川口市鳩ケ谷にあるゲストハウス&カフェ「風の森キッチン」。築50年の空き家を改装したなつかしいたたずまいの一軒家では、2段ベッドが並ぶドミトリータイプの宿泊の他、個室仕様の和室、中庭でのグランピングスタイルでの宿泊も楽しめます。
「ただいま」と言いたくなるような心地よさ
すりガラスの引き戸の玄関をガラガラとあけると、マスクの下からでもわかる笑顔で迎えてくれるのはオーナーの勝水楓子(かつみずふうこ)さん。共有スペースにいたゲストの方々とも少しお話をすることができました。こちらでは1泊からの宿泊の他、中・長期滞在も可能。沖縄からのインターン生、テレワーク期間にノマド生活を楽しむ社会人など、さまざまな人とのつながりが持てるのも、大きな魅力です。
ふうこさんは、通学のために15歳から親元を離れて下宿をしていたそう。早くから人の世話になってきた経験から、“下宿屋のお母ちゃん”に憧れがあったといいます。
ゲストハウスを始めたのは28歳の時、浅草でのスタートでした。手探りの中、ゲストやまわりの人に手伝ってもらいながら少しずつかたちにしていったそう。「ゲストのみんなに育ててもらいました」というふうこさん。国内外問わず今でも交流が続いているゲストがたくさんいるそうです。
自然のちからをたっぷり蓄えた素材を使い、からだが元気になる食を提供
現在の鳩ケ谷に場所を移し、食も提供できるゲストハウス&カフェとしてスタートした背景には、もっと食にこだわりたいという思いがありました。
きっかけは、疲れて帰ってきたゲストに手作りの朝ごはんを出したらとても喜んでくれたことだそう。
「手作りや自家製のものをみんなで食べると、からだだけでなく心も安心して、元気になるんですよね」
風の森キッチンでは、自然栽培や有機無農薬の野菜やお米などを使い、現代人のお腹を助ける「発酵食」や「自家製」「手作り」をキーワードにした、やさしいごはんづくりが特徴。宿泊者にはふうこさん手作りのごはんが朝食や昼食で提供されます。
現代は簡単に食を手に入れることができる反面、十分な栄養が取れていないことも多いので、少しでもからだの栄養になるものを食べてほしいとの思いがあります。
こだわりの食材は、農業を営んでいるふうこさんの実家や、日本各地の農家から仕入れています。
「農業も含め食を次の世代へとつなげていける持続可能なサイクルにしたい。風の森キッチンもそのサイクルの一部になりたい」と語ってくれました。
現在はコロナ禍でカフェ営業はお休みですが、地域とのつながりは続けたい、農家からの仕入れも止めたくないという思いから一般向けにお弁当販売を開始。近所の方や在宅ワークで忙しいお母さんなどいろいろな人が利用しているそうです。
◆取材を終えて 初めての訪問ながら、やわらかい空気になんだか癒やされたというのが一番の感想です。ゲストが「ただいま」と帰ってくるのが納得の場所でした。「家族がたくさんいるみたいで、待っている側も楽しみにできます」というふうこさんの言葉が印象的です。 遠出しにくい今だからこそ、近場で、ホテルとは違った癒やしのゲストハウス宿泊体験をしてみるのはいかがでしょうか。 取材日:2021年9月22日 小林聡美