その実現が求められて久しい「男女共同参画社会」。性別問わず、誰もが個性と能力を発揮できる社会をつくるため、企業においてもさまざまな取り組みが行われています。
1都6県で事業を展開しているハウスメーカー「株式会社富士住建」では、大勢の女性社員が活躍しています。仕事と子育てをしなやかに両立している管理職の女性も少なくありません。また、社会貢献活動に熱心に取り組んでいることも、同社の大きな特徴です。
一体どのような企業なのでしょうか。女性管理職の方へのインタビューを中心に同社について紹介します。
株式会社富士住建
設立:1987年
事業内容 : オプション設備を必要としない完全フル装備の木造注文住宅の企画・施工・販売、アフターリフォーム、建築資金の相談受付など
特徴 : <職場環境>企業内保育所「フルまる~む」、自己申告昇進制度、適材適所の職務体系、外部研修や資格取得のための費用補助 など
<社会貢献活動>地域清掃活動、森林保全活動、寄付活動、日本パラスポーツ協会オフィシャルサポーター など
女性管理職にインタビュー
発注課 課長 齋藤 郁(かおる)さん
発注課 課長 齋藤 郁(かおる)さん
2006年に入社し、2015年に課長となった齋藤 郁さんにお話を伺いました。(以下敬称略)
住宅建設に必要な部材の発注を担当
――入社のきっかけを教えてください。
齋藤 都内の短大を卒業した後、県内で働きたいと思い、業種を限定せず仕事を探しました。企業説明会で、さまざまな会社の担当者から事業内容などを聞く中、当社の人事の方がとても楽しそうに話していたのが印象的だったんです。きっと雰囲気の良い会社なのだろうと思い、試験を受け、入社しました。
――今、どのような仕事をしているのですか。
齋藤 私は入社以来、ずっと「発注課」に所属しています。お客様が建てる注文住宅に必要な部材を取引先に発注するのが、この課の仕事です。柱、床材、壁材、ドア、窓、浴槽などすべてですね。当社では、引っ越したらすぐに住める“完全フル装備の家”を手掛けていますから、カーテンや照明器具といったものまで含まれます。
発注すべきものは基礎工事の着工前には決まっていますが、納期に遅れたり、部材の数を間違ったりしないよう、十分に気を付けています。
――責任あるお仕事ですね。物件ごとに一人で担当するのですか。
齋藤 そうです。工事部の社員を通してお客様のご要望をお聞きしますので、その通りに発注してそろえていきます。自由設計ですから、発注内容は物件によっていろいろです。お住まいになるお客様の家族構成などを資料で確認して、もしこちらから提案できるものがあった場合は、工事部を通して伝えることもあります。
――どんなときに仕事のやりがいを感じますか。
齋藤 お客様に直接お会いすることはないのですが、お引渡しが無事に済んだことを知ったときはうれしいですね。「富士住建に頼んで良かった」「お風呂が大きくて楽しい」といったお褒めの言葉が会社に届くこともあります。ときには耳の痛い話もありますが、お客様からお伝えいただくのはとてもありがたいことなので、次につなげるようにしています。
課長就任を機に広い視野を身に付けて
――現在、発注課には何名所属しているのですか。また、7年前、課長に就任してから仕事への意識は変わりましたか。
齋藤 発注課のメンバーは、私を入れて8名です。私と同世代で子育て中の女性社員もいます。
昇進前は、私は自分の仕事だけに集中していましたが、課長になってからは一人一人が働きやすいように配慮したり、全体の仕事の進み具合を確認したりしています。また、社内においての発注課の立ち位置や求められていること、どうすればお客様のためになるのかといったこともより深く考えるようになりました。それまでに比べ、広い視野を持って働いているという自覚があります。
昇進に当たり勉強が必要だと感じたため、研修制度を利用して外部で開かれている管理職セミナーに通いました。当社の研修制度は、1年ごとに各自に予算が与えられ、自分の好きなときに好きなだけ受けられるというもので、とてもありがたいです。
――御社には自己申告で昇進できたり、性別問わず、適材適所の職務に就けたりする制度があるそうですね。どういったものですか。
齋藤 自己申告昇進制度は自分でレポートを書いて提出した後、面接を受けて昇進を判断されるというものです。「適材適所の職務」は、本人の希望を聞き入れてもらえて、その人に合った部署で働くことができる制度です。私は入社以来、発注課で働いていますが、他部署間の異動はよくありますね。自分の能力を生かして成長できる、良い制度だと思います。
内線でやり取りできる企業内保育所
――今年(2022年)4月、産休・育休から職場復帰したと聞きました。復帰に当たり、不安はなかったですか。
齋藤 1年4か月ほど休みを取って職場に戻りましたが、特に不安はなく、楽しみのほうが大きかったですね。
――お子さんは、企業内保育所「フルまる~む」に預けているんですね。
齋藤 はい。私の部署は社屋の2階、保育所は1階にあり、内線でつながっています。子どもが急に熱を出したとの連絡が入ったときも、すぐ駆けつけられますし、子どもを病院に連れて行くことになった場合でも、慌てず段取りをすることができるので安心です。
――出産前から企業内保育所を利用することを決めていたのですか。
齋藤 私が入社したころ、他部署ですが、フルまる~むを利用しながら昇進した女性の先輩がいたので、当時からこうした働き方ができる会社なんだなと思っていました。実際、これまでフルまる~むに子どもを預けて働いている先輩を何人も見てきましたし、私より先に出産した同期や後輩も保育所を利用しています。特に決めていたわけではなく、自然にそうなった感じです。
――こちらでは、子育てとの両立は特別なことではないんですね。ところで、富士住建は、さまざまな地域貢献活動に取り組んでいらっしゃいますね。
齋藤 毎週月曜日は、全営業所で地域の清掃活動を行っています。通りかかった方から「いつもありがとう」と声を掛けていただくこともありますね。車に乗っている方が、わざわざ窓を開けてお礼を言ってくださったときは感激しました。
森林保全活動として、和歌山県に「富士住建の森」をつくっていて、社員が毎年、出向いて植林や整備をしています。
――今後の抱負を教えてください。
齋藤 私は出産・育児をする中で、住環境の大切さを改めて感じました。住宅購入という、お客様の人生に大きく関わる仕事をさせていただいていることに感謝しながら、さらに知識を深め、成長していきたいと思っています。建築についても、改めて勉強してみようと考えています。
<新社屋へ移転>
2023年3月、富士住建を含む全てのグループ会社と企業内保育所「フルまる~む」が移転しました。
FJホールディングス株式会社 住所:埼玉県上尾市東町2-9-20
・株式会社富士住建(注文住宅事業) 電話 048-778-3310
・SAZAIE株式会社(不動産事業)
・株式会社カルミア(エクステリア事業)
・株式会社フルまるリフォーム(リフォーム事業)
取材を通して
企業内保育所は、1階フロアにドア1枚のみで仕切られた場所にありました。ドアを開けると、オフィス空間から保育所へと一瞬にして世界が変わったのが、印象的でした。保育士は、同社の正社員として安定して働いているそうです。
「朝、娘の髪を二つ結びにして送り出したのに、帰りに迎えに行くと編み込みにしてもらっていたりします」と笑う齋藤さん。その言葉からは、安心感と感謝が伝わってきました。
社員一人一人が能力を発揮できる環境の中で、齋藤さんは今の働き方を選びました。その姿勢は、とても自然体で特別感は全くありません。職場環境がしっかり整っていれば、女性の昇進や育児との両立は決して難しくはないということでしょう。
社会貢献活動にも幅広く取り組んでいる同社。社員も社会も大切にする、まさに今の時代にマッチした企業だと思いました。
取材日:2022年12月2日
矢崎真弓