【子育て】自ら考え生きぬく力・自他を認める肯定感を育む「ガールスカウト」

ガールスカウトをご存じですか? 「名前は知っているけど、実は何をやっているかわからない」という人も多いのではないでしょうか。
同団体では、キャンプなどの野外活動やさまざまな体験を通して、「自ら考えて行動する力」を養うことを目指しています。コロナ禍では、不足する防護服の代用として1000枚の防護服を少女たちが作成し、医療機関に届けたそうです。
何が起きるかわからない今の世の中では、予測不能な事態に、自分で考えて行動していける力が求められています。子どもの自立心や肯定感を育むにはどうしたらいいのでしょうか。
今回は、一般社団法人ガールスカウト埼玉県連盟に、その理念や活動内容について話をうかがいました。

(左から)ガールスカウト埼玉県連盟の松井和未さん、中渡広子さん、栗原聖香さん

地域ごとに拠点があり、誰でも参加できる

ガールスカウトは世界152の国と地域で、約1千万人の会員が活躍する、少女と女性のための団体です。世界連盟のもとに日本連盟、都道府県連盟(47都道府県)があり、その下に地域の活動グループとして「団(だん)」があります。埼玉県では35の団が活動しています。
就学1年前の子どもから大人まで、入会条件などはなく、誰でも参加することができます。

自ら考え行動する力を養い、自他ともに認める肯定感を育む

ガールスカウトのモットーは「Be Prepared~そなえよつねに」。自分の心や技を他の人や地域のため、また自分自身のため役立てられるよう準備をしているといいます。
そのために大事なのは、「自分で考え行動する力」。これを身に付けるためには、迷いながらでも自分で決定していく体験や、うまくいかないときに自分で修正していく経験の積み重ねが必要だそうです。
そして、他者を認め、自分も大事にする心を育むことで、自己肯定感につながっていくといいます。
「キャンプやハイキングなど、みんなと自然の中で活動することは、そういった心や体を育てることにとても適しています。子どもたちと相談しながら活動内容を決めていくのですが、子どもたちが楽しく活動しながら、成長していく様子を見ることができるのは、一番の喜びです」という中渡さん。

活動の様子。キャンプのテント張り、ロープの結び方、レスキューリレーなどの教育プログラムも

高校生までは自分の力を養うことを目的として活動、18歳以上は指導者の立場になります。
子どもの参加をきっかけに初めて参加する大人も多く、中渡さんと松井さんは娘の入団がきっかけだったといいます。
「娘はひとりっ子ですが、“ここに来ると姉妹がたくさんいる”と楽しく参加しています」と松井さん。家庭や学校の他に第三の場所、“自分の居場所”があるのは、子どもたちにとって、ときに逃げ場になったり、心強い味方になることもあるといいます。

一方、栗原さんは子どもの頃からガールスカウトを続け、指導者になったケース。スイスで開催された世界連盟の環境関連セミナーにも出席するなど、活動の幅を広げています。
「海外に関心があったのでいろいろな国の人とつながりが持てる機会があるのはとても魅力でした」と栗原さん。「子どもそれぞれの可能性を広げられるようなプログラムを組むので、好きなこと、得意な分野を楽しみながら伸ばしていくことができます」。

興味関心ある課題を見つけて取り組めるよう、さまざまな分野のバッジがあるそう。右下はジェンダー平等推進を目指すバッジ

最近では、相次ぐ災害にも対応できるよう、防災減災教育にも力を入れているそう。いざという時に、まずは自分の命を守るための防災訓練や技術習得。それが他者を救う第一歩につながります。
また、SDGsの中でも目標5「ジェンダー平等の実現」に、より力を入れているそうです。
「国や地域によっては女性の教育機会が不十分なこともあります。若い女性が意思決定の場に参画しやすくなるような活動にも取り組んでいます。もちろん男女一緒にできることもありますが、ガールスカウトだからこそできる活動もあると考えています」と教えてくれました。

◆取材を終えて

核家族や共働きが当たり前となった今、親だけで、子どもたちのさまざまな力を養い、伸ばしていくのは難しい場合も少なくありません。そんな時は、まわりの人や地域、活動グループに目を向けてみるのも、いいのではないでしょうか。
ガールスカウトへの参加には、同団体ホームページで地域の団を探すか、連盟への問い合わせが可能です。9月4日(日)にはララガーデン川口で行われる防災イベントにも参加予定だそうです。

取材日:2022年7月24日
小林聡美