【越谷】未来につなげていくために~南越谷阿波踊り3年ぶり開催へ

「ヤットサー!ヤットヤット!」元気な掛け声と楽しげな鳴り物の音といえば「阿波踊り」です。越谷の夏の風物詩ともいえる「南越谷阿波踊り」が、今年(2022年)は屋内演舞の舞台踊りに限り、8月27日(土)、28日(日)越谷コミュニティセンターにて行われる予定です。

同阿波踊りは南越谷駅・新越谷駅周辺で毎年8月に行われていましたが、コロナ禍のため2020年から開催が見合わされていました。今回3年ぶりとなります。
※南越谷阿波踊りは、新型コロナウィルスの感染状況などによっては、開催中止または延期の可能性があります。

腰を低くして踊る「男踊り」。子どもの踊り手も大人顔負けのレベル

徳島発祥の「阿波踊り」がなぜ南越谷で?

南越谷阿波踊り第1回が開催されたのは1985年。徳島県出身の事業家である故・中内俊三氏の呼びかけから始まりました。ベッドタウンとして発展した越谷地域は、当時移住者も多く、中内氏は、地域の人々がもっと一つになれる機会を模索していたそう。そこで故郷の阿波踊りの活用を思い立ったと言われています。

そこから36回目を迎える今回。南越谷阿波踊りは踊り手と観客の距離が近いため、踊り手の迫力や、観客の反応を身近に感じることができるのが魅力です。ゆえに、流し踊りを毎年楽しみにしている人も多く、夏が近づくと、振興会には問い合わせの電話が多数あるといいます。

しなやかに美しく見える「女踊り」。実は一番大変だそう
しなやかに美しく見える「女踊り」こそ、実は一番大変だそう

2年間の延期により継続の危機に陥る

「今年は公道での流し踊りはできませんが、舞台踊りだけでもやりたい。それが今後も続けていくための大事な一歩なんです」と話してくれたのは、南越谷阿波踊り振興会の中沢建一事務局長。
2年間の開催延期は、多方面に予想もしなかった影響を及ぼしたといいます。

「2年間のブランクがきっかけとなり、踊りから離れてしまう踊り手も見られました。また、長年続けている老舗の連(れん)でも解散する連が出てきたんです」。
実はとても体力が必要な阿波踊り。男踊りは中腰で、女踊りは腕を上げたまま、10分以上踊り続けることもあります。しっかり練習をしていないとけがをする危険性があるのだそう。また、2年ブランクがあることで人に見せるレベルに持っていけないと断念する人や、医療系職種などの仕事上、コロナ感染予防の観点から辞退する人も多いといいます。
※連:踊り手のグループのこと

さらに、新しい生活習慣や練習場所確保の難しさも生じているそうです。
「踊り手は毎年、多くは春先から、連によっては通年で練習を行っています。1度の延期ならまだしも2年あいてしまうと、別のことに時間を使う生活に変わってしまい、戻ってきにくい状況が生まれてしまいました。特にお子さんの中には、別の習い事に移られる方も多かったようです」。
また、コロナ禍では人が集まり大きな声を出すことに周囲の目が厳しく、練習場所の確保も難しくなってしまったそうです。

第35回(2019年開催)南越谷阿波踊りフィナーレの様子

これからも続けていくための一歩を大事に

踊り手や連を取り巻く困難の一方、開催を楽しみにする観客は多く、その期待に応えていきたい思いも強くしたという中沢さん。若い連には踊り方を教えに行ったり、振興会では、新たに組む連には鳴り物のレンタル制度を検討するなど、さまざまなサポートを考えているそうです。
「新しい取り組みや工夫を模索中ですが、今年の開催を新たな一歩として、南越谷阿波踊りを続けていくための立て直しを図っていきたい」と語ってくれました。

◆取材を終えて

延期中は開催に向けてコロナ感染予防策に尽力、今年やっと開催のめどをたてることができたといいます。
お祭りには人を元気にさせる魅力とエネルギーがあります。困難を乗り越えて、これからも長く南越谷阿波踊りを見られることを楽しみにしています。「踊る阿呆(あほう)に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃそんそん」。もし阿波踊りを始めてみたい、連を作りたいという人は振興会に問い合わせることができるそうです。

取材日:2022年7月5日
小林聡美