八高線・明覚駅から車で約15分。急こう配の山道を登った上に、1240年ごろ建立された由緒ある寺院「全長寺」があります。
大自然に囲まれた、この寺の本堂でいただく「山姥(やまんば)カレー」は、動物性タンパク質の代わりに大豆ミートを使用した精進カレーです。
豊かな香りとピリッとした食感が楽しめる山椒(さんしょう)の炊き込みご飯と、4種のスパイスが入ったキーマカレーと、季節によって変わる副菜がワンプレートになっています。副菜は地元産の旬の食材を使っていて、中でも酢キャベツは、開店当初から人気の一品。
酢キャベツを食べると、スパイスの刺激が和らいだという声も聞かれ、スパイスが苦手な人も安心だとか。素揚げにした「パパド」は、インドからの直輸入。パリッとした食感がアクセントになっています。
住職の奥様でもある店主の森田恵子さんは、店を始める前に、ときがわ町在住で南インド・ケララ州出身者から直接スパイスについてしっかり教わりました。基本を学んだのち、独自にアレンジを重ね、最終的に大豆ミートのキーマカレーにたどりついたそうです。
「山姥カレー」は、メニュー名でもあり、店名でもあります。このインパクトのある店名は、「あなたにぴったりね」と、友人に付けてもらったとのこと。山の上の自然豊かな環境にマッチしています。
「なぜ、お寺でカレーをつくるの?と聞かれますが、お釈迦(しゃか)様はカレーの国・インドから来ているので、実は無関係ではないのです。きっと、スパイスの料理を食べていらっしゃったと思いますよ」と森田さん。
同店を訪れる人の7~8割はリピーターだといいます。ときがわ町観光協会理事を兼任する森田さんは、ときがわ町を観光で訪れる人がリピーターになってくれるのが理想ですと語ってくれました。
「全長寺には良い“気”が流れていると、ときどき言われます。気持ちが整う空気感があると私も思います」と森田さん。山の上にある同店は、気候の良い4月~11月限定で開店。食事希望の場合は3名以上で予約を。
◆取材を終えて リピーターが多い同店。私もリピーターの友人に連れて行ってもらいました。副菜たっぷりの優しいカレーと森田さんの人柄にひかれたことが取材のきっかけです。自然に囲まれた開放的なお寺でいただくカレーは穏やかな気持ちにさせてくれました。 取材日:2021年7月22日 水越初菜