ、トレンドになると予想されているのが、その名も「新欧風カレー」です。

新欧風カレーは、これまで以上にさまざまな角度から、カレーの味やビジュアルなどが追求されています。新欧風カレーの系統別特徴は、次のとおりです

新欧風カレーの系統別特徴

新欧風カレー体系図
スタンダードな欧風カレーから多岐に進化しています

<具材特化>
〇高級プレミアム系~松坂牛・名古屋コーチン・黒豚・飛騨牛などのブランド肉を使用
〇欧風キーマ系~欧風カレーとキーマカレーをミックスした新しいカレー
〇ビーフシチュー系~ビーフシチューをベースにしたカレー
〇魚介系~エビやイカ、アサリ、ホタテなどを使用
〇フルーツ系~リンゴやバナナなどさまざまな果物を使用
〇新三種の神器系~タマネギ・ジャガイモ・ニンジン以外の野菜を使用 

<スパイス特化>
〇スパイスカレー系~複数のスパイスを組み合わせて使用
〇新スパイス系~カカオや八角などを使用

<トッピング>
〇新カツカレー系~カツの素材や味、大きさ、盛り付けなどにこだわったカレー

<フュージョン>
〇ビジュアル系~楽しさやインパクトのある盛り付けで“映える”カレー
〇シーン別系~筋トレ中の人向け、アウトドア用など場面に合わせたカレー
〇新感覚系~土鍋で炊いたごはんと一緒に食べるカレー など

<食べ方スタイル>
〇あいがけ系~一皿に複数のカレーを掛けて食べるスタイル

日本のカレーの原点「欧風カレー」の歩み

なぜ今年、新欧風カレーがブームになるのか、その理由をお伝えする前に、これまでの欧風カレーの流れを確認しましょう。

日本に広まっているカレーには、大きく分けて「インドカレー」と「欧風カレー」があります。そもそも、インドカレーと欧風カレーは、なにが違うのでしょうか。

インドカレーがいくつものスパイスを組み合わせて味を調えるのに対し、欧風カレーはカレー粉やカレールウ、出汁、ブイヨンなどを使用します。
またインドカレーには、宗教上の理由からビーフやポークは使いませんが、欧風カレーは、工夫次第でさまざまな野菜や肉類を入れて作ることが可能です。旨味やコクのある味わい、とろみのある口当たりも欧風カレーの特徴です。

現在、家庭などで作り、一般的に食べられているのは欧風カレーです。そこで必ずと言っていいほど使われているのが、タマネギ、ジャガイモ、ニンジン。“三種の神器”とも呼ばれている野菜です。

この3種類が広く使われるようになったきっかけは、海軍にあると言われています。タマネギ、ニンジン、ジャガイモの保存性の良さから、海軍の定番メニューのカレーに使っていたとか、ビーフシチューを作るつもりだった料理長が、誤って肉ジャガに仕上げてしまったため、急きょカレーに変えたとか。

このほか、1911年(明治44年)出版の料理本『洋食の調理』の中で、「ビーフカレーライス」のレシピの材料に、タマネギ、ニンジン、ジャガイモが記載されていたことで家庭や飲食店などに広まったのでは?という説もあります。

欧風カレーの3種の神器とも言われるじゃが玉にんじん+肉

1982年(昭和57年)には、全国の小・中学校の給食に取り入れられ、まさにカレーは国民食として不動の地位を獲得しました。

さらに2010年代には、複数の大手カレーライスチェーン店が海外に進出して成功するなど、今や日本のカレーは世界的に受け入れられています。

新欧風カレーが注目される背景とは?

欧風カレーは、とても身近な存在で、普段あまり意識することはないかもしれません。しかし、近年は、欧風カレーの魅力が再注目・再認識されるようになりました。それには、次のような背景があります。

●日本で長く続いているインドカレー人気が、逆に欧風カレーを後押しすることになりました。欧風カレーは、昔から日本人の身近にあり、日々、食べる機会の多い料理です。また、具材やトッピングを変えるなどして、家庭でも手軽にさまざまな工夫ができるのも、親しまれている理由です。「インドカレーも良いけれど、食べ慣れたカレーはやっぱりおいしい」と感じ始めた人たちによって、欧風カレーが見直されています。

●2020年にイギリスで起こった“カツカレーブーム”で、日本人がカツカレーに目を向けるようになりました。「カツカレー」は、言うまでもなく、欧風カレーにトンカツやチキンカツ、メンチカツ、ハムカツなどをトッピングした、日本で考案されたメニューです。海外で大きな評判になったことで、日本でも改めてカツカレーのおいしさが確認され、注目を集めています。

●インドカレーやスパイスカレーと距離をおくのではなく、コラボするかのように、さまざまなスパイスを取り入れた欧風カレーが登場し始めています。インドカレーの良さと欧風カレーの良さを併せ持ったカレーです。この場合もインドカレーの人気が欧風カレーの可能性を広げることにつながったと言えます。

だから、新欧風カレーがブームになる

うして、さらなる開発の機運が高まった欧風カレーは、現在、すでに「新欧風カレー」として新展開しています。そして、今年は、次のようなことから新欧風カレーが一大ブームになると予想されています。

●日本にカレーが伝わったのは、1872年(明治5年)。それ以来、明治・大正・昭和・平成・令和と、いつの時代においても日本のカレー人気は高止まりです。しかし、ここしばらく日本では、インドカレーブームが続いています。そんな中で迎えた2022年は、日本人がカレーと出合って150年を迎える節目の年。これを機に「新欧風カレー」で巻き返しを図ろうとする動きがあります。

●欧風カレーの特徴の一つは、自由度が高いことです。定番ではない食材を使ったり、見せ方を変えたりと、アイデア次第でオリジナルの一皿を作ることができます。そのため、日本では日々、新しい欧風カレー「新欧風カレー」が生まれています。これまでにない味を求め、情報交換をしながら食べ歩きを楽しむ人たちも増えています。

●新型コロナウイルスの拡大で、一時期、外出自粛を余儀なくされ、外食の機会も激減しました。自宅での食事回数が増えるに伴い、手軽に作れる欧風カレーが食卓によく上るようになりました。これまであまり料理をしなかった人にとっても、カレーは挑戦しやすいメニューです。しかし、何度も食べていると当然飽きてしまうため、少しずつ工夫するようになり、各家庭で新しい味わいの欧風カレーが誕生していきました。

“欧風カレーから新欧風カレーへ”。これが、日本へのカレー上陸150周年の今年を表すキーワードになりそうです。

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