【さいたま】お金の歴史や製造工程が楽しく学べる 造幣さいたま博物館

造幣局は、近代国家としての貨幣制度の確立を図るため、明治4年(1871年)、大阪府に開設され、令和3年(2021年)には創業150周年を迎えました。
現在大阪府に本局、広島県・埼玉県に支局があります。

造幣局さいたま支局・博物館は2016年、都内からさいたま市に移転

さいたま支局の3つの役割。プルーフ、勲章、品位証明

さいたま支局では、一般に流通している“通常貨幣”も一部製造していますが、収集家向けに製造される“プルーフ貨幣”を主に製造しています。プルーフとは、貨幣の加工方法の名称。特殊な技術を用いて特別に造られた金型を取り付けた圧印機で、“円形” (えんぎょう。貨幣の模様をつける前の金属)に貨幣の模様を2回以上連続して圧印することにより、美麗な鏡面と鮮明な模様の貨幣に仕上げています。
通常の貨幣と異なり、ピカピカした見た目なので、「これがお金?」と思ってしまいそうですが、お金として通常どおり使用することもできます。

さいたま支局で主に製造しているプルーフ貨幣

国や公共のために功労があった人へ授与される勲章や褒章の製造は、造幣局でおこなわれています。年間3万個ほど製造されていますが、その一部をさいたま支局でも製造しています。勲章には七宝が施され、美麗・尊厳・品格を兼ね備えた勲章や褒章は、熟練した職員が細心の注意を払って製造しています。
勲章で用いられる七宝の技術技能を伝承するため、メダルなどの金属工芸品の製造もおこなっていて、博物館に併設のミントショップ(造幣局を英語で「ミント」といいます)では、七宝を施した金属工芸品の販売もしているそうです。

勲章も製造しています

ところで、指輪やネックレスなど貴金属の裏側に“ホールマーク”といわれる品位証明記号が印字されているものがあることをご存じですか?
貴金属製品の製造、販売をおこなう販売業者などからの依頼に応じて、品位試験を造幣局でおこない、試験に合格した製品に、品位証明記号が打刻されます。
金や銀、プラチナなど、それぞれの品位に応じたマークと数字が刻まれます。
品位証明はさいたま支局のみでおこなっています。個人が貴金属を持ち込んでの依頼はできませんが、地金・鉱物の分析は受け付けているそうです。

貨幣の歴史を博物館で、製造過程を工場見学で学ぼう

博物館では造幣局や貨幣の歴史を学べるのはもちろん、大判・小判などの古銭をはじめ、記念貨幣、勲章、オリンピックメダルなどの貴重な史料も見ることができます。

また、普段私たちが使用している貨幣がどのような工程で造られているのか、工場が稼働している平日のみ見学できます(博物館の休館日を除く)。

実際に触れて価値を感じてほしい

新500円貨幣(2021年11月発行)導入は記憶に新しいと思います。3代目である現在のものは、二色三層構造で、穴の開いていないドーナツのような模様です。

従来の500円貨幣の側面には、“斜めギザ”が入っていましたが、新500円貨幣には上下左右の側面にギザの間隔が異なる“異形斜めギザ”が入っています。これは大量生産型の貨幣では世界初の技術だそうです。偽造防止のため上下左右に、小さな字で「JAPAN」や「500YEN」といった文字も刻まれています。世界でも硬貨としては、スイスの5フラン(現在のレートで約670円)に次ぎ高額なのだとか。

偽造防止のため、さまざまな工夫をしています

私たちが毎日使用している“お金”。新型コロナウイルスが流行する現代、急速にキャッシュレス化が進み、紙幣や貨幣を手にしたことがない子どもが増えています。子どもたちにお金の価値や役割をどのように教えていったらよいのでしょうか。

造幣局さいたま支局の加藤みずきさんは「現代の子どもたちには、新500円貨幣の偽造防止技術などを見て興味を持って、実際にお金に触れてもらいたいです」と話してくれました。

さいたま支局の加藤みずきさん
◆取材を終えて

キャッシュレス化の現代において、子どもにお金の価値や使い方を教えるというのは、とても大切ですが、難しいですね。
ところで展示室入口の体験コーナーでは、貨幣の健康診断機「コイン君」で手持ちの硬貨の状態を調べることができます。「健康です」という診断がほとんどですが、まれに「働きすぎです」という診断が出ることもあるのだそうです。自動販売機に入れても硬貨が返却されてしまう経験があると思いますが、そういった硬貨に、働きすぎの診断が下されることが多いのだとか。私の手持ちの硬貨は「健康です」という診断書をいただきました。

取材日:2022年3月22日
水越初菜