【富士見】コミュニティ食堂そらいろ~誰もが垣根なく立ち寄れる場に

富士見市の田畑が広がる住宅地に店をかまえる「コミュニティ食堂そらいろ」。囲いに掲げられた「そらいろ」の看板を目印に、一軒家の庭に回ると入口があります。

「そらいろ」文字と黒板が目印。一軒家の1階部分が店舗です

野菜の彩りが目をひくプレートランチや手作りスイーツが魅力

ウッド調の店内には暖色の照明にドライフラワーや絵本が置かれ、ほっとする雰囲気につつまれています。
野菜たっぷりで彩り豊かなプレートランチの他、スイーツにはチーズケーキやガトーショコラなど、日によって変わるメニューも魅力のひとつ。
SNSを見てくる女性客、週2回通う常連、近所のお年寄りなど、さまざまな人がひとときを楽しみに来店しています。

窓の外には緑や自然が広がり、ゆったりとした時間が過ごせます

オーナーの小林夕紀恵さんは、子どももシニアも子育てママも、地域のいろいろな人が、垣根なく気軽に立ち寄って、楽しい時間を過ごしてもらえる場にしたいと語ります。

カフェ営業の一方、子どもたちの学習支援や就労支援も行う

同店では、カフェ営業の他に子どもたちのサポートの場としての顔も持っています。木曜はカフェ営業終了後、子どもたちに勉強を教えたり、進路や子どもが抱える悩みについて相談にのったりもしています。通っているのは小学生から高校生まで。

小林さんたちが目指すのは、子どもたちが自分で勉強ができるよう、自分で勉強しようという気持ちを作ること。
「わからないことをそのままにしておかない。学んで理解できた経験は達成感になります。自分の頭で考えて生きていかなければいけないんだよと教えています」
いろいろな理由で学校に通うことができなくなった子たちには、社会に出るための就労支援も行っています。

テイクアウトおやつとしても人気の塩こうじ入りの「スマイル塩クッキー」とマフィン

声を聞き、向き合う。子どもたちが安心していられる居場所

かつて学校の教員をされていたという小林さん。子どもたちが、親や学校以外で安心感を持って大人と関わりを持てる場、居場所を作りたいと考えたのも、同店を始めた理由の一つだそう。
「ちょっとしたきっかけで学校を辞めてしまう子がいます。ただ、その後社会に出た時の生きづらさや大変さは大きい。それに直面する子たちをたくさん見てきました。学校とつながっているうちに、いい塩梅(あんばい)の心の保ち方を見つけてほしい」と語ります。
「辞めるという選択をする前に、自分の決断がその後、未来の自分にどのような影響を与えるのか、考える時間があったほうがいい。10代はまだまだ限られた世界の中で判断せざるを得ない。学校生活を“猶予”や“余白”と思って、いろいろな大人の声を聞いて考えてみてほしいと伝えています」
子どもにとって“最終的には自分たちの味方になってくれる”大人が身近にいると感じられることはとても大事と教えてくれました。

オーナーの小林さん(左)

こういった活動をしていることは意識せずに、気軽に立ち寄ってもらえる場にしたいという小林さん。
「もし活動に興味を持ち、応援したい気持ちを持っていただけたなら、ぜひカフェにご飯を食べに来てください。お客さんがおいしく食べ、楽しく過ごしてほしいのが一番です」と語ってくれました。

◆取材を終えて

子どもたちのことを語る小林さんからは、時に厳しく、常に愛を持って接していることがわかりました。学校の先生や大人に感じた違和感や疑問について、納得するまで子どもたちの話を聞き、一緒に考えてみる。そして時には社会のリアルを伝える。それを子どもたち自身が考え、咀嚼(そしゃく)し、生かしてく場があることに、とても心強く感じました。   

取材日:2021年12月9日
小林聡美