【川越】一人一人の要望に寄り添う手作り製本店・水上製本所。和紙にこだわり

本川越駅からすぐ、川越観光へ向かう入口にある「水上(みずかみ)製本所」。古民家を改装した、どこか懐かしいたたずまいです。

祖父の代から製本会社を営んでいる同店社長の水上悦男さんは、急速にデジタル化が進む今だからこそ、製本技術をとおして実際に手に触れてぬくもりを感じられるような商品を作りたいという思いがあり、2012年川越に店をオープンさせました。

水上製本所

取材のため、店舗2階に通されました。そこは熟れた銀杏(ギンナン)のような、なんともいえない臭いに包まれていました。その正体は「柿渋」。柿渋の汁を発酵させた塗料を和紙の表面に重ね塗りすることにより、摩擦に弱い和紙の強度が増すのだとか。

商品に使用する和紙にもこだわりがあります。製本できる和紙の商品とは何か?と考えたとき、代表的なものとして浮かんだのは御朱印帳だったそうです。しかし一般的な御朱印帳に使用されている紙はパルプのものが多いとか。同店では楮(コウゾ)の配分が多い和紙や楮100%の手すき和紙を使っています。

柿渋の塗料の重ね塗りで和紙に強度をだします。こうした和紙を使った「和紙ノート」のワークショップを開催予定です

自分だけのオリジナル品をオーダーできる

水上さんの祖母が亡くなった際に、祖母が残してくれた着物を表紙にした和紙ノートを作成して、親戚に配ったそうです。ノートにすることによって、着物にいつでも気軽に手で触れて祖母を身近に感じると、とても喜ばれたそうです。

「思い入れのある素材でオリジナル商品を作ってほしい」という要望に喜んで対応しているのは、そういった経験がベースになっているようです。

店内には趣あるブックカバーやノートが並んでいます。ほとんどは同店オリジナル。それらをサンプルとして、一人一人のニーズに合わせたオーダー商品を作ることができるよう、布や紙類も多種そろえています。

また、本の修復をしてほしい、資料を作りたい、使い終わった大切な御朱印帳の中身を新しくしたいなど、さまざまな要望にも応えています。

手作りの店ならではの、人と人との付き合いを大切に

店内の様子。漫画家伊賀太郎の狐(キツネ)の面

毎年川越まつりの時期になると、店内にはたくさんの「狐」の面が並びます。

以前、漫画家の伊賀太郎さんが、川越まつり当日の朝、手描きの狐の面を10個くらい持ち込んだそうです。試しに置いてみたところ、わずか10分程で売切れてしまったそう。それから伊賀さん手描きの狐の面を販売するようになったとのことです。

川越の民話をもとに伊賀さんが作成した「妖怪伝説」を和とじにしたものもあります(500円)。

水上悦男社長。他にはないコシのあるブックカバーが一番人気だそうです
◆取材を終えて

数年前の川越まつりで、同店の狐の面を購入したことがあります。色とりどりのかわいらしい面を選ぶのがとても楽しかった記憶があります。店で使用している紙などでいろいろなものを作成することもできるそうです。自分だけのオリジナル製品を作ってもらいたくなりました。   

取材日:2021年12月7日
水越初菜