【挑戦者たち】やりたいことを実現させるには~朝霞「コトノハコ」から

こんなことをやってみたい、マルチワーク(複業)を始めた、起業しようか迷っている、など、自分らしい働き方・生き方を模索する人が増えています。
今回紹介するのは朝霞にある複合型レンタルスペース「コトノハコ」を企画・運営する滝澤いとさんです。
「フリーランスや個人で活動する人が、つながり交わることで、次の一歩を踏み出すきっかけになりたい」と同店を始めました。
やりたいことを実現するにはどうしたらいいのか、滝澤さんに聞きました。

コトノハコの企画・運営を行う滝澤さん

<滝澤さんの考え方> 

 チャレンジへのアプローチ
・やりたいことを、どうしたら実現できるのか、具体的に考えて書き出す
・それをひとつひとつ実行していく
・やりたいことのイメージを人に伝える文章やビジュアルを準備しておく

 はじめの一歩を踏み出すには
・やらない後悔より、やってみること。たとえ失敗してもそこから得るものが必ずある
・腹を決める。自分が走り抜くための覚悟と決断

 仕事を続けていくには
・失敗しても、そこから学んで次につなげる(失敗で終わらせない)
・自分の経験から、うまくいく波をつかむ感覚を育てる

コトノハコは、法人として住所を置く、シェアオフィスとして利用する、ハンドメイドの制作活動やワークショップの開催、シェアキッチンで菓子製造するなど、さまざまな形で利用できる場です。

同店を仕掛けた滝澤さんは、美術大学を卒業し、デザインを中心にものづくりの仕事に携わってきました。会社員からフリーランスに転身、家族の海外駐在に帯同し仕事を中断していた時期を経て、帰国後に仕事を再開してから、心境の変化があったそうです。
「ふと、“ひとり仕事“がさみしく感じたんですよね。他のフリーランスの人がどうやって仕事をしているのか、気になり始めたんです」
そこでフリーランスの交流会に参加。浦和・大宮エリアにはつながる・学ぶ機会がたくさんあることを知ったそうです。
「荒川のむこうには、個人で仕事をしていても社会とつながっている感覚が持てる環境があったんです。朝霞にもそういう場や機会がほしい!と思ったのがコトノハコにつながるきっかけでした」

滝澤さんは、まず個がつながる機会づくりとして、テーマを設定して話し合う会をカフェなどで開催。しかし、不定期に人を集めても、参加者のタイミングが合わなかったり、真剣さに濃淡があるなど、自身がイメージしていたものとはギャップを感じた滝澤さん。そこで拠点を持って活動することを考え始めたそう。
そんなときにコトノハコ物件オーナーである佐藤よしえさんとの縁がつながったといいます。

滝澤さん(左)と佐藤さん。タイプが全然違うからこそ、互いを補いながらうまくいく、そんな関係が心地いいと教えてくれました

佐藤さんは、滝澤さんの、個がつながり・交わり・新たな何かにつながっていく場というイメージに共感し、物件を貸すことを即決してくれたそうです。
やりたいことを見つけ、順調に機会と縁をつないでいるように見える滝澤さんですが、そこに至るまでには数々の失敗と学びがあったそうです。

やらない後悔より、やってみる。だから全力投球

もともと、「やりたいことが明確なタイプ」だという滝澤さん。それは母親の影響が大きいといいます。
「やらないで後悔するより、やって後悔しなさい、というのが母からの教えなんです。やらなかったことを後悔しても何にもならない。やってしまった!という後悔(失敗)なら、そこから学ぶことで身につくものがある、だから、やりたいことがあれば挑戦しなさい、そのためには全力で応援するから。と母はいつも言ってくれました」

だからこそ、「やりたいこと」をどうやったら実現できるか、常に考えているという滝澤さん。
これまでの経験から見出した、うまくいくコツを教えてくれました。
「“○○に電話する” “○○を確認しておく”レベルでもいいんです。具体的に書き出して、ひとつひとつ実行していく。すると、いつのまにか何か形になっているものがある」といいます。
また、なぜやろうと思っているのか目的を明確にすることが大事だそう。そして、「ここでやらなかったら後悔しないか」と自分に問うといいます。
「何かをやるときは本当に全力です。とにかく駆け抜ける。そのための覚悟と決断は必要」と教えてくれました。

縁もまた、やりたいことの実現を後押しする大事なポイントだといいます。
「どこで縁がつながるかわからないので、人に言い続けることも大事です。そして、やりたいことは文章化、ビジュアル化しておくと助けになります。自分のイメージも具体的になるし、なにより人に伝わりやすくなります」

そうやって行動していくと、すんなりとことが運ぶ場合があるといいます。
「まるでパズルのピースがはまっていくように、ひとつひとつのできごとがぴたりと絶妙なタイミングではまっていき、ものごとがスムーズに進んでいく。そんな時は “ああ、これはきっとうまくいく”“今波が来ているから乗るべきだ”と感じることができるんです。逆に結果がうまく残せない時は、はじめからうまくいかないことが多い」
そういった感覚がつかめるようになったのも、やって失敗した経験があったからだそう。
「だから、やりたいことがある人はそれを幸せだと思って、やったほうがいい。漠然とした不安を感じるより、どうやったら実現できるかを考える方に力を注いだ方がいい」という滝澤さんは、現在まちづくりの活動にも挑戦しています。

コトノハコはJR武蔵野線「北朝霞駅」、東武東上線「朝霞台駅」から徒歩6分

取材を終えて

コトノハコ利用者にはハンドメイド作家も多く、いろいろな場で出品する機会があるそうです。うまくいかないことがあっても、「コトノハコは戻ってこれる場所」「何かあってへこんでも、元気をもらって、もう一度チャレンジできる」と言ってくれる人が多いそうです。前へ進もうとする人たちのホームであり、ときに充電して、ときに喝を入れてもらう場所を、滝澤さんや佐藤さんが作っているのだと思いました。

取材日:2023年3月24
小林聡美