苦しみをひとりで抱えないで

先日、ある写真展の受付を手伝いました。
そこへ、ニコニコ笑顔のおばあさんの手を引いて訪れた、かわいらしい女性。優しくいたわるようにおばあさんに寄り添っていました。

2人は写真展を見終わり、帰りがけに私たち受付係に「ありがとうございました」と声をかけてくださいました。
「とてもお優しいですね」とこたえると、「母、認知症なんです。最近、だんだん進んできて…」と、それまでのヒマワリのような笑顔が一瞬で曇りました。そして会場を後にされました。

私はその後ろ姿を見送っていましたが、突然2人を追いかけました。おせっかいとは思いつつ、励ましたかったのです。自分の突飛な行動に、私自身が驚いていました。

「認知症の親をみるのは大変だと思います。でも一人で抱えないでください。自分一人では限界があります。どんなに優しい人でも、一人で抱えるのは無理です。周りを頼ってください。ケアマネジャーさんに相談してみてはいかがでしょうか」と、口から勝手に言葉が出てきました。それは、私自身の経験から出てきた言葉でした。

私の突然の行動に、その女性は最初びっくりしていましたが、「実はここに来る道すがら、ケアマネジャーさんに相談してみようかどうしようかと迷いながら来たんです。もう苦しくて。ありがとうございます。ご相談してみます」と、にっこりこたえてくれました。
私は、自分の体験が、他の人のお役に立てたことに、震えるほどうれしさを感じました。
勇気を出して追いかけて良かったと心から思いました。

仕事、子育て、介護など、自分が頑張らなくちゃと思う優しい人ほど、苦しさを一人で抱えてしまいがちです。また、初めてのことでどうしたらいいか分からないという人も多いでしょう。私もその一人でした。

でも何はともあれ、動いてみることをお勧めします。信頼できる人や機関をたずね、素直な気持ちで相談してみる。そのおかげで安心できた経験を、私自身、何回もしてきました。そのたびに実感し、かみしめてきた言葉があります。
「求めよ、さらば与えられん」

2023年6月
彩ニュース編集部