「せっかくのお休み。子どもたちを遊びに連れて行ってあげたいけど、雨だし……」。そんなとき、太古の謎にせまってみるのはいかがですか? 小鹿野町の「おがの化石館」を紹介します。
パレオパラドキシアの謎
おがの化石館には、海辺の奇獣「パレオパラドキシア」の復元骨格模型が展示されています。
パレオパラドキシアは、今から約2000万年前から1100万年前まで、日本と北アメリカ西海岸の海辺で生息していたといわれる哺乳類です。
その化石が1981年、おがの化石館と同じ地層が分布する小鹿野町の長若地内から発見されました。
展示されている全身骨格復元模型は、上あごの犬歯部分が小さく永久歯もはえていないため、人間にたとえると、小学生くらいといわれています。
パレオパラドキシアはカバに似ているため、カバの祖先だと思われがちです。
しかし、分類学的には束柱目(そくちゅうもく)という分類で、カバとは異なります。
現在似たような骨格を持つ生物がいないため、謎が多い生物といわれています。
秩父地方で採取された化石コーナー
同化石館1階には、小鹿野町や秩父地域で採取された化石も展示されています。地域別にとれた化石が展示され、小学生に人気のコーナーだそうです。
「貝やカニ、サメの歯などの化石がたくさん展示されているため、夏休みには多くの家族連れが来てくれるんです」と、同化石館の加藤優子さんはうれしそうに話します。
秩父層群は、ハワイなど南の海域からプレートに乗って移動してきた古生代の石灰岩と、中生代の堆積物とが混じりあいできた地層です。南の海で見られるサンゴの化石が、小鹿野町でも発掘されています。
国指定天然記念物「ようばけ」を眺めよう!
2階には、日本や世界で採取された古生代や中生代の化石が展示されています。
古い化石が多いため、子どもだけでなく、化石の学習や研究で訪れる大人も多いそうです。
2階のバルコニーからは「ようばけ」が眺められます。
高さ約100m、幅約400mにおよぶ地層が露出しているもので、“夕暮れになっても太陽の当たる崖”という意味で「ようばけ」と昔から呼ばれています。
パレオパラドキシアの化石とともに、国指定天然記念物に指定されています。
この地層は、約1550万年前の新第三紀の地層が水や風などで削られ、秩父盆地に積みかさなりできたもの。その周辺は、多くのカニの化石が産出されるそうです。
同化石館の駐車場から、ようばけまでの距離は徒歩10分ほどです。
「見学することもできますが、崖崩れが多発する場所でもあるため、川を渡らずに見学してください」と加藤さん。
◆取材を終えて おがの化石館には毎年多くの子どもたちが学校行事や家族連れで訪れます。 国内外の珍しい化石の数々が展示されているほか、夏休みには小学生を対象に、化石勉強会や、講師を呼んで地層・化石教室を開いています。 しかし今年度(2022年度)のイベントは、コロナ感染症対策のため現在検討中とのことでした。 室内施設なので、天候を気にせずに遊べる穴場スポットです。 取材日:2022年4月27日 田部井斗江