【プラチナ企業】斉藤商事株式会社 機能性とカッコよさを備えた1着を提案

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材して紹介します。

今回は、主に企業のユニフォームや制服などのプランニングを行う「斉藤商事株式会社」です。大手企業をはじめとする取引先からの信頼を得て、業績を伸ばしていますが、同社自体は社長を含め従業員数13名と小規模です。またそのうち8名が女性とのこと。どのような会社なのでしょうか。富士見市にある社屋を訪ねました。

♯13 斉藤商事株式会社
創業:1941年
事業内容 : 企業のユニフォームやスポーツウエア、セールスプロモーション商品等の企画・製造・卸し・納入度など
特徴 : 毎週水曜日のノー残業デー、オリジナルシステムによる業務効率化、研修費用の全額負担度など

企業担当者にインタビュー

代表取締役社長 尾島敏也さん

代表取締役社長 尾島敏也さん

職創業者を父に持つ、2代目社長の尾島さんに事業内容や職場環境について伺いました。(以下敬称略)

尾島社長

環境保全に貢献できるユニフォームも

――さまざまな企業にユニフォームを提供されていますが、新しいものを企画・提案する際、ポイントとなるのはどのようなことですか。

尾島 いくつかありますが、まずは動きやすく、働きやすいということです。例えば、運送会社の運転手さんのユニフォームなら、運転のしやすさを考慮してストレッチを利かせたものがいいでしょうね。

それから、“カッコイイ”という視点も必要です。ユニフォームがカッコイイと、企業のイメージアップになりますし、着ている人のモチベーションも上がります。実際、運転手さんの安全運転や車内清掃の徹底などにもつながっているようです。

全国展開をしている店舗のユニフォームの場合、寒い地域で着用するものは、中に着込むことを考え、適切なサイズについても併せてご提案しています。

――ユニフォームの色や素材はどのように決めているのですか。

尾島 企業のカラーイメージを使ったり、そこに少し流行の色を加えたりします。ドラッグストアは清潔感が大事ですから、白が基調になりますね。

素材もいろいろありますが、しわになりにくく、洗濯機から出して、アイロンをかけなくても、そのまま着られるものは喜んでいただけます。私たちはユニフォームを通して、感動、感謝していただけることを目指しています。

――ほかにポイントとなることはありますか。

尾島 当社では、カーボンオフセット(※)付きのユニフォームも扱っています。最近、取り入れる企業が増えてきましたね。以前、ドラッグストアのユニフォームのコンペでカーボンオフセット付きを提案したところ、1着の値段が最も高かったにも関わらず、6社の中から選ばれました。企業の意識も変わってきたと感じます。このユニフォームを着て働くことで、社員の方も自然環境への意識が高まるのではないかなと思います。
※カーボンオフセット=自分では削減が困難な二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量分を、他の場所で行われる温室効果ガスの排出削減活動へ投資することで、オフセット(埋め合わせ)する仕組み

同社が手掛けたユニフォームの一部

少数精鋭で業績好調。利益はしっかり社員に還元

――いろいろな提案をするためには、どのような心掛けが必要ですか。

尾島 日ごろから感性を磨くことですね。身近なところでいえば、ショッピングモールやホームセンター、百貨店などを見て回ることも大事です。コロナの影響で休止していますが、当社では若手社員をヨーロッパで開かれるユニフォームの展示会に送り出しています。展示会を見た後、ヨーロッパの空気を感じながらビールを飲んだりすることも感性を磨くことになると思っています。

こうした経験は、社員個人と会社の財産になりますので、「研修に行きたい」「勉強したい」ということであれば、会社で費用を負担しています。

――それはすごいですね。ところで、「小さくても一流」というポリシーを掲げていますが、それはどういう意味ですか。

尾島 会社が大きくなると、目が行き届かなくなったり、サービスの質が落ちたりする恐れもありますから、小さいままで続けて、しっかり仕事をしていくという意味です。現在、当社では、どんな小さなクレームも拾い上げて社員全員で共有し、真摯(しんし)に対応することを徹底しています。それができるのもこの規模だからだと思います。

少人数でも仕事をスムーズに進められるよう、オリジナルシステムを導入してユニフォームの受発注の管理をしたり、社員同士が常にサポートし合ったりしていますので、残業はほとんどありません。

――少数精鋭という言葉がぴったりですね。

尾島 私はいつも当社のことを“小さいけどターボエンジンを積んでいる会社”だと言っています。私はよく泊りがけの出張に行きますが、社員から相談などの電話がかかってくることはないですし、こちらから「何かありますか」と会社に連絡しても「特にありません」と言われます。安心できて良いことなのですが、ちょっと寂しいくらいです(笑)。

そんな社員たちは、みんな素直で優しいです。仕入れ先に対しても、上からモノを言うことなど決してなく、“買わせていただいている”という姿勢ですから「こんな優しい会社、ほかにないですよ」と言われますね。

売上が伸びたら、ベースアップやボーナスなどで社員にきちんと還元しています。大手住宅メーカーに発注して家を建てている社員も多いですよ。

――今後の目標を教えてください。

尾島 これから、どのように世の中の情勢が変化していっても、変わらず、今の事業を継続していくことを目指しています。

社員にインタビュー

家庭的な雰囲気の中、社員同士が自然に協力し合っています

家庭的な雰囲気の中、社員同士が自然に協力し合っています

営業企画 下田弘之さん
営業企画・アシスタントマネージャー 宜保(ぎぼ)和子さん

営業企画 下田弘之さん
営業企画・アシスタントマネージャー 宜保(ぎぼ)和子さん

勤続約20年の下田さんと、勤続約17年の宜保さん。ベテラン社員二人に、仕事内容や働きやすさなどについて伺いました。

下田さん

既製品にアイデアをプラスしてオリジナルに

――入社のきっかけを教えてください。

下田 スポーツが好きだったので、何か関連する仕事をしたいと思い、スポーツウエアを扱っている当社に入社しました。21歳のときです。

宜保 経理の仕事を探していて、こちらを見つけました。経理で入社したのですが、少しずつ営業アシスタントの仕事を手伝うようになり、今は商品企画や広報などを担当しています。

――具体的にどのような仕事をしているのですか。

下田 営業に行き、希望に合ったユニフォームの企画・提案をし、協力工場と連携しながら製作するといった一連の仕事に携わっています。営業先では、今、何が必要かをしっかり聞くほか、実際に仕事現場を見たり、働いている人の声を聞いたりしてどんなユニフォームなら良いのか考えます。もちろん、ご予算も考慮します。

当社のユニフォーム製作には、一からオリジナルを作る「フルオーダー」と、既製品に刺しゅう・プリント加工をする「セミオーダー」があります。既製品を使う場合は、私とアシスタントで意見を出し合って加工の仕方を決めています。

宜保 営業担当者と一緒に、既製品をどう加工すれば、効果的でカッコイイものになるか、お客様のご希望に合うかを考えるのがアシスタントの仕事です。通常、袖などに入っている企業のロゴをユニフォームの側面に入れることをご提案したこともありますね。以前のユニフォームには、男性がブルー、女性はピンクといったイメージがあったと思いますが、今は性別に関係なく着られるようなものが主流になってきています。

普段からカッコイイ加工の仕方を考えていますので、つい、街で働いている人の服装に目がいきますし、テレビを見ていてもユニフォーム姿の人が出てくると注目してしまいますね。

――仕事の楽しさを感じるのはどんなときですか。

下田 アシスタントや協力工場と話し合いを重ねて作ったユニフォームをお客様に喜んでいただけると達成感があります。その後、自分が手掛けたユニフォームを着ている人を街で見かけたりすると、役に立てていることを実感できますね。

宜保 私は直接お客様にお会いしませんが、電話やメールでのやり取りでお勧めしたユニフォームを「すごく良かった」と褒めていただけると、ますますやる気が出てしまいます(笑)。

2階のオフィス内。社長室はなく、尾島社長も同じフロアで働いています

――職場環境の良さを教えてください。

下田 アットホームで、いろいろなことを相談しやすい環境です。コミュニケーションが密で、常に協力し合って仕事をしていますし、それぞれが明るい雰囲気づくりを心掛けています。とても居心地の良い職場です。

宜保 私の提案を社長がいつも「いいよ」と言ってくれるので、いろいろ挑戦することができます。2013年には、カーボンオフセット付きのユニフォームを提案して採用してもらえましたので、環境保全活動の輪も広がりました。またお勧め商品を選び、チラシを作ってご案内することで売上につながるとやりがいを感じます。

――カーボンオフセット付きユニフォームは、宜保さんの発案だったんですね。先見の明がありますね。

下田 SDGs(持続可能な開発目標)に取り組めるとあって、このユニフォームは営業先の方にも高い評価をいただいています。

――ところで、水曜日がノー残業デーに設定されているそうですね。

下田 水曜日に限らず、長時間、社内にいると無駄な電力を使うことになってしまいますから、環境面から考えても残業をしないよう、会社全体で取り組んでいます。自分も定時に帰ることを心掛けていますし、周囲にも目を配っています。

――会社を挙げて、SDGsに取り組んでいるんですね。今後、どんな会社にしていきたいですか。

下田 今の家庭的な雰囲気を大切にして、新入社員もなじみやすく、働きやすい職場環境を保っていきたいです。コロナ禍で休止していた社内イベントも復活させたいですね。

宜保 大手企業に負けないくらい知名度を上げることと、お客様に喜んでいただき、ユニフォームを買うなら「斉藤商事から」と言っていただけるようになることを目指したいです。

会議室には2020年に受賞した「SDGsカーボンオフセット賞」(経済産業省)などの表彰状が並んでいます

斉藤商事株式会社
住所 埼玉県富士見市水谷1-1-27
電話 049-254-3110 

取材を通して

同社は、名だたる企業からユニフォームづくりを任されています。社員数が13人と知ったときはその少なさに驚きましたが、お話を伺い、職場環境が整っていれば、少人数でも大きな仕事をなんなくできることがよく分かりました。

同社の場合は、尾島社長の優れた経営手腕と、下田さん、宜保さんをはじめとする社員の皆さんの仕事への実直な姿勢があるからこそ、スムーズに仕事を進めることができているのだと思います。

社員が少ない分、一人一人の“仕事力”が問われる職場でもありますが、社内にハードな雰囲気はなく、午後3時にアイスクリームを食べて休憩するといった“ゆるさ”もあるとのこと。またコロナ禍以前は、社内のキッチンを使い、手分けして社員分の昼食を作ることもあったそうです。これは小規模ならではの良さであり、より良い仕事をするために必要な結束力を高めることにつながっているように思います。

取材日:2023年3月28日
矢崎真弓