【春日部】埼玉愛にあふれたアイデア商品で注目の「みどりスーパー」

「みどりスーパー」は、今年(2022年)創業50年を迎えた個人経営のスーパー。レトロな雰囲気が漂う店内の総菜売り場には、天丼やおにぎり、鶏の唐揚げなどが並びます。売り場を担当しているのは、創業者の長女であり、惣菜(そうざい)部の部長を務める河内(かわうち)みどりさんです。ただ部長と言っても「他にパートさんが一人いるだけで、基本、私一人です」とのこと。

河内さんの名前はスーパー名と同じですが「両親からは、私の名前をお店に付けたのではなく、もともと“みどり”という言葉が好きだっただけだと聞かされています」と話します。

そんな河内さんは、アイデアを生かした商品を開発して地域を盛り上げています。商品づくりや地域の人への思いを伺いました。

明るい人柄で人気の河内さん。手にしているのは、市内の小学生たちから贈られた手作りの“みどりさん人形”

地元産食材で作った買いやすい値段の総菜を

同店が総菜売り場を開設したのは、約10年前。「時代の流れもあり、お店を続けるためにも総菜が必要になってきていたので始めました。お年寄りなど自分で料理をしたくない人も増えていましたからね」と河内さん。

安心・安全なものを提供しようと原材料を厳選し、例えば鶏の唐揚げには飼料や飼育環境にこだわって育てられたオーガニックチキン「つくば鶏」を使用。冷凍ではなく、生肉を仕入れて店内で調理しているそうです。

また、埼玉県産の野菜のみを使った天ぷらや天丼はSNSを中心に広がり、さまざまなメディアに取り上げられるなど大きな話題になりました。

同店の商品は総菜をはじめ、どれもリーズナブルです。そこには「ちょくちょく来て、自宅の冷蔵庫代わりに使っていただきたいから」という思いがあるといいます。

「春日部ぷりんパン」や天丼などの人気商品が並ぶ売り場

観光バスも訪れる人気スポットに

みどりスーパーの人気商品の一つが「春日部ぷりんパン」です。かつて市内にあったパン店の味を残そうと、河内さんが自家製プリンを使って開発。プリンは、市内の養鶏場から仕入れている産みたて卵と砂糖、牛乳のみで作られています。

「うちのプリンをしっかり味わってもらいたいと思って、いろいろ試作して今の形になりました。シンプルだけど見栄えもするからいいかなと。お客さんから『パンもおいしい』と言われますが、うちのお店にも置いている市販のパンなので『ここにありますよ』とお伝えしています」

今年(2022年)、春日部ぷりんパンは日本食糧新聞社主催「ファベックス惣菜・弁当グランプリ」の「デリ・ベーカリー&スイーツ部門」で応募総数1340品の中から21品にのみ与えられる金賞を受賞しました。受賞の連絡を受けたときは「信じられない気持ち」だったとか。

各方面から注目を集めているみどりスーパーは、今年3月、観光バスのコースに組み込まれました。「とうとう観光地になった!と思いましたね。個人経営のスーパーは“絶滅危惧種”なので、他と同じことをしていては駄目なんです。世の中、辛いこともいっぱいあるけど、楽しいことを考えて、楽しい人とつながって盛り上がっていきたいです」。アイデアはまだまだ尽きないようです。

地域住民にとってなくてはならない「みどりスーパー」
◆取材を終えて

河内さんの行動によって、みどりスーパーの知名度は上がっています。自身の発想力やSNSでの発信力、個人店だからこそのフットワークの軽さ、そして強い埼玉愛。これらが全てマッチしたことで生まれる力の大きさを感じました。

取材日:2021年3月30日
矢崎真弓