【楽しむ】隠れ家カフェでドイツのクリスマスマーケットに思いを馳せる

オープンして44年の珈琲専門店グッチ(埼玉県ふじみ野市)。一歩足を踏み入れると、海外の色とりどりの絵皿やカップなどに目を奪われます。これらはオーナーの滝口喜久江さんが海外を旅するたびに買い集めてきたものです。これまでに121ヵ国を旅してきた滝口さんに、今も心に残るクリスマスを聞きました。

店内には数々の絵皿が。これはクリスマスマーケットの風景が描かれたもの

旅の土産ものに囲まれていると元気になれる

「旅の品をみると、その日のことが思い出されます。土産ものに囲まれていると元気になれます」と滝口さん。

そんな話を聞きながらコーヒーを注文。独特な雰囲気の店内は、オープンして44年という長い歳月を物語るよう。豆をひく音を聞きながら壁を眺めていると、美しい飾り皿の数々が目に留まりました。

各国の飾り皿が壁一面に並ぶ。写真はオーナーの滝口喜久江さん

今でも心に残るクリスマスをたずねると「ドイツ・フランクフルトのクリスマスマーケットです」とこたえてくれました。

金融街でありながら絵本の中にでてくるような木組みの家が混在するドイツのフランクフルトは、レーマ広場を中心に11月から12月にかけテントの店が並びます。滝口さんは、規模が大きいこの伝統的なクリスマスマーケットを見たくて、ドイツを何度も訪れたといいます。

「テントにはろうそくの火がともる家型のキャンドルホルダーや、はしごを上るサンタクロースが飾られて、マーケットの明かりがとてもきれいです。ここにクリスマスの準備をする地元の人が集まります。子どもを連れた家族も多いですね」「40㎝くらいのソーセージが挟まれた大きなホットドックが名物で、夜食にはこれを食べました。ひとりでは食べきれないと思っても、結局全部食べられるんですね」と語ります。

思わず購入したという木組みの家型キャンドルホルダー。中にろうそくの明かりをともします

カップが欲しくてホットワインを注文

「クリスマスの時期はとても寒いので、グリューワインと呼ばれるホットワインを多くの人が注文します。ワインが注がれるカップは毎年デザインが変わり、そのうえ店ごとにクリスマスの柄が異なるから、テントをのぞいてチェックしてまわりましたね。私はお酒が飲めないのですが、カップが欲しくて、気に入ったデザインを見つけたら注文し、持ち帰りました。返却すればカップ代金が返ってくるので、戻す人も多かったですね」

何度も足を運んで集めたお気に入りのカップ

18年前から価格が変わらない同店のコーヒーは350円、昔ながらのナポリタンは550円。

◆取材を終えて

オーナーの滝口さんに店を長く続けてこられた秘訣(ひけつ)を聞きました。「営業職の夫の趣味が珈琲店巡りで、ここに家を建てると同時に珈琲専門店を始めました。おかげさまで軌道に乗り、数々の旅ができたのは幸せなことだと感じています。その後、時代も変わり、多くの店が閉じていきました。7年前に夫が他界し、状況が変わりましたが、この店があって本当によかったと思っています。私はお酒も飲まないし、外出もあまりしないので、店を続けることで人と話をするのがちょうどいいんです」。めまぐるしい社会だからこそ、ゆっくりと時間が流れるこんな店に行きたくなります。

取材日:2021年11月29日
磯崎弓子