【挑戦者たち】毎日の小さな余白にすてきなひと時を~宮代町「ROCCO」

自分が住む町に、ふと人が集まるスポットが誕生するとワクワクしませんか。
東武動物公園駅から徒歩15分、白い建物が目印の「ROCCO(ろっこ)」は、昨年(2022年)10月にオープンした6戸(6軒)の平屋が目印の横丁スタイルの店です。築50年の平屋をリノベーションし、4つの店とシェアキッチン、イベントスペースから構成されています。なんだかおもしろい場所ができたと、地元の人はもちろん、遠くから遊びに来る人も少なくないといいます。仕掛人の中村和基さん、中村幸絵さんにお話をうかがいました。

和基さん(左)と幸絵さんは兄妹。長男含め中村家三兄妹が中心となり企画。6戸(ろっこ)の建物から成り立つこともありROCCO(ろっこ)といいます

<和基さん・幸絵さんの考え方> 

 チャレンジへのアプローチ
・考えるだけではなく、動いてみる。行動しなければ何も起きない
・失敗しても大概のことはどうにかなる

 はじめの一歩を踏み出すには
・おのずと動かされる時がある。人、縁がつながるタイミングを逃さない

 仕事を続けていくには
・人を楽しませるには、自分が一番楽しむこと。どうせならおもしろく働く方法を考える

ROCCOはもともと古い空き家でした。近くにスーパーマーケットや新しい商業施設、新しい住宅地が立ち並んでいるものの、空き家周辺はごみが散乱し、薄暗く、治安も悪そうで、人が近寄りにくい雰囲気だったとか。

兄妹での何気ない雑談がROCCO誕生のきっかけに

「ぼろぼろだったけど、小さい家が6戸並んでいるのが印象的だった」という幸絵さん。
「買い物ついでに一杯飲んで帰れる場所とかになったらいいなあ、と冗談まじりに兄妹で話してたんです。何かおもしろいことができそうだよねと。そうしたら兄(長男)が契約してきたというので、びっくりしました」

代々営む中村建設を継いだ長男は「これと決めたらすぐ行動」の人だそう。雑談後に長男が調べたところ、空き家は祖父が建設を請け負った物件だったことが判明。地主に相談したら「昔から知っている中村さんなら」と契約を快諾、「おもしろそうだね」と一緒に楽しんでくれているとか。

縁と人とタイミングが合わさって実現したROCCO

「冗談で言っていたら、本当にやらなきゃいけなくなっちゃって」と笑う和基さんと幸絵さん。
行動力ある長男と、設計事務所を設立した一級建築士の次男・和基さん、グラフィックデザイナーの末っ子・幸絵さん、そして中村建設で不動産などを担当する片岡大輔さんが中心となり、連日コンセプトなどを議論。
「父親の介護もあり、三兄妹が家に集まり、ご飯を食べながら、ああでもない、こうでもないと、話し合いました。かけた時間は短かくても、深く濃い詰め方ができた」といいます。
中村建設で古くから付き合いがある職人たちの協力も得て、スピード感をもって実現できたのは、「縁と人とタイミング、いろいろな人の協力や一緒に作り上げる気持ちが形になったから」と語る和基さん。
幸絵さんも「ここまで三兄妹みんなで話し合う機会って、実ははじめてだったんです。ROCCOをきっかけに家業のことを知る機会にもなりました」と話してくれました。

ロゴなどのグラフィックデザインは幸絵さんが担当

ROCCOは「毎日の余白にすてきなことを」をテーマに、横丁のように屋外でも飲食できたり、“はしご”して楽しめるようにつくられています。宮代町や杉戸町など地元発で、「あそこに行けば間違いない」というこだわりの店・ものを徹底してセレクト。なんでもネットで買える時代に、ここでしか買えないものをそろえたそう。いろいろな人が挑戦できるようにと設けたシェアキッチン棟は、ほぼ前日埋まっているという盛況ぶりで、日によって多彩な料理が楽しめるといいます。

入居するのは、世界2位(2021年)に輝いたバリスタが入れるコーヒー店「Bespoke Coffee Roasters」、ギリシャヨーグルトを中心としたフードを提供する「M YOGURT」、手作りのあげもちや煎餅を販売する「宮代もち処 J ファーム」、老舗酒屋が運営する「サカヤ × ビストロ FusaFusa」

どうせなら、おもしろく、楽しく働きたい

和基さん、幸絵さんはWORKとLIFEを分けて考えるのではなく、常によりよく暮らすには、楽しくするにはどうしたらいいかを考えているといいます。月1回定例会を開いているROCCOメンバーも、みんな毎回たくさんのアイデアを持ち寄って話し合っているそう。
「昔ながらのスタイルかもしれませんが、みんなで集まってわいわい食べ飲みしながら話し合っています。働くとしても、そういう方が楽しい」と和基さん。
「飽きられないように常に変化していきたい。そのためには、自分たち自身が楽しんでいられることが大事」と語る幸絵さん。「訪れる人がここを好きになってくれて、最強の暇つぶしになるような場所を目指したい」と語ってくれました。

6戸目は「あずまや」と呼ばれ、人が集まれる場やイベントスペースになっています

取材を終えて

印象的だったのは、住宅地の中にふと現れた白い建物ROCCOのまわりに、どんどん人が吸い寄せられていくさまでした。近所に住む人、少し遠出してきた人、老若男女が、コーヒーやスイーツを片手に外でのんびりと過ごしたり、店のスタッフと会話を楽しんでいる様子は、自然と人と人がつながり、何かおもしろいことが生まれそうな雰囲気がありました。あなたもROCCOへ足を運んでみてください。ワクワクが見つかるかもしれませんよ。

取材日:2023年1月19日
小林聡美