アイデアを大切に! 弁理士に相談してみよう ~知的財産について学ぶ〜

世の中にある、さまざまな商品はアイデアから生まれたものです。誰もがアイデアや発明をひらめく可能性があります。もし、自分や家族、子どもが画期的なアイデアを思いついたり、発明したりしたら、どうすれば良いのでしょうか? 日本弁理士会関東会副会長、穂坂道子さんにお話を伺いました。(以下、敬称略)

Profile 穂坂道子(ほさか・みちこ)
弁理士
日本弁理士会関東会副会長(現在)
 APAA(Asian Patent Attorneys Association)日本部会理事
小田原箱根商工会議所と平塚商工会議所の相談員
弁理士試験 試験委員(平成24年等)
 中小企業向の私ゼミ「知財を学ぼう初心者向セミナー」を2012年から継続

Profile 穂坂道子(ほさか・みちこ)
弁理士
日本弁理士会関東会副会長(現在)
 APAA(Asian Patent Attorneys Association)日本部会理事
小田原箱根商工会議所と平塚商工会議所の相談員
弁理士試験 試験委員(平成24年等)
 中小企業向の私ゼミ「知財を学ぼう初心者向セミナー」を2012年から継続

弁理士の仕事とは?

――弁理士という名前を初めて耳にする人もいるかもしれません。弁理士の仕事について教えてください。

穂坂 弁理士の仕事は、アイデアを生み出したり、守ったり、アイデアが活用されるのを助けたりすることなんです。

アイデアがまねされないように守り、使う権利をサポートするのが弁理士。知的財産に関する手続きを、アイデアを思いついた人に代わって行っています。そのアイデアにとってどの制度が合っているのか、一緒に考えてアドバイスしたり、同じようなアイデアが登録されていないか調べたりもします。特許庁への手続きに加えて、アイデアが保護され続けるようにするための仕事が多いかもしれません。

――知的財産とは何ですか?

穂坂 知的財産は、形はないけれど価値のある、発明やデザインや商標のことです。絵や文章のような著作物も含まれます。知的財産が悪用されたり勝手に使われたり、改ざんされたりしないようにして守る権利が、知的財産権です。

知的財産権をより知ってもらうための活動も弁理士の仕事です。学校に出向いて、知的財産権についての電子紙芝居を上映したり、発明工作をしたり、さまざまな年齢の子どもたちに向けた授業をしています。

本弁理士会関東会による出張授業の様子。プロジェクターなどを使ってわかりやすく解説してくれます
日本弁理士会関東会による出張授業の様子。分かりやすく教えてくれます

――知的財産権にはどのような種類がありますか?

穂坂 弁理士が扱う知的財産権には、「特許権」(とっきょけん)、「実用新案権」(じつようしんあんけん)、「意匠権」(いしょうけん)、「商標権」(しょうひょうけん)、「著作権」などがあります。

弁理士が扱う主な知的財産権

対象となる知的財産特許庁への登録申請権利の存続期間
特許権物や方法の発明必要20年
実用新案権物の考案必要10年
意匠権デザイン必要25年
商標権マークやネーミング必要10年(更新可)
著作権著作物不要作者の死後70年

穂坂 特許権、実用新案権、意匠権、商標権は、国の機関「特許庁」に登録申請をします。弁理士は登録申請のスペシャリストです。

特許権や実用新案権は、技術についてのアイデアを守ります。意匠権はデザイン、商標権はロゴマークやネーミングが対象となります。いずれも企業の事業活動を活発化させるために大切な権利になります。

絵や音楽、文章などの作品を守る著作権も知的財産権のひとつですが、こちらは国の機関に登録する必要はありません。
著作権は、創作物の完成と同時に生まれます。他人が作品をそのままマネすることに加えて、他人の作品を勝手に変えたりすることも、著作権の侵害です。作品を作った人が嫌がるようなことをしてはいけませんよね。
作品を作る人が、また新しい作品を生み出そうという気持ちになれることが、文化の発展につながるんです。

弁理士の仕事について、わかりやすく解説しているウェブサイト「まなぼう! 弁理士キッズ」も、参考にしてくださいね。親子で話し合うきっかけにもなりますよ。

知的財産権を知ってもらうイベントも開催しています。写真のマスコットキャラクターは日本弁理士会の「はっぴょん」と、埼玉県の「コバトン」
知的財産権を知ってもらうイベントも開催しています。日本弁理士会キャラクター「はっぴょん」も来場してくれました

弁理士に気軽に相談しても良いですか?

――もし、自分や子ども、家族がすばらしい発明やアイデアを生み出したら、弁理士に気軽に相談しても良いのでしょうか? 相談の方法を教えてください。

穂坂 もちろんです。「これは!」と思う発明やアイデアができて、権利を守りたいと思ったら、弁理士に相談してみてください。相談する際に必要なのは、「発明が生まれたきっかけ(何に困っていたか)」「発明の具体的な内容」「発明によって得られたイイことはなにか」の3つの観点での情報。子どもでも企業でも、必要なことは同じです。

弁理士は内容を確認して、発明やアイデアを広い視点をもって考えます。特許権と実用新案権、どちらを登録申請するか、はたまた意匠権にするか、その辺を相談していきます。

子どもでも特許権を得ることはできます。「自分のアイデアが世の中に認められた!」という自信につながるかもしれません。子どもの未来につながりますね!

常設の無料知的財産相談室に足を運んでいただくのも良いと思います。弁理士会関東会のホームページから予約できます。インターネット上にある弁理士ナビでお近くの弁理士を探してみるのも良いです。個々の弁理士の得意分野も掲載されています。

――発明やアイデアの特許権を登録する際、大切なことはなんですか?

穂坂 特許権を得るには、「新規性」(しんきせい)と「進歩性」(しんぽせい)の要件を満たすことが必要です。

新規性は、「世界に同じ物がない!」こと。すでに世に出ているアイデアや発明がないか調べることが大切ですね。進歩性は、「世の中の技術やアイデアと比べて斬新な工夫や際だった工夫がある」こと。

特許制度は新しい技術からまた新しい技術が生まれることを目的にしているんです。
アイデアが生まれやすい世の中を作るための仕組みが、特許制度です。

取材を終えて

取材前、弁理士にお会いするのは私にとって初めてで、とても緊張していました。穂坂さんのわかりやすい丁寧な説明で、特許制度をはじめ知的財産について知識を深めることができ、弁理士が身近に感じられました。弁理士は知的財産のスペシャリストですが、アイデアや発明の大小問わず相談を受け付けています。ふとしたきっかけで思いついたひらめきが、世の中に変化を与える画期的なアイデアの種になるかもしれません。アイデアが生まれたら、ためらわず弁理士に相談してみようと思います。

取材日:2022年9月15日
塚大あいみ