【プラチナ企業】株式会社RHS 適切なケアプランと福祉用具で利用者を支える

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材して紹介します。

今回は、介護関連の2つの事業を展開している「株式会社RHS」です。働きやすい環境のため、社員に心の余裕が生まれ、それがより良い仕事や向上心につながっているようです。介護支援専門員(※)や福祉用具専門相談員などの有資格者たちが働く、春日部市のオフィスを訪ねました。

(※)介護支援専門員=ケアプランの作成や介護サービス提供事業者等との連絡・調整などを行う専門職。別名「ケアマネジャー」

♯14 株式会社RHS
創業:2010年
事業内容 : 「福祉用具アプローズ」=介護・福祉用具のレンタル・販売、バリアフリーリフォームなど、「介護保険プランナーズ」=介護保険相談・申請、ケアプランの作成
特徴 : 資格取得費用のサポート、在宅ワークの導入、年間休日数125日など

企業担当者にインタビュー

代表取締役社長 飯村真啓さん

代表取締役社長 飯村真啓さん

主任介護支援専門員(※)と理学療法士の有資格者でもある、代表取締役の飯村真啓さんに、事業内容や職場環境について伺いました。(以下敬称略)

(※)主任介護支援専門員=介護支援専門員の上級資格。別名「主任ケアマネジャー」

代表取締役の飯村さん

家庭と仕事の両立を目指して在宅ワークを導入

――会社設立のきっかけを教えてください。

飯村 以前は、理学療法士として病院に勤務し、患者さん宅への訪問リハビリなどを担当していました。その中で、患者さんが自宅で安心して過ごすためには、室内の環境整備が重要だと感じ、自分の専門性を生かしてできることはないかと考えるようになりました。そして、まず始めたのが、福祉用具のレンタル事業「アプローズ」です。

5年後、より良いサービスを提供するため、ケアマネジャー(以下「ケアマネ」)の資格を生かして、ケアプランを作成する事業「プランナーズ」を立ち上げました。現在、6人のケアマネが在籍しています。

当社が目指しているのは、自宅で生活する方の“できること”を増やし、楽しみや生きる喜びを持ってもらうことです。

――プランナーズのケアマネは、在宅ワークができるそうですね。

飯村 在宅ワークを取り入れようと試行錯誤を続けていたときにコロナ禍になったため、早急に整備しました。ケアマネは、利用者さんのさまざまな情報を扱いますから、会社支給のパソコンのみ使用、セキュリティソフトの導入、パスワードの管理などを徹底することで自宅での仕事を可能にしました。

――なぜ、在宅ワークを導入しようと思ったのですか。

飯村 ケアマネの資格を持っているのに、育児や介護のために仕事を離れなければならないのは、もったいないと思ったからです。介護保険制度の内容はよく変わるので、一度辞めてしまうと知識が追いつきにくく、復帰は簡単ではありません。育児や介護をしながら仕事を継続できれば会社としても助かりますし、働く人のライフワークバランスも保たれると思います。家庭生活と仕事、この両輪をうまく回したいですね。

――休日数も多いですね。

飯村 休日は年間125日で、有給休暇も取りやすいです。取っていない人には、こちらから声を掛けています。そもそも介護職の大前提として、心に余裕がないと良い仕事ができないのではないかなと思っています。

――ケアマネは忙しくて、休みにくいイメージがあります。

飯村 利用者さんは困ったことがあると、担当のケアマネに連絡をします。一般的には、一人の利用者さんに対して一人のケアマネが担当となり、全てにおいて対応しなければならないため、負担が大きく離職につながるケースも多いようです。

当社では、担当者が休んでも代わりの人がすぐ対応できるよう、常にみんなで情報を共有しています。会社全体で一人一人の利用者さんをサポートしている状態ですね。また、そうしなければ、多くの利用者さんを支えることもできないと思っています。

地域の人のために福祉用具のショールームを整備

福祉用具のショールームでは、入院時の必需品や杖なども販売(左)。は、自宅の浴室を想定し、シャワーチェアなどの入浴用品を展示しているスペース

――福祉用具のショールームをオフィスに併設しているんですね。

飯村 現在整備中で、ベッドやエアマット、車いす、浴槽、シャワーいすなどの福祉用具をそろえているところです。ここでいろいろな福祉用具を見て、試して、確認してからレンタルするかどうか決めてもらえるようにしたいと思っています。

――社員が福祉用具の選び方や使い方をアドバイスしているんですか。

飯村 その人の体格、歩き方、病状などに合わせて一番使いやすいものを社員がご提案しています。また、施設なのか自宅なのか、福祉用具を使用する場所も考慮する必要がありますね。

福祉用具の選定には「福祉用具専門相談員」の資格が必要ですから、担当の社員は全員取得しています。当社には資格取得費用のサポート制度があるので、入社後に資格を取ることもできます。制度を利用して、上級資格の「福祉住環境コーディネーター」を目指す社員もいますね。

――介護職の魅力はどこにあると思いますか。

飯村 人生の先輩に関わることが、自分の将来について考えるきっかけになります。年齢を重ねる中で、どんな経験をし、どんな気持ちになったのかなど本人から聞くことができるので、自分ならどうするか、今から準備できることがあるのかなどいろいろ考えさせられますね。仕事を通して貴重な経験をさせてもらい、それを自分の人生に反映できることが、介護職の魅力だと思っています。

社員にインタビュー

これまでにない働きやすい環境で、新しいことに挑戦する意欲が芽生えました

これまでにない働きやすい環境で、新しいことに挑戦する意欲が芽生えました

介護支援専門員 関口 なおみさん 
介護支援専門員 石塚 沙樹さん

介護支援専門員 関口 なおみさん
介護支援専門員 石塚 沙樹さん

同社での勤続年数は浅い二人ですが、共に介護支援専門員としての経験が豊富な関口さんと、石塚さんに仕事内容や働きやすさについて伺いました。

関口さん(左)と石塚さん

初めての在宅ワークで良さを実感

――入社までの経緯を教えてください。

関口 家庭の事情で勤務していた老人保健施設を退職し、もう仕事はできないかなと思っていたとき、以前からの知り合いだった飯村社長に「いい職場をつくるから、ぜひ来てほしい」と誘われたんです。在宅ワークもできると聞き、それならやってみようと思いました。

石塚 市外の医療法人で働いていましたが、3人目の子どもが生まれた後、時間のやりくりがとても大変になってしまいました。市内で転職することを決め、「春日部 ケアマネ 求人 在宅」などの言葉で検索したところ、一番上に出てきたのがこちらでした。求人サイトの印象も良かったですね。

――やはり在宅ワークができるのは良かったですか。

関口 そうですね。自分で在宅ワークをする時間帯を決めることができ、例えば、利用者さん宅への訪問を直行直帰にし、自宅で情報の入力や介護サービス事業所とのやりとりをするという働き方もできます。今、孫の世話をしているので、在宅ワークができるのはありがたいです。

石塚 普段は保育園に通っている3歳の子どもが発熱したため、急きょ、在宅ワークに切り替えたことがあります。子どもを看病しながら、2日間、出社しているのと変わりなく仕事ができ、在宅ワークの良さを心から実感しました。本当に思っていた以上に良かったです(笑)。これなら子育てをしながら働き続けられると思いました。

――休日も多いですね。

石塚 過去に勤務していた職場では考えられない多さです。だから、子どもと遊びに行く計画も立てられます。これまでできなかったことなので楽しみたいです。

――社内研修が充実しているそうですね。

関口 日中、会社から支給されるお弁当を食べながら、事例検討会議などを開いています。毎回のお弁当のメニュー選びも楽しいです。時々、私は外部の研修会にも参加しますが、社内で研修を重ねている分、飲み込みが早く、より深く理解することができます。

オフィスの様子。在宅ワークの社員は、右奥のモニター通してオンラインで会議に参加します

「ありがとう」の言葉を励みにチームでサポート

――ケアマネとしてどんなことを心掛けていますか。

関口 利用者さんとご家族の気持ちに寄り添うことですね。利用者さんに「このケアマネで良かった」ではなく、「いいサービスが受けられて、いい人生が送れて良かった」と思ってもらえるようなマネジメントを目指しています。ケアマネだけではなく、介護サービス事業所など多くの方が関わってサポートをしていますからね。

石塚 じっくり話をして、納得してもらえるようなケアプランの提案に力を尽くしています。そのためには、利用者さんの本当の気持ち、本当に言いたいことは何なのかを知る必要があるので、日々、それを追いかけ続けています。

――どんなときにやりがいを感じますか。

関口 利用者さんの悩みをチームで協力して解決できたとき、良かったと思います。役に立っている、お手伝いができていることが実感できると、楽しいですね。介護の仕事は、友人に勧められて始めたのですが、ずっと楽しくて天職だと思っています。

石塚 「ありがとう」の言葉をいただけることです。大変だと思っていたことがあっても、一気に吹き飛びます。同時に、誰かを助けられるような専門性が自分に身に付いたことが感じられて、うれしいです。

――今後の抱負を教えてください。

関口 過去に勤務していた施設では、休憩が取れず、残業も多かったのですが、周囲の人に相談もできませんでした。今の職場環境とは真逆ですね。こちらに入社して、心に余裕ができたので、自分を磨いていきたいと考えるようになりました。まずは、今年、主任ケアマネの資格取得に挑戦します。これから入社してくる人に仕事をしっかり教えられるよう、新たな知識を得たいと思っています。

石塚 以前の職場では子どもの急病で休みを取ると、周囲の人に申し訳ないという気持ちでいっぱいになりました。こちらに入社しても同じ感覚だったのですが、飯村社長が「そんなに申し訳なさそうにしなくてもいい。3人の子どもを育てながら働いているだけでカッコイイんだから」と言ってくださったんです。これをきっかけに気持ちが変わり、意欲も出てきました。今年は、主任ケアマネの資格を取る予定ですが、その次に何ができるかも考えていきたいです。

株式会社RHS
住所 埼玉県春日部市栄町2-280
電話 048-797-9200

取材を通して

孫の世話などがあり、もうケアマネの仕事はできないと半ばあきらめていた関口さんと3児の子育て真っ最中の石塚さん。プライベートがかなり多忙ですが、両立できる職場に出合ったことでお二人は現在、正社員で働いています。

ケアマネとして長年積み上げてきた貴重な経験を生かすことができるのは、本人や会社のみならず、社会全体にとっても有益です。しかも、お二人はこの仕事が好きで、やりがいも感じていると笑顔で話してくれました。これからもケアを必要としている人たちのために、力を発揮し続けてほしいと思います。

インタビューの最後に、飯村社長に社名「RHS」の意味を尋ねました。同社のホームページにも全く記載がなかったからです。

飯村社長いわく「Rは、 再びという意味の『Re』で、リスタート、リフレッシュ、リラックス、リハビリなどのイメージです。Hは、家や故郷を意味する『Home』とか、気持ちや心の『Heart』ですね。そして、Sは、開始の『Start』や、支援・応援の『Support』などを示しています。きちんと決めていないので、ホームページにも記載していないんです」とのこと。こうした型にはまらない、適度な“ゆるさ”が、無理なく、気持ちよく働ける職場づくりにつながっているように感じました。

取材日:2023年7月10日
矢崎真弓