【Kokoro癒やし旅】星空と夜景と自然に癒やされる 堂平天文台・星と緑の創造センター

堂平天文台と星空
堂平天文台と星空(ときがわ町提供)

自分のペースでボーッとしたいなあ……。

そう思い、いろいろ調べていたら「堂平(どうだいら)天文台・星と緑の創造センター」という個性的なキャンプ場を見つけた。埼玉県ときがわ町にある。

天文台がキャンプ場になっているってどういうこと? ムクムク興味が湧いてきた。
もしかしたら、美しい星空を見られるかもしれない!

キャンプ場には、テントエリアのほか、バンガローやログハウスもあるようだが、モンゴル式テントというものに宿泊予約を入れた。

キャンプ場までの道のりを楽しむ

梅雨の合間の天気の良い日、午前11時に車で出発。ときがわ町に近づくにつれ、緑豊かな里山の風景に変わっていく。

途中、食料品を買うため、都幾川(ときがわ)農林産物直売所に立ち寄る。
私は旅先で直売所や道の駅に立ち寄るのを楽しみにしている。その土地の特産品に出あえるからだ。

中に入ると、新鮮な野菜がずらり。青ナスなど聞きなれない野菜や、おいしそうな手作りのお弁当も並んでいる。
採れたてのキュウリ、天然酵母パン、米粉の草もち、タケノコご飯のお弁当を購入した。

白石峠からは、狭い山道と急カーブが続くが、車は快適。力強くグングン走っていく。
途中、見晴らしのいい剣ヶ峰駐車場付近に車を停めてお弁当タイム。
関東平野が一望できて、お天気も最高! 本当に気持ちいい!

ふと、山側へ目を向けるとパラグライダーを楽しんでいる人たちがいた。風に乗って、ふんわり空を漂っている。
飛んでいるときって、どんな気持ちなんだろう。かっこいいな……。

パラグライダーに乗って空中散歩を楽しむ人
パラグライダー。鳥になった気分になれそう

360度の眺望が広がる堂平山

堂平山頂上からの眺め
堂平山頂上からの眺め

午後1時半ごろ、堂平山の頂上にある駐車場に到着。この山は埼玉県小川町、ときがわ町、東秩父村の境界にあり、標高は876m。富士山のように独立峰なので、360度周囲を見渡せる。だから天文台が建てられたのだろうか。
山並みが奥の方まで何重にも重なって見える。山の斜面がところどころ黒っぽいのは、雲の影だ。普段の生活とまったく違うスケール感。なんてダイナミックなんだろう!

山頂には堂平天文台が静かにたたずんでいる。かつてはここで研究者たちが、情熱を傾けて宇宙を観測していたのだろう。

堂平天文台
堂平天文台

第2、第4金曜は天文台で星空観望会が開かれているとあったが、今はコロナ禍のため開催されていないそうだ。ぜひ復活してほしいなと思った。

キャンプ場でゆっくり過ごす

天文台から少し下にある管理棟で受け付けを済ませ、荷物をモンゴル式テントに運びこむ。テント前からの眺めも気持ちいい。

テント前の草地と青空
テント前からパチリ。子どもが走り回りたくなりそうな草地が広がっている

いすやテーブル、コンロなど、明るいうちにセッティングを済ませる。あとはしばらくフリータイムだ!
先ほどの直売所で買っておいた米粉の草もちを用意し、いすに身をまかせ、ただただボーッとして気持ちを解放する。鳥のさえずりが聞こえる……。

米粉の草もちとお茶でおやつタイム
米粉の草もちでおやつタイム

5時ごろ夕食の支度を始める。ここのキャンプ場では、薪(まき)は使用不可で、使えるのは炭火かガスコンロのみ。そのため燃焼効率の良いコンロで炭火を使うことにした。
メニューは、フライパン一つで簡単に作れるものをと思い、メインはナポリタン。キャンプ場で忙しい思いをしたくなくて、食材はできるだけ家で切っておいた。

フライパンにバター、カット野菜、ウインナーを入れていためたら、1人前300mlの水を加える。沸騰したらパスタを半分に折って投入し、ゆであがったら、かきまぜながら水分を飛ばしていく。塩、コショウとケチャップで味を調えてでき上がり。
サイドメニューのオムレツもメスティン(アルミ製の飯ごう)一つで、ふんわりと色鮮やかに完成!
キュウリは直売所で買ったものにスパイスとオリーブオイルを加え、洋風お新香にした。

夕食のナポリタン、オムレツ、キュウリの洋風お新香
メスティンは初めて使ったが、ふたをしてゆっくり火を通せ、オムレツがふっくら

食後はコーヒーを飲みながら、まったりとした時間を過ごす。
ここは地上より5度くらい涼しい。じんわり暖かい炭火の炎と、静かで穏やかな山の空気が、気持ちを芯までほぐしてくれる気がする。

星空は……

だんだん暗くなってきた。炊事場で洗い物をしていると、ここに来るのが2度目という人に声をかけられた。
その人によると、前回は星がきれいに見えて、人工衛星をいくつも見たという。流れ星と違い、消えることなく、同じ速度で進んでいく人工衛星。それが肉眼で見えるらしい。

私も見てみたいと思った。
しかし夜空を見ると、雲が広がっていて月さえも見えない……。

がっかりしながらテントに戻ると、草地の向こうが明るい。なんと、すばらしい夜景が広がっていた! 地上の光が雲に反射しているのだろうか、なおいっそう明るい気がする。しばらくの間、その光景に見とれていた。

大満足の夜景。スカイツリーも見える
この夜景を見られただけで満足。地平線の中央より少し左にスカイツリーが見える

少し待っても、残念なことに雲は切れそうにない。月さえも少しのぞいた程度で、すぐに雲に覆われてしまった。残念だけど星空はあきらめ、今晩は早く寝て、明朝の日の出を見てみよう。

日の出

朝4時。テントのてっぺんの透明アクリルから、白(しら)み始めた空が見える。日の出は4時半ごろの予定だ。

テントから出て驚いた。鳥たちのさえずりがすごいのだ。昼間のとは全く違う。こんなに朝早く外に出ることは、普段の生活ではまずないし、これほどの自然の中に身を置くこともない。鳥たちの生き生きとした声に、生き物の営みを感じる。

日の出前の美しい空

天文台の方まで歩き、日の出を待った。
まだ太陽が姿を見せていないのに、空がどんどん明るくなる。

力強い日の出

周囲をオレンジに色に染めながら、太陽が姿を見せた。強い光にパワーをいただく。星空はかなわなかったが、日の出が見られてよかった!

テントに戻り、炭火をおこし、朝食の支度。直売所で買っておいた天然酵母パンを軽くあぶる。湯を沸かし、コーヒーをいれる。それだけのメニューだが、青い空のもと、そよ風を体に感じながらの食事は、いつになくおいしい。

心を休める場所を求めて

きちんと管理されたキャンプ場内
キャンプ場。左手前がログハウス、その続きに、きちんと管理された炊事場とテーブル&いすがある

キャンプ場の管理人たちにお話をうかがった。ここでは予約の宿泊者がいるときは管理人が一晩中いてくれるそうで、とても心強い。

最近の傾向を聞くと「ここ数年、車で来てテントサイトを利用する人が増えました」と管理人。
また、ソロキャンパーも増えているという。家族から解放されてのんびりしたいと、ご主人の勧めもあってやって来た50代女性、静かなところでボーッとしたいという30代など、それぞれが“ひとりの時間”を大切に過ごしている。

「登山の人は、体を休めるところを求めてここに来ます。宿泊の人は、心を休めるところを求めてここに来るような気がします」

かつて日本の天体観測をリードしていた堂平天文台

堂平天文台についても教えてもらった。
1962年、東京大学東京天文台の観測所として開設され、91㎝反射望遠鏡は当時、国内第2位の口径を誇っていた。

堂平天文台の91㎝反射望遠鏡。大きくて迫力がある
堂平天文台の91㎝反射望遠鏡。数々の発見に貢献してきた(観測ドームは通常は非公開)

比較的東京に近いこともあって、月・人工衛星レーザー観測装置などが次々に設置され、多くの研究者が観測に来ていたそうだ。

堂平観測所は一時期、日本の天体観測をリードしていた。1965年、しし座流星群の回帰がここで観測され、天王星のリングを最初に発見した1977年の観測にも参加していた。

かつて堂平の空は暗く、ごく小さな天体の観測も可能だった。しかし、都市の夜空は急激に明るくなり、東京に近い堂平観測所の観測環境は急速に悪化したという。
昨夜の夜景を見れば、確かにそうだったろうなと思う。

その一方で、世界各地に大口径の反射望遠鏡が建設され、1999年には堂平の9倍の口径を持つ「すばる望遠鏡」がハワイで観測を開始した。
堂平観測所の存在意義は非常に小さくなったと判断され、2000年に閉所。都幾川村(現ときがわ町)に譲渡され、2005年「星と緑の創造センター」として生まれ変わった。

堂平天文台ができて、今年(2022年)でちょうど60年。地元の人たちは子どものころから慣れ親しみ、天体が好きになった少年もいた。そうした人たちが今、管理人としてこのセンターを支えている。

星空を見に、また来ます

栄枯盛衰。それは天体望遠鏡の世界も変わらない。時の流れを感じ、天文台に「ありがとう。おつかれさま」という気持ちになった。
今回は星空を見ることができなかったけれど、また別の季節、天気のいい日に、ボーッとしに来よう。

今回乗車したホンダ「フリード HYBRID G」

今回乗車したホンダ「フリード HYBRID G」

狭い山道でも快適に運転できた。中は3列シートの6人乗り。3列シート目は左右にはねあげることができ、収納スペースがさらに広がる。キャンプ道具一式のほか、カメラの機材類や三脚も楽に入った(写真右)。高さもあり、自転車がそのまま積める。

車両協力:Honda Cars埼玉西 新狭山店
車両の詳細は、右のイラストをクリック!

今回乗車したホンダ「フリード HYBRID G」

今回乗車したホンダ「フリード HYBRID G」

狭い山道でも快適に運転できた。中は3列シートの6人乗り。3列シート目は左右にはねあげることができ、収納スペースがさらに広がる。キャンプ道具一式のほか、カメラの機材類や三脚も楽に入った(写真右)。高さもあり、自転車がそのまま積める。

車両協力:Honda Cars埼玉西 新狭山店
車両の詳細は、下のイラストをクリック!

〈参考DATA〉
 堂平天文台・星と緑の創造センター

モンゴル式テント、ログハウス内客室、バンガローはエアコンを備え、定員分の寝具もついて各10500円~。それに、施設利用料として1人1100円がプラスされる。共用施設としてログハウス内のキッチン、ユニットバス、トイレ、談話スペースを利用できる。
ほかに、テントサイトは1区画3200円~、施設利用料1人550円。人気の観測所ドーム宿泊施設は13600円~、施設利用料1人1100円。
日帰りのデイキャンプは大人550円、小中学生350円。

【注意事項】
・調理にはガスコンロや炭火を利用。薪(まき)などによる焚き火は不可。
・ごみは持ち帰りを。
※シーズンによって料金等は変動。詳しくは堂平天文台・星と緑の創造センターのホームページへ。