【鴻巣】鴻巣産の米を食べてほしい!学生が運営する「キッチンカー コノミ」

近ごろ、テイクアウト需要が高まったこともあり、あちこちで見かけるようになったキッチンカー。2020年10月に始動した「キッチンカー コノミ」もその一つです。ただ他と違うのは、運営しているのが学生で、鴻巣産の米を使ったメニューを専門にしているという点です。

地元産食材を使ったオリジナルのいなり寿司

「コノミ」誕生のきっかけは2020年の夏、当時4年生だった女子大学生が「鴻巣市で祖母が作っているお米を多くの人に食べてもらいたい」と、キッチンカーでの販売を発案したこと。クラウドファンディングで資金を集めて中古車を購入し、仲間と一緒に開業しました。

メインのメニューは、手軽に食べられる、オリジナルのいなり寿司。混ぜ込む具材などにも鴻巣産食材を選んで使っています。

左から、金ごまいなり、季節いなり、こうのすいなり、枝豆塩昆布いなり、梅しそいなり、あんこクリームチーズいなり。1個150円、3個セット400円。お茶はサービス

食材は、ほぼ全てを市内で調達。米は開業メンバーの祖母からだけではなく、他の農家からも直接仕入れているそうです。「こうのすいなり」には、市内の花農家から苗を仕入れて自分たちで育てているエディブルフラワー(食用花)を使用。また、この日の「季節いなり」には、油揚げの中にサツマイモの炊き込みご飯が詰められていました。いなり寿司のほか、米の味がストレートに伝わる、シンプルな「塩むすび」も用意されています。

地域への思いとレシピを引き継ぎ2年目へ

2021年3月、開業メンバーは大学卒業と同時にキッチンカーを“卒業”。運営は後輩たちにバトンタッチされました。現在、メンバーは6人。このほか、時々、製造や販売を手伝ってくれる人が複数いるとのことです。

「先輩から、いなり寿司のレシピを引き継ぎ、味を変えずに作っています。旬の食材を使う季節いなりは、新しい代になってから考えて試作し、メニューに加えました」と話すのは、コノミの広報担当・猪瀬康平さん(大学2年生)。開業当初からお手伝いとして参加し、本格的に業務に関わるようになったのは、代替わりしてからだそうです。

出店は週に1、2回ほど。「出店場所は、鴻巣市内とその近郊が中心です。イベント会場など出店料がかかる場所も多いですが、無料で敷地を貸してくれる会社やお店もあるので、ありがたいです」と猪瀬さん。

さまざまな大学の学生で構成されているメンバー。この日は、高校生も参加。右から2人目が猪瀬さん

運営に携わることで学業への良い影響も

開業して約1年。最近、リピーターも増えてきたといいます。「毎回、同じいなり寿司を注文される方や、『おいしかったよ』と声を掛けてくれる方もいます。仕入れ先の農家の方が買いに来てくれたこともあり、鴻巣には、優しくてフレンドリーな方が多いと感じています」。

農家ごとの味の違いが楽しめる「新米1合パック」は、おにぎり型に包装した米。作り手の紹介や米の説明が添えられ各200円

猪瀬さんは、メンバーの中で唯一、鴻巣市外に住んでいます。遠方ではありますが、最寄り駅から鴻巣市まで、電車移動の1時間半を勉強に充てたり、隙間時間を見つけてレポートを仕上げたりして、学業とコノミの業務を両立させているとのこと。「以前より集中力が身に付きましたし、コノミのメニューや宣伝の仕方など、常に“自分の頭で考えること”をしているため、大学の勉強にもプラスになっています」と生き生きと話します。

鴻巣市の食のおいしさを伝えつつ、学生自身も成長できる「キッチンカー コノミ」。長く続けていくために、随時、メンバーを募集しています。

◆取材を終えて

取材では、キッチンカーの収支がトントンでアルバイトなどに比べると報酬が出にくいため、新しい仲間が集まりにくいとの話も聞きました。個人的には、自分たちで考え、工夫して営業を続けていく経験は、学生時代にしかできない、お金に代えられない価値があるように思います。  

取材日:2021年10月31日
矢崎真弓