【プラチナ企業】株式会社ジャムデザイン 多くの目と心に伝わるデザインを!

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材して紹介します。

今回は、紙媒体や動画の制作、ドローン空撮・FPVドローン撮影など幅広く手掛けている、総合デザイン会社「株式会社ジャムデザイン」です。昨年40周年を迎えた同社は、時代を見据えた事業を展開しています。2022年5月に完成したばかりの新社屋を訪ねました。

♯11  株式会社ジャムデザイン
設立:1982年(事業開始は1976年)
事業内容 : セールスプロモーションに関する媒体等の企画・制作、スチール撮影、ドローン空撮、FPVドローン撮影、動画制作、WEB制作 など
特徴 : 資格取得や講習会受講の費用支援、男性社員の育児休業取得の定着、アプリを活用したスケジュール管理、有給休暇取得促進 など

企業担当者にインタビュー

代表取締役 上野あすかさん

代表取締役 上野あすかさん

同社で営業と総務、経理を経験した後、2016年に社長となった上野あすかさんに会社の概要や職場環境などを伺いました。(以下敬称略)

上野さん

社員の協力で新規事業「動画制作」を開始

――会社の成り立ちを教えてください。

上野 ジャムデザインは、もともと大手量販店のPOP(ポップ)ライターをしていた私の父が創業した会社です。私は父が他界した後、社長になりました。主な事業は創業時から変わらず、スーパーマーケットの販促媒体をはじめ、パッケージデザインなどのグラフィック制作です。

――そうだったんですね。ところで、スーパーの「販促媒体」とはどういったものですか。

上野 パンフレットや各売り場のカテゴリー表示、季節・月ごとのイベントに関わる売り場表示などです。月ごとのイベントは、例えば10月はハロウィーン、2月はバレンタインデーなどたくさんあります。当社の仕事は、それらに関連させてデザインをしたものを作り、どんな売り場なのかを分かりやすくお客様へ訴求することです。イベントは毎年同じですが、毎回デザインを変えて提案しています。

――このほか、ドローン撮影や動画制作も手掛けていますね。

上野 世の中に“デジタル化の波”が来ていること、グラフィックの受注が減ってきたことから、4年前からドローンの導入をきっかけに動画制作を始め、昨年「デジタルコンテンツ部」を立ち上げました。紙媒体と一緒に動画・WEB制作を請け負うことができれば強みになると考えたんです。

――そのために新たに社員を採用したのですか。

上野 いいえ。営業やグラフィック担当の社員がそれぞれ勉強して、スキルアップしてくれました。ドローンの導入については私がまず、免許を取得しました。その後、「免許を取りに行こうよ」と社員を誘いました。取得のための費用の半額を会社が負担し、現在、社員の半数が資格を持っており、法改正後の国家資格取得も進めています。

――それは素晴らしいですね。すぐ仕事につながりましたか。

上野 すぐにとはいきませんでした。半年経って見かねた営業さんが動画制作の仕事を取ってきてくれたんです。最初は手探り状態でしたが、みんなで相談し、試行錯誤しながら進めて仕上げることができました。

直接的な仕事ではありませんが、ここ2年間、空撮大会に撮影チームが参加しています。最近では、岐阜県美濃市のPR動画を制作する「美濃市ドローン空撮大会」に第1回・第2回と続けて参加し、いずれも最優秀賞をいただきました。参加することで、一人一人のスキルアップやチームづくりにつながりますし、作品は当社のサンプルとして活用できるのでメリットは大きかったですね。

第1回美濃市ドローン空撮大会・最優秀賞のトロフィー(左)と、第2回大会の参加メンバー

今の“当たり前”への理解を広げて職場改革へ

――デザイン会社は忙しいイメージがありますが、どのようにして働きやすい職場づくりに取り組んだのですか。

上野 以前から広告業界は、残業が当たり前とされてきました。ただ業界に長く居る人には“当たり前”でも、若い世代にとってはそうではありません。それだけの理由ではないかもしれませんが、実際、20代の社員は入社しても長続きせず、辞めてしまうことが多かったです。

私は社員の意識改革が必要だと感じたので、「若い人たちの新しい意見を取り入れて新しいものを作っていくためにも仕事の効率化を図ってほしい」と、事あるごとに呼びかけました。そのうち、ミーティングの回数や時間を見直したり、会社全体を一つのチームととらえ、部署を超えて助け合えるようにしたりと変わっていきましたね。社員全員の協力があり、できていることです。

――目に見える変化はありましたか。

以前に比べて残業が減り、有給休暇の取得率も上がっています。一昨年と昨年に、周囲の協力もあって男性社員2人が育児休業を取得しました。全体的に、今の“当たり前”への理解が進んだと感じています。

――これから、どのような会社にしていきたいですか。

上野 社員にはもちろん、その家族にも「ジャムデザインで働いて良かった」と思ってもらえるような会社にしたいです。そのためにも、さらに働きやすい環境をつくっていく必要があると思っています。

当面の目標は、年間休日を一般的な企業より多い125日にすることです。休むときはしっかり休み、働くときはしっかり働いて、メリハリを付けられるようにしていきたいですね。プライベート時間が充実していることが、いい仕事につながると考えています。

社員にインタビュー

より働きやすくなった職場で充実した毎日を過ごしています

より働きやすくなった職場で充実した毎日を過ごしています

グラフィックデザイン部 細堀貴代さん

グラフィックデザイン部 細堀貴代さん

勤続8年の細堀貴代さんに、仕事の内容や働きやすさなどについて伺いました。

細堀さん

――入社のきっかけを教えてください。

細堀 専門学校でデザインを学び、卒業後はパッケージや広告制作に携わりたいと考えていました。当時住んでいた地元でも就職先をいろいろ探したのですが、なかなか見つからず、地元以外で探し始めたとき、ジャムデザインの求人に出合いました。「初心者歓迎」とあったので、ここだ!と思いました。

――現在、どのような仕事をしているのですか。

細堀 主に担当しているのは、各地にあるスーパーの店内に掲げる販促媒体の制作です。制作する際には、来店したお客さんがパッと見てどんな売り場であるかが分かるよう、見やすさを重視しています。例えば、秋には「おでん」「鍋物」「ハロウィーン」に関連した販促媒体を作りますが、色の傾向が似てしまいがちなので、書体や色を工夫し、違いをはっきり出すように心掛けています。

新店舗やリニューアル時にはプリンタ―とパソコンを持参して、お店に直接出向き、現場対応することもありますね。

――すごいですね。いろいろなアイデアを生み出すのは大変そうですが、どうやって発想力を磨いているのですか。

細堀 休日に美術館やアートイベントへ出かけたり、他のスーパーに行って媒体を見たり。ネットもよく見ますね。いろいろなところから刺激を受けています。新しい提案をする際は、取引先のご要望にプラスして、より良いデザインに仕上げることを意識しています。

――どんなときに仕事の楽しさを感じますか。

細堀 仕事柄、急な依頼を受けることがよくあるのですが、出来上がりの時間を考えつつ、迅速かつ丁寧に作り終えることができたときは達成感がありますね。

1日があっという間に過ぎ、入社後の8年もあっという間でした。いろいろな仕事をさせてもらえるので飽きることもないですし、日々やりがいを感じています。

細堀さんはイラストが得意。上は、同社のSNSで発信している、細堀さんによるイラスト

スケジュールの共有で仕事がスムーズに

――入社したころに比べて、働きやすい環境になったと思いますか。

細堀 はい、思います。以前は、自分の仕事スケジュールを紙に書いてチームリーダーに提出していたので、他の人の動きが分かりにくかったのですが、今はGoogleのスプレットシートを活用して一人一人の仕事量や全体の流れを全員が把握できるようになっています。自分がたくさんの仕事を抱えているとき、みんなのスケジュールを確認して手が空きそうな人がいたら、手伝いを頼めるようになったのは良かったですね。もちろん、私がヘルプに入ることもあります。仕事の振り分けがしやすくなり、残業も減りました。

社長が率先して「早く帰るように」と言ってくれているのも、帰宅時間が早くなった理由の一つです。みんな「帰らなきゃ」という気持ちになりますからね(笑)

――ほかに変化を感じることはありますか。

細堀 20代の社員が増えました。やっぱり同世代がいると話しやすいですし、気も許せますね。

それから、新社屋に移って、社員間のコミュニケーションが取りやすくなりました。旧社屋は3階建てだったので、デザイナーと営業のフロアが分かれていましたが、今の社屋は2階建てで同じフロアに集まっています。顔を合わせる機会が増えて、相談もしやすいです。

――これから取り組んでいきたいことはありますか。

細堀 私はこれまで動画制作には関わっていませんでしたが、スーパーの売り場で流す動画が必要になり、詳しい社員に教わりながら作ってみたらできるようになりました。動画制作やWEBを勉強すれば会社の役に立ちますし、社員同士で深いコミュニケーションを取ることもできます。みんなに置いていかれてないよう、新しいことに挑戦しようと思っています。

社屋の内部。左上から時計回りに「通路」「ミーティングルーム」「階段」「キッチンスタジオ」

株式会社ジャムデザイン
住所 埼玉県さいたま市岩槻区本町2丁目2-39-1
電話 048-757-6170

取材を通して

玄関から直接2階に延びる階段、キッチンを備えたおしゃれな撮影スタジオ、センスよく配置されたオブジェや植物。新社屋には「デザイン性が感じられ、『すてき』と言われるようなオフィスを目指した」という上野社長のこだわりが詰まっていました。

一方、移転を機に社員にはオーダーメードデスクと、長時間座っていても疲れにくい椅子を用意。物理的にも働きやすさを追求しています。

細堀さんは若手のホープ。仕事柄、パソコンの前から離れられないイメージがありますが、「あえてデスクから遠い場所に置いてある出力機まで行って作業をしたりして、適度に体を動かすようにしています」と健康管理もしっかり考えています。こちらの質問に対し、真摯(しんし)に丁寧に答える姿が印象的で、社長からも「頼りがいがある」と信頼を寄せられていました。

グラフィック制作をベースにしつつ、動画制作をスタートさせた同社。自ら率先して動く上野社長と、「自分も新しいことを始めたい」と話す細堀さんからは、攻めの姿勢で会社を守ろうとする気概を感じました。

取材日:2022年12月5日
矢崎真弓