バードウオッチングビギナーに“探鳥会のススメ”

カワセミㅤㅤㅤ撮影:日本野鳥の会埼玉 廣田純平さん

緑の中を歩いていて、どこからか聞こえてきた鳥のさえずりに心地よさを感じたことはありませんか。「なんという鳥なんだろう?」という疑問がわいてきたなら、バードウオッチングを試してみては。新しい世界が広がるかもしれません。
バードウオッチングに少しでも興味があるなら、まずは、公益財団法人「日本野鳥の会」が各地で開いている「探鳥会」に参加してみる方法があります。今回、「日本野鳥の会埼玉」の探鳥会の事前下見に同行させてもらい、バードウオッチング初心者へのアドバイスなどを聞きました。

初歩的なことから教えてもらえる探鳥

三室地区定例探鳥会風景(さいたま市。2019年9月)。見沼代用水西縁の木陰道を、鳥を探してのんびり散策

探鳥会は会員でなくても、だれでも参加でき、経験豊かな野鳥の会のリーダーたちが、双眼鏡の調整の仕方や使い方といった初歩的なことから、鳥の見つけ方、見分け方まで教えてくれます。
日本野鳥の会のホームページによると、北海道から九州・沖縄まで全国各地の支部が探鳥会を開いていて、全国で年間約3千回、延べ約7万人が参加。埼玉支部でも年約100回の探鳥会を開いているそうです。

日本野鳥の会埼玉のリーダーたち。左から浅見徹さん、青木正俊さん、長野誠治さん

準備するもの
履きやすい靴、長ズボン、長袖、帽子、飲みもの、雨具、筆記用具

まずは、どんな準備をして、どんな身支度で行ったらいいのかを聞きました。
「通常の探鳥会なら、普段街中で着ている服にスニーカーで十分です」と、リーダーの青木さん。
両手が使えるように荷物の収納はリュックサックなどがお勧めで、季節に応じて暑さ、寒さ、日焼けなどの対策と、こまめな水分補給を心がけてください、とのことでした。

双眼鏡を買うのはちょっと待って

バードウオッチングの道具といえば、思い浮かぶのは双眼鏡ですが、「初心者は、探鳥会のときはなくてもOKです。わざわざ買わないでください。自分に合わないもの買ってしまうより、手ぶらで来てください。どういう双眼鏡がいいのか、使い方も含めてお伝えします」と、青木さんたちは口をそろえます。

双眼鏡には「8×21」「10×32」など「倍率×口径」が表記されています。
「初心者の人って倍率が高い方が良く見えるだろうと思って30倍とか買っちゃうんですが、画像が暗くなるし、慣れないとずれて見にくくなってしまいます。7倍、8倍くらいがいいんです」

このほかにも、双眼鏡の正しい調整の仕方、見たい鳥を双眼鏡でとらえる方法などいろいろなコツがあり、やはり詳しい人に聞いてみるのが一番わかりやすいと感じました。
「探鳥会では始める前に『まったく初めての方はいらっしゃいますか?』と声を掛けるので、安心して来てください。初心者歓迎です」

双眼鏡を携帯するときのストラップの長さもポイント。「下過ぎると歩くたびに動いてしまうので、私は胸のここが定位置です」と青木さん

探鳥会のコースや時間、参加費など

探鳥会のコースは、それほど長い距離やきつい高低などはありません。スニーカー履きで大丈夫な場所を選んでいます。そのため、幼稚園生・小学生くらいから参加できるそうです。

普通は、午前中の3時間程度、解散時刻は正午くらいが多いようです。
参加費は、会員100円、一般参加者200円。中学生以下無料。

コースはリーダーがその都度、事前に下見をして決めています。下見では、今どんな鳥がいるかを確認するだけでなく、工事などによって通行止めになっていないか、草が生い茂って歩きにくくないか、などをチェックしています

同行して感じたこと。鳥が見えた喜びと、生態を知った驚き

自然の中のコースは、のんびりと歩くだけでも楽しいものですが、そこに「どんな鳥に出あえるかな」というワクワク感が加わるのが探鳥会です。

青木さんは、子どもが小さかったころ、一緒に川辺を散歩していたら、カメラマンがずらっと並んでいる場面に出くわしました。その中で望遠鏡を持っている人が、見せてくれたのがカワセミ。「家の近くに、こんなきれいな鳥がいるんだ」と驚いたそうです。
探鳥会に初心者歓迎と書かれていたので子ども連れで参加してみると、子どもたちも大喜びで、当時は毎週のように探鳥会に参加していたと懐かしそうに話してくれました。

そんなことを聞きながら歩いていると、いろいろな鳥が姿を現しました。
遠くのものが良く見えるフィールドスコープで見せてもらったのはハシボソガラス。ひと言でいうと精悍(せいかん)な印象でした。
「ハシボソガラスは頭がよくて、いろんな遊びをしているのを見たことがあります。一番感動したのは、滑り台で滑って遊んでいたことです。上から滑り下りて、台の上まで飛んで戻って、また滑り下りる。あれは遊びですよね。遊ぶという行為は相当知能が高くないと成功しないんですよ」と青木さん。

周りに畑が広がる緑地帯へ来ました。遠くに林が見えます。「鳥にもよりますが、だいたい木の先端の方が好きなんです。だから木の上の方を、何かいないかなと見るとよいですよ」。
リーダーたちのアドバイスを聞きながら歩いていると、遠くの木立ちの上に大きな鳥が見えました。
「あそこ、なにかいますね?」と聞くと、「オオタカですよ!」。思わず「えーっ、ホントですか⁉」と、純粋にうれしくなってしまいました。

オオタカㅤㅤㅤ撮影:日本野鳥の会埼玉 廣田純平さん

「これはいいかも! こっちに近づいてくる!」「ツバメがモビング(※)してる! 初めて見た!」とみなさん。弱い立場のツバメが、強い立場のオオタカに対して「来るな!」と集団で攻撃をしかけ、追い払おうとしていました。夢中でカメラのシャッターを切りました。

※モビング=小鳥やカラスなどが群れをなして猛禽類などに攻撃をしかけ、相手を追い払う行動

ほかにも、オナガ、ムクドリ、モズ、ツバメ、ダイサギなどを見ることができました。

悠々と飛んでいたオオタカに、ツバメがモビングをしています

年内(2022年)の探鳥会予定

探鳥会日時予約
さいたま市・大宮第二公園探鳥会11月14日(月。埼玉県民の日)午前9時~正午予約制
加須市・渡良瀬遊水地探鳥会11月26日(土)午前8時45分~正午予約不要
初心者向け探鳥会@大宮公園12月17日(土)午前9時~正午予約制

※ほかにも探鳥会は予定されています。予約、詳細等は日本野鳥の会埼玉ホームページ「今月の探鳥会」へ。
※天候や諸事情により変更になる場合があります。

◆取材を終えて

最初は、みなさんが次々と鳥を見つけるのに圧倒されていましたが、視界の中で何かが動くと、だんだん目が行くようになりました。当初、黒の点にしか見えなかった鳥も、少しずつ色が見えるようになってきました。
カワラヒワという鳥を双眼鏡で追ったとき、羽の黄色い部分までとらえることができて純粋に感激。「太陽が透けて見えて、それはそれは美しいんですよ」と声をかけられ、そんな会話ができたことにうれしさも倍増です。

それからカラスの話をもう一つ。「今年生まれてようやく巣立った子ガラスって、目がクリクリっとしてて、かわいいんですよ。親の後を一生懸命ついて歩いて、エサちょうだいって、“ンニャー”と甘えた声で鳴くんです」と、リーダーたちが優しい笑顔で教えてくれました。
人間でいうと「ママ~! おなかすいたよ!」みたいな感じでしょうか。鳥も人も同じなのですね。

街中の公園でもスズメ、ハシボソガラス、ハシブトガラス、ムクドリ、ヒヨドリ、シジュウカラなど10種類くらいは見ることができるそうです。
こんなにも身近なところに、たくさんの野鳥がいることを実感した一日でした。

取材日:2022年9月10日
綿貫和美