【春日部】牛島の藤「藤花園」樹齢1200余年 美しい藤紫に染まる庭園を眺める 

春を満喫できる4月。桜の次は、紫の藤の花の季節です。
今回紹介するのは樹齢1200余年の藤の木が美しい花を咲かせる庭園「藤花園」です。
春日部駅から車で約10分、または東武野田線「藤の牛島」駅から徒歩10分ほどの場所にあります。
毎年、藤の開花シーズンのみ開園する同園。今年2022年は4月11日(月)~5月5日(木)の開園を予定しています。

樹齢1200余年の木から広がる藤棚

樹齢1200余年の藤は弘法大師のお手植えとの言い伝えも

同園には大きな藤棚が3カ所。最も古い木は樹齢1200年余りを数え、国の特別天然記念物に指定されています。樹齢800年、600年の木もあり、どれも毎年美しい藤の花を咲かせています。

樹齢1200年余年と言われる藤には由来があるそう。
「弘法大師がお手植えした藤だとも言われています」と、同園代表の小島一恵さん。
かつて真言宗の連花院(れんげいん)という寺でしたが、明治7年に住職が高野山に移り、廃寺となりました。所有者が何度か変わった後、小島家が継承。当時は居住地でしたが、庭園を見たいと多くの人が訪れたことから、庭園として開園したそう。

上から藤棚を見渡すことができるのも同園の特徴。花芽の状態(左)と満開の様子

1本の木から広がる藤棚は700㎡

樹齢が長い木は年を重ねるほどに根本が割れ、曲線を描きながら幹が分岐しています。樹齢1200余年の木は根まわりが10㎡、藤棚の面積は700㎡(25mプール約2つ分)にも及びます。
開園中、樹齢の長い木の根周辺には近寄らないよう制限が設けられます。根元やその周辺の土が踏み固められてしまうと木が傷んでしまうためです。

木を守るため藤棚の立木には木を使用。金属製の支柱だと夏は高温になり枝が焼けてしまう

花を咲かせながら徐々に下に伸び、長いものは2mにも

「藤は枝からぷっくりとした花芽が出て、ツクシのような形状になります。それが花を咲かせながらどんどんと下に伸びていき、皆さんがイメージする藤の花になります」
藤はちょうどよい気温だと徐々に咲きながら長くなっていきますが、夏日が多くなると短いうちに一気に咲いてしまい、花色も日に焼けて褪(あ)せてしまうそう。ゆえに毎年、気温によって咲き方が異なるとか。

木の枝に茶色くぷっくりとついているものが藤の花芽(左)。花房は最も長いもので2mにもなるという

藤は五分咲きが一番の見頃

「藤の場合は、桜のように満開を目指すより、五分咲き(開花して2週目くらい)が一番の見頃です。
花も香りも楽しめます」と小島さん。
「20年前は5月5日ごろが見頃でしたが、温暖化のせいか10年ほど前から見頃が4月中旬へと早まっています。最近は5月にはシーズンが終わってしまうことも少なくありません」

ちなみに、閉園翌日は「花切り」といって藤の花をひとつひとつ切っていく手入れがあるとか。
「花を切らないと実がなり、ソラマメのような種ができてしまいます。すると種の方に栄養が行ってしまい、翌年の花咲きが悪くなってしまうのです」
実際、シーズンの終わりごろは、上の花の先に小さな実がついていることがわかるといいます。
花の長さや咲き方の変化を楽しむために、開園中に何度か足を運ぶ来園者もいるそうです。

◆取材を終えて

園には、藤の他にもアヤメ、ツツジ、ショウブ、500年余の老松などさまざまな植物が植えられ、庭園としても十分に楽しむことができます。小島さんが偶然見つけたという自生の白藤も見せていただきました。藤は人工的に棚をつくらないと上へと高く伸びていくそうです。園にはキジやカモの親子がやってくることもあり、かつてはイタチの親子もいたとか。もしかしたら、みなさんも思いがけない動植物に出合えるかもしれません。

取材日:2022年3月10日
小林聡美