近年、日本各地に開設されている「コワーキングスペース」。会社員、フリーランスなど、さまざまな立場の利用者がスペースを共用しながら仕事をする施設のことで、コロナ禍によるテレワークが増える中、ニーズが高まっています。
広々としたスペースに共用設備が充実
小川町の「コワーキングロビー NESTo(ネスト)」は、1925年(大正14年)に倉庫として建てられた石蔵を改築し、今年5月に開設。Wi-Fiやプリンターが整備された空間に、地元産の杉で作られた約30席のデスクが並びます。カフェや定員8名のミーティングルームもあり、働きやすい環境が整えられています。
歴史ある建物の活用方法を模索して
ネストの運営を担っているのは、「NPO法人あかりえ」。代表理事・谷口西欧(せお)さんは中学・高校時代を小川町で過ごした後、進学、就職で故郷を離れていましたが、6年前に東京からUターンしました。
「小川町には有機農業に取り組んでいたり、原料からビールを作っていたりと、暮らしを手作りしている人が多いんです。それに気づいたとき、自分もここに身を置きたいと思いました」と帰郷の理由を語ります。2019年にあかりえを設立した後は、前職で、企業による社会貢献活動等の企画・制作に携わっていた経験も生かし、空き家再生などを手掛けてきました。
その取り組みの一つに、長く使われていなかった石蔵の活用があり、話し合いでは映画館や飲食店、コワーキングスペースなど複数の改築案が浮上していたとのこと。そんな中、昨今のニーズの高まりを踏まえるとともに、サテライトオフィスの整備に関わる補助金を得られたことから、今の形になっていったそうです。
映画上映やコンサートなどのイベント会場にも
ネストは、平日の夜と土・日曜日に限り、レンタルスペースとしての利用を受け付けています。音響機材も備え、映画上映やコンサート、トークショーなど幅広い内容に対応可能です。
谷口さんは「仕事やイベントで利用した人たちがつながり、新しいモノやコトを生み出していけるような場でありたいです。名称の『NESTo(ネスト・巣)』には、何かが生まれ、巣立っていってほしいという思いを込めています。正しい英語のつづりは『NEST』ですが、最後に小川町の頭文字『o』を加えました」と話します。
開設して約3カ月。利用者の職業は多種多様で、半数は町外から訪れていることが分かっています。あかりえでは、利用者間の橋渡しをするため、交流会なども開催。さまざまな可能性を秘めた石蔵に、今、多くの人が注目しています。
◆取材を終えて 石造りの重厚感がありながらも、天井が高く開放的で、居心地の良い空間でした。仕事場として、イベント会場として、人と人とをつなぐ場として、これからどう展開していくのか楽しみです。 取材日:2021年8月3日 矢崎真弓