秘密基地を思わせる階段を上っていくと、ブロックでできた看板が出迎えてくれる場所があります。さいたま市浦和区にある「おもちゃカフェ ブロックはかせ.LABO」は、店内にあるさまざまなおもちゃで遊べるスポットです。
店内に入ると、人気キャラクターからゆるキャラ、歴史上の人物まで、細部まで再現されたブロック作品の数々が棚にずらりと並び、目を奪われます。これらを組み立てた、“ブロックはかせ”であり同店店長の前原浩さんに、おもちゃカフェをつくったきっかけから、STEM教育まで、お話を伺いました。
おもちゃで遊んで楽しく過ごせるカフェ
おもちゃカフェの利用方法は、カフェメニューやドリンク付きパックを注文して入店します。カフェメニューからドリンクとフードをそれぞれ1品以上注文するか、ドリンク付きの「シングル」(約1時間)、「ダブル」(約2時間)、「トリプル」(約3時間)の遊びパックから選びます。ジュースやコーヒー、スパゲティや手作りスイーツが用意されています。
自由に手に取れる店内のおもちゃは、赤ちゃん向けの玩具から、細かなパーツでできた高学年向けのブロックまでさまざまです。どのおもちゃで遊べば良いのか迷ったら、前原さんに遊び方を聞いてみることもできます。
好きなおもちゃで遊びつつ、店長オリジナルのフードメニューでワクワクする時間を過ごせるカフェなのです。
みんなの居場所を作りたい! おもちゃカフェが生まれたきっかけ
前原さんがブロックはかせになり、おもちゃカフェを開店した経緯には、「子どもたちのために」という思いにあります。
モノ作りが好きで大学卒業後に就職した自動車メーカーから、学生時代にアルバイトをしていたおもちゃを扱う会社に転職。おもちゃの企画段階から設計、製作、広報までを担当しました。そこで手がけた大人向けのブロックが大ヒット。その後、子どものためのおもちゃにかかわるべく会社を離れ、大手ブロックメーカーのテーマ―パーク立ち上げに参加。その後メーカーを問わず、子どものためのおもちゃに携わりたいという思いから、現在に至っています。
「おもちゃは子どもたちのためにあるんです。ここでカフェを開いたのは、子どもたちが気軽にブロックやおもちゃに触れられる場所を作りたかったからです」と前原さん。
成長に伴って遊ばなくなったおもちゃをリサイクルし、必要としている場所へ送る活動、地域イベントへの参加、ワークショップの開催など、前原さんの活動は多岐にわたります。
さまざまな理由で自宅以外に居場所を持てない子どもたちのために、定休日に場所を提供することもあるそうです。
STEM教育とブロックの関係
ブロックはかせとして、おもちゃカフェで「ブロック道場」と「ロボット&プログラミング」教室を開講している前原さん。埼玉大学教育学部 野村泰朗准教授 STEM教育(※)研究センターの「ロボットと未来研究会」の講師も務めています。
※STEM教育=Science(理科)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字を取り、創造性や独創性を持って問題を解決し、新たな価値を創造できる人物を育成するための教育のこと。
「STEM教育では、創造性や問題解決能力の育成を大切にします。ブロック遊びは、両方の力を育てることができるんです。また、プログラミング学習は、ゴールへの道筋を組み立てる思考力を養います。ブロック遊びは、プログラミング的思考の基礎なんですよ」
おもちゃカフェの教室では、基礎的なテクニックからプログラミングまで、さまざまなレベルの学びをサポートし、問題解決につながる方法を考える力の育成を目指しています。
また、来店した人に合ったおもちゃや遊び方を提案しています。
どちらも、これからの未来を生きる子どもたちに向けた、前原さんからのエールです。
◆取材を終えて 飾られているブロック作品や、前原さんが携わったブロック製の雑誌の付録など、大人の私でもワクワクする店内。飽きることなく眺めていられそうでした。子どもが楽しく遊ぶことが未来を生き抜く力につながるという、ブロック遊びの無限の可能性と奥深さを感じました。 取材日:2021年11月11日 塚大あいみ