「引越したばかりで友だちがいない。どうしよう!」からはじまったサークル活動。子育てが大変だからこそ、子育てを楽しくしようと一歩を踏みだした清水まゆみさん。子どもの成長に合わせて仕事を選びつつTodaママフェスタをたちあげた足跡に、お母さんの理想像をみる人もいるのではないでしょうか。もしかしたらあなたのもうひとつの姿かもしれません。
(彩ニュース編集部)
○子どもと一緒に踏みだせるものをさがして
○Todaママフェスタを立ち上げたきっかけ
○初めての開催で900人
○「こうしたい」に軸を置く
○運営で苦労したこと
○自分らしい道を選ぶポイント
Profile 清水まゆみ(しみずまゆみ)
職業:子育て応援塾 ほっこり~のイオンタウン蕨店 店長
学童指導員
他:エンジェルすまいる 代表
Todaママフェス実行委員会
1 活動のこと
――お子さんが2歳と5歳のときに隣町から戸田市に転入したんですね。
清水 そうです。はじめは子どもたちがどこで遊んでいるのかもわからなくて、友だちもいないので不安になりました。子育てに集中しすぎる生活は私には向かないと思ったので、子どもと一緒になにかを踏みだしたいと考えました。
しばらくして3人目の子どもが生まれる頃、当時流行っていたスクラップブッキングを習いました。スクラップブッキングはかわいい台紙に愛らしい飾りをつけながら写真を貼ってアルバムを作っていくものです。そのうちに「私にも教えて」と声をかけられるようになり、友人と集まってつくるようになりました。これを仕事にできればと考え、東京でスクラップブッキングの資格を取得しました。
同じころ広報でみつけた「はつらつお母さんの勉強室」という連続講座に参加。講座の終了後にそこの仲間数人とサークルを立ち上げて、それぞれが忙しいなか週に2,3回集まりはじめました。
――資格を取得したり、講座に参加するお母さんは多いですが、その先の行動が難しいです。
そこで〝紹介し合えるような場をつくって、それぞれが好きな講座をおすすめして、みんなで集客し合おうよ〟といってはじまったのがママフェスタです。
――具体的にはどう動いたんですか?
自分の特技をいかして、ハンドメイドのアクセサリーや雑貨の販売をしたり、ワークショップを開いたりできるイベントの開催を目標にしました。近隣市で作家さんを集めたイベントを開催している方がいて、その人を訪ねていって開催に必要なことを教えてもらいました。イベントの立ち上げ方から、行政との付き合い方など…。この出会いがなければできなかったと思います。
次に戸田市役所の窓口を訪ねて市民活動サポート補助金事業をしり、どうしたら申請できるのかを聞きました。窓口に行ってもはじめは何をしたらいいのかさえわからなくて。それでも話を聞いてくれる協力的な職員の方がいました。事前準備として会場がいくらで借りられるのかを確認したり、予算書を出したり、申請の指南してくれたことで書類を提出できました。その担当の方とは今も交流があるのですが、「あの時の清水さんの表情は必死だった」といわれます(笑)。この出会いもなければできなかったと思います。
2人のキーパーソンとの出会いにより、指南をいただいたおかげで具体的な行動ができて、市の審査もとおりました。そこからは出展者の人数を増やすために奔走しました。チラシを作成して、市役所のコーナーにおいてもらったり。近隣市の先輩の力を借りながら初めて開催をしたのが2015年です。
初めての開催で900人
――初めての開催で来場者900人は驚きです。2019年の開催は3000人の集客まで増えていますね。
清水 初開催の「キラキラ輝く!Toda ママフェスタ」はついていたんですね。この日はアンパンマンショーのチケット販売日だったらしくて、文化会館の窓口にはチケット購入の親子が列をなしていました。その人たちが「なにかやっている」とTodaママフェスタに寄って、ワークショップに参加したり、小物を購入したりしてくれたんです。それにより周知にもつながりました。
そのあとは行政側から会場提供の声かけをいただいたり、お祭りに参加してPRできたことで集客がぐんぐん伸びました。開催前に出展者を集めて交流会をするようにしていたら、お母さん同士でどんどん連絡をとりあい、つながってくれます。そこからまた広がっていきました。趣味からはじまってお店をもった人もいます。
運営で苦労したこと
――規模が大きくなって、運営も変わっていきそうですね。
清水 補助金事業で開催していたので、運営側が経費以外の利益をほとんど出せないのが現状です。そのため、他で仕事をしながら大規模な運営をすることになりました。もともと立ち上げた仲間たちは、子育てと仕事の合間に自分の趣味をかたちにしたくて始めています。けれど、運営にまわると自分の出展ブースを出せないこともあり、スタッフの定着が困難になっていきました。立ち上げ初期から残っている運営メンバーは私を含めて2名のみです。
私も小学校の理科支援員をやりながらTodaママフェスタを続けてきました。現在は学童指導員とママのための子育て支援という仕事をしながら活動しています。準備はとても大変だけれど、出展者やイベントに来てくれた方の「楽しかった」という声とキラキラした笑顔をみているとまた頑張ろうと思えます。
今年はコロナの影響があり、大規模な開催ができませんでした。オンラインも考えたけれど、今年はやめました。実際に会って話すことの楽しさをオンラインで伝えることは私には困難だと感じたからです。そのかわりに、コロナ対策を充分にしながら小規模な開催を計画しています。
2 あなたらしくあるために大切なこと
自分らしい道を選ぶポイント
――自分には特技がないと思っているお母さんも多いと思います。
清水 〝とりあえず一歩を踏みだしてみましょう〟というのが理念です。はじめはやりたいものがわからないお母さんも、「大丈夫! やってみましょう」と背中を押すと生き生きしてくるのが見ていてわかります。だからこそ、初めての人に来てもらいたいですね。スタート時は、お母さんのためのイベントというスタイルで託児を用意していました。でも、実際は子どもに体験させてあげて、うしろでみているお母さんが多かったんです。そこから自分にもできることを見つけに一歩を踏みだしてほしいですね。そして、流れに乗っていき、ときどきこれでいいのかなと確認しながら進んでいってもらいたいです。
3 未来を生きる子どもたちへ
自分に素直に楽しく歩んで
――未来を生きる子どもたちに生き抜く力を与えるメッセージをお願いします。
清水 学童教室で子どもに接していると、コロナの影響もあって、親も仕事が大変、学校は開始が遅れ、負担が大きいように感じます。時間をとって話をするととても素直な姿があるので、話を聞いてほしいんだなと思います。
いまは子どものコミュニティまでがちがちになってしまわないように見守っています。みんなが同じ意見ではないから、自分に素直になってときには逃げたほうがいいときだってあります。素直に楽しく歩んでいってもらいたいです。
取材を終えて
清水さんのママ道を進む姿がとても魅力的でした。女性は不思議なもので、同じような学歴や生活スタイルでも、どこに重点をおいて歩いていくかで人生が大きく変わります。
コロナの規制で老若男女が自粛生活を余儀なくされました。社会から遮断されたような生活に慣れすぎて「また満員電車で通勤する生活に戻れるのだろうか」という声が飛び交っている現状です。
それを考えるとお母さんは若くて美しい時期に、出産で社会から一度離れたような気持になる体験をします。まさに自粛期間明けのようにおそるおそる社会に戻るのです。
取材日:2020年11月19日
磯崎弓子