【宮代】町の魅力に引き寄せられて イタリアンレストランのオーナー夫妻が作る、宮代野菜と米粉のパン

イタリアの田舎町に似た宮代町に一目ぼれ

 埼玉県宮代町の第三セクターに「新しい村」という観光農園があります。農業体験や昆虫採集ができるほか、地元産の農作物を味わえるカフェや市場を備えた施設です。その市場やカフェで、宮代町に魅せられた夫妻が作るイタリアパン・イタリア菓子を楽しめます

新しい村内の工房で焼き上げているのは、季節のピザやフォカッチャなどのイタリアパン、小麦粉・卵・乳製品を使わず米粉のみで作った焼き菓子、ティラミスやパンナコッタなどのデザートです。パンと焼き菓子には、宮代産の野菜や米粉を使用。米粉は新しい村で収穫したお米を粉にしています。

「森の市場・結」の正面左角に「IL PINOLINO(イル ピノリーノ)」のコーナーが。イタリアパンと米粉のお菓子が並んでいます

オーナーは、越谷市や宮代町でイタリアンレストランを運営する湯浅克也さん・彩子さん夫妻。イタリアに料理留学をしていた夫妻は、イタリアの田舎町に似た宮代町に一目ぼれ。新しい村に使われていないパン窯を見つけ、出店を即決したそうです。

「これからの宮代町が楽しみ」と目を輝かせる湯浅克也さん・彩子さん夫妻。育児、仕事、宮代町の魅力発信に走り続ける毎日です

夫妻は、パン生地には宮代産米粉と埼玉県産小麦粉「ハナマンテン」を使いたいと思っていました。しかしイタリア料理のシェフではあるものの、パンに関しては素人。ハナマンテンはうま味に富む一方、パン生地としては扱いにくく、パンの味が安定せず、悩む日々が続いたそうです。そんなとき、ある地元ベーカリーのスタッフが、粉の扱い方をみっちり教えてくれたそうです。

夫妻の話には、宮代町の人々とのつながりや出会いがたくさん登場します。「宮代町は小さなコミュニティなので、距離感が近く、つながりやすい。それはあの人に聞きな、と教えてくれる」と彩子さんは言います。

「宮代町はこれからの時代に求められる場所だ!」その魅力を発信したい

宮代町には、赤い校舎が特徴の「町立笠原小学校」や「進修館」などユニークな建造物も多く、「文化的なにおいがするのも魅力」と語る克也さん。

「自然に囲まれ、自然の成り立ちをこんなにも肌で感じられる場所は他にない。ここは、これからの時代に求められる場所だと思うんです」と話す彩子さんは、新しい村に出店している仲間や生産者たちと協同し、食育やエコといった食と暮らしをテーマにした講座なども考えているそうです。

自然、文化、人とのつながりが息づく宮代町。彩子さんは、その魅力をもっと発信したいと言います。
「パンを通じて宮代町の町おこしにつなげたいんです。若い人にもっと来てほしい」と熱意を込めて語ってくれました。

取材日:2021年3月22日
小林聡美