そろそろサツマイモ収穫の季節ですね。最近では「べにはるか」「安納芋」「シルクスイート」など、昔は見かけなかった“しっとり系”“ねっとり系”の品種がスーパーにも並ぶようになり、どれを選ぼうか迷うくらいですが、今回は、埼玉県が誇る伝統サツマイモ品種「紅赤」(べにあか)についてお話しさせてください。
紅赤は昔ながらの“ほくほく系”のサツマイモで、通称「金時」(きんとき)とも呼ばれました。実は埼玉県さいたま市(北浦和)が発祥の地。今から120年以上昔の明治31年、ある主婦が家の畑で、「八つ房」(やつふさ)という品種から突然変異したサツマイモを発見したのが始まりです。
以来、紅赤は多くの人に愛され、戦前は東日本を代表する品種となり、「サツマイモの女王」とも呼ばれたとか。しかし一方で、ほかの品種に比べて面積当たりの収穫量が少なく、栽培が難しい紅赤は、愛されつつも、戦中・戦後のきびしい時代に生産量は激減、“幻のサツマイモ”に。
ところが今、川越市・三芳町・さいたま市の生産農家、加工業者、販売者、関係団体の方たちの努力によって、紅赤の栽培が続けられ、いろいろな加工商品化も進み、保存の道が見えてきています。
彼らは将来のために、「紅赤発見120年」の2018年、12月1日を「紅赤いもの日」に制定。そして「12月は1人1本紅赤いもを食べて、伝統品種を守ろう!」と呼びかけています。
埼玉県民が12月に1人1本紅赤を食べれば、生産保存ができるそうです。埼玉県民として、こうした活動を応援したいものです。
ちなみに、三芳町には「いも街道」があります。ケヤキの大木が続き、“武蔵野”の面影を色濃く残すエリアで、紅赤いも焼酎や紅赤ビールなどが買えるほか、収穫時季には生産農家から直接、紅赤を購入できます。川越市やさいたま市の各店でも紅赤を使ったさまざまな商品が考案され、販売されています。
私は、地域の方たちが、業種や立場を超えて協力する姿に感動します。簡単なことではないからです。
これからも、こうした個人レベル、地域レベルの活動にも注目していきたいと思います。
2022年9月
彩ニュース編集部