秩父の山あいにある小さな町・小鹿野町に、全国からツーリングライダー(バイクでドライブを楽しみ、目的地での観光を楽しむ人たち)が集まる「ウェルカムライダーズおがの」があります。
2007年ごろから小鹿野町には多くのツーリングライダーがやってくるようになりました。なぜなのか同町役場の職員が調査したところ、秩父グルメの一つ「安田屋のわらじかつ」目当てのツーリングだということが分かったそうです。
「これをきっかけに、当時の関口和夫町長が町の施策として、ツーリングライダーを歓迎するプロジェクトをスタートさせました」と吉田あきら代表。
最初にツーリングライダーが集まる場所を調べ、バイク専用の駐輪場を設置することから始めたそうです。また多くの人に小鹿野町を知ってもらうため、2010年6月に運営母体を民間団体「ウェルカムライダーズおがの」へ移行。国内最大級のモーターサイクルイベント「東京モーターサイクルショー」に毎年参加するなどのPR活動をしています。
町おこし開催イベント「いちにちレディースライダー宿」
2010年11月より女性ライダーを対象としたイベント「いちにちレディースライダー宿」を開催してきました。
イベントでは、二輪業界で活躍している著名女性ライダーのトークショー、サイドカーやバイクの展示、しゃくし菜漬けをはじめとする特産物の販売などを行っています。
メインは、二輪車安全運転特別指導員のもと、急制動やスラロームのレッスンが受けられる「美乗コン」(びじょこん)。
オートバイにまたがったときに安定するよう、発進や停止、後方確認のときの体や筋肉の使い方などをレクチャーしてくれます。
「温かくお迎えし安全に気持ちよくお帰りいただこう」という、地元住民や主催者側の思いが込められているイベントで、2017年からは女性だけでなく男性ライダーにも楽しんでもらえるよう、名称を「いちにちレディースライダー宿」から「おがのライダー宿」へ変更しました。
「西秩父商工会女性部や、ウェルカムライダーズ会員になっている商店街などの協力で開催できているイベントです。ここ数年はコロナ禍でイベントを休止していますが、落ち着いたら開催したい」と吉田さん。
小鹿野町はなぜライダーをひきつけるのか?
小鹿野町は、渋滞もなく快適にバイクで走行できる峠道がたくさんあります。隣県へのアクセスも良く、自然を楽しみながら走れる場所であることから、ツーリングライダーに人気があるようです。
「ライダーをひきつける魅力はどこにあるのかと、全国から視察があります。訪れた方たちが驚くのは『町全体がツーリングライダーに対して歓迎ムードだ』ということと『何もないこと』です」と吉田さんは笑いながら話してくれました。
「観光地らしい建物もイベント会場も小鹿野町にはありません。あるのは誇れる自然とおいしい食べ物だけです」
人口1万人ちょっとの規模だからこそ、会員や地域の人たちの協力で町おこしができるのだそうです。
◆取材を終えて 吉田さんとお話ししていくなかで「都会とは違い大きな施設はありませんが、自分だけの小鹿野町の魅力を見つけていただけたらうれしい」という言葉が印象的でした。 峠に咲いている花を見ながらなど、景色が良い場所で休憩がとれることもツーリングライダーにとっては魅力的なのだと感じました。 取材日:2022年3月13日 田部井 斗江