【体験】イチゴの町で「あまりん・かおりん」を食べよう!~丹羽いちご園

もうすぐイチゴの季節がやってきます。栃木県の「とちおとめ」や福岡県の「あまおう」などが有名ですが、埼玉県にもオリジナル品種のイチゴがあるのをご存じでしょうか? 現在生産されているのは、「あまりん」と「かおりん」の2品種です。
イチゴの作付面積が埼玉県内で1位の吉見町に、あまりん、かおりんのイチゴ狩りを体験できる農園が数軒あります。両方の品種のイチゴ狩りができる、「丹羽いちご園」の丹羽佑樹( にわ・ゆうき)さんにお話を伺いまし た。

埼玉県にもあるオリジナル品種!「あまりん」と「かおりん

埼玉県オリジナル品種のイチゴ「あまりん」と「かおりん」の写真
埼玉県オリジナル品種のあまりん(左)とかおりん(丹羽さん提供)

丹羽いちご園では、「よつぼし」や「紅ほっぺ」などの人気品種に加え、あまりんとかおりん両方を栽培しています。2品種ともに糖度は同じくらいの高さですが、あまりんは、酸味が抑えられ、甘みを強く感じさせる味。一方のかおりんは、香りの良さと甘さの後で酸味が残る味わいが特徴です。あまりんに比べ、かおりんを栽培している農家が少ないため、かおりんを食べられるチャンスは希少です。両方を栽培しているイチゴ農園は数少ないそうです。

丹羽いちご園のハウス内。イチゴを摘み取りやすいよう、高い位置に設置されています
丹羽いちご園のハウス内。よつぼしを中心に栽培。イチゴを摘み取りやすいよう、高い位置に設置されています

「イチゴ狩りをするなら、いろいろな品種を食べ比べてほしいんです。品種が違うと実り方や色の付き方、大きさや形も異なります。イチゴ狩りだからこそ、体感できますよね。お気に入りの品種を探せるのは、イチゴ狩りの醍醐味です!」と丹羽さん。

あまりんとかおりんは他の品種に比べ、収穫できる実の数が少ないと、丹羽さんは感じています。かおりんは高級レストランやパティスリーが指名するほどの声があり、丹羽さんもお気に入りですが、粒は小ぶりです。もともと手間のかかるイチゴ栽培。さらに、寒い時季にイチゴを収穫するのは簡単ではありません。温度と湿度の調整、水と肥料の配合、土作り、ストレスを与える方法などで実がなるように促す必要があります。丹羽さんは日々、試行錯誤しながら、あまりんとかおりんに向き合っています。

人とのつながりが、イチゴの町に導いてくれた

丹羽いちご園の丹羽佑樹さん
お話をお伺いした丹羽さんと、成長中の「あまりん」「かおりん」の本圃(ほんぽ)

丹羽さんが吉見町でイチゴ農園をオープンしたのは、令和元年です。金属工場で勤務した経験から、ものづくりのおもしろさを知り、就農を決意。はじめは稲作に携わっていましたが、吉見町でイチゴ農園を開業するという方の誘いを受け、イチゴを育てるようになりました。吉見町のイチゴ農家の数は、盛んだったころに比べると大きく減っています。

「今のイチゴ農園にたどり着いたのは、人との縁とタイミングに恵まれたからこそ。イチゴ農家の数が減っても、昔からのイチゴ栽培の知見に加え、イチゴ農家が情報交換しながら切磋琢磨できる環境が、吉見町にはそろっています」

イチゴをはじめ、農産物は新しい品種が絶えず登場し、研究が進むと栽培方法も年々変化します。生き物が相手の農業は、正解がなく、毎年新鮮な気持ちで挑戦できる仕事だと、丹羽さんは感じています。

「就農した時に言われた『農業は一人勝ちなんてないんだ。地域で協力し合いながら盛り上げていくものなんだ』という言葉が、心に残っています。吉見町のイチゴ農家がますます元気になるように、これからも頑張っていきたいですね」

◆取材を終えて
丹羽さんに、おいしいイチゴを見分けるコツを伺いました。
「イチゴ狩りでは、しっかり赤く、中くらいの粒がおすすめですよ。イチゴの実は成長して、形ができた後で先端から赤くなり、熟していきます。真っ赤で大きな実はお客さんから人気なので、なくなるのが早いです。イチゴ狩りで大粒の実を見つけても、赤くなったばかりかもしれません。中粒だと、程よく熟成されて、大粒より甘い可能性がありますよ。熟してから時間が経つと、過熟と呼ばれ、水っぽくなってしまいます」

できる限り大きめの実を探して食べていたので、衝撃を受けました。次のシーズンのイチゴ狩りから、さっそく中くらいの実を探してみたいと思います。

取材日:2022年12月9日
塚大あいみ