おもちゃ売り場でよく見かけるビニール製のカラーボール。自分の好きな柄や色、大きさでカラーボールを作るワークショップが吉川市で開催されています。主催は、カラーボールの企画、作成、販売を行う株式会社石山。同社代表の石川茂治さんのレクチャーを受けながら、実際の“ものづくり”の現場で体験することができます。
小学3年生と5歳児の、ものづくり体験を取材しました。
オリジナルカラーボールができるまで
開催日程によって、ワークショップで作成できるカラーボールの種類が変わります。今回体験するのは「フリーサイズ 象嵌(ぞうがん)印刷ボール」作成コースです。
1:理想のカラーボールは? 大きさを選ぼう
自分が作りたいカラーボールの大きさの金型を使います。金型は上下で分かれ、一対です。
小学生は小さめのドッヂボールくらいの7インチ、5歳児は自分の手の中に収まる3インチを選んでいました。
2:どんな柄にしようかな?
次に、ボールの絵柄を考えます。絵柄のフィルムを金型の内側に貼りつけます。
子どもたちは、花びらのフィルムを組み合わせたり、同じ柄のフィルムを並べたり、名前を入れてみたり、貼りつけながら試行錯誤。フィルムがはがれても気にせずに、貼る場所を決めていきます。「イメージがわいてきた!」「やっぱり違う柄にしようかな」と楽しそうでした。
3:パール入りや透明も選べる! カラーを決めよう
ボールの色も自分で決めます。キラキラと輝くパールや、透明感のある色、濃さも調節でき、カラーバリエーションは無限です。石川さんがボールの原料となるビニール液に顔料を混ぜ、個々の“ボールの素”を作成します。
7インチのボールに光沢のある黒色、3インチにパールの紫色を選んでいました。
4:金型を温めてフィルムを固定したらデザイン完了
フィルムを貼りつけられるよう、金型を回転成形機に入れて少し加熱します。回転成形機とは、炉の中の台座を360度回転させながら加熱することで、丸いボールを成形できる巨大オーブンのような機械です。
本物の機械の迫力と音に、5歳児は驚くばかり。小学生は機械の仕組みに興味津々のようでした。
5:ほかほかの金型にフィルムを貼りつけよう
温めた金型にフィルムを貼りつけます。先ほど貼りつけたのは、あくまでも仮の位置。今度は本番です。金型が熱いので、軍手を着用。治具(じぐ)と呼ばれる固定用の道具も使って、しっかり貼りつけます。
金型が冷め切ってしまうと、フィルムを貼りつけにくくなるので、手早く行うことが大切。フィルムがよれたり、重なったりしないように注意しながら、皆真剣そのものです。5歳児は焦ってフィルムを2枚重ねたまま貼りつけてしまい、石川さんに直してもらっていました。小学生はギリギリまでデザインを考え直し、集中して取り組んでいました。
フィルムの貼り付け作業が完了したら、金型の片方にカラーボールの素全量を一気に投入します。金型に空気弁を差し込んで取りつけ、上下を合わせたら、回転成形機へ。
6:もうすぐ完成! 回転成形機に金型を入れよう
回転成形機に金型を入れ、加熱します。石川さんが、機械に入れる数と大きさから加熱時間を設定。
待つ間、クイズ大会で盛り上がり、あっという間に時間が経ちました。クイズはもちろん、カラーボールに関する問題です。
加熱が終わったら、回転成形機から金型を取り出し、そのまま冷却水に沈めて冷まします。この作業は石川さんが行います。熱した金型を冷却水に沈めると、大きな音と共に湯気が立ち上り、参加者から歓声があがりました。
7:できたてのカラーボールに空気を入れよう
金型から取り外したカラーボールに、ゴム芯を取りつけたら、空気を入れ、表面のギザギザやでっぱりをきれいにしたら、完成! 世界にひとつ、自分だけのカラーボールです。
ワークショップで感じる、ものづくりの面白さ
日本でビニール製のカラーボールを生産している工場は、株式会社石山を含め3カ所のみだそうです。
「海外製のカラーボールが多く流通していますが、国内の工場ではきめ細やかなオーダーへの対応や、納品した後のボール修復ができます」と石川さん。
「ワークショップでは、通常の商品を作成するのと同様に回転成形機を使用しています。ものづくりを楽しみつつ、本物の機器や工程に触れ、近くで見る機会を提供できればと思っています」
ワークショップの参加費は体験内容により異なります。今回取材した「フリーサイズ 象嵌印刷ボール2個作成コース」は1名2,200円です。
◆取材を終えて 後日、体験した子どもたちの親に聞くと、「ものづくりの面白さに気づき、おもちゃを大切にする心も育んでくれる体験」だったと話していました。ワークショップで作ったオリジナルのカラーボールを、子どもたちは他のボールより大切にしているそうです。 取材日:2021年12月26日 塚大あいみ