【秩父】国内初の通貨「和同開珎」に貢献した秩父。和銅遺跡と銭神様の聖神社

日本の貨幣の歴史は7世紀半ばごろにさかのぼるといわれますが、「日本で最初に流通した貨幣」は708年に発行された「和同開珎(わどうかいちん)」と考えられています。

聖神社に保管されている和同開珎

武蔵国秩父郡で純度の高い自然銅(和銅)が発見され、708年1月、元明天皇(げんめいてんのう)に献上されました。元明天皇は大変喜び、年号を「和銅」に改めたと、平安時代の公式歴史書「続日本紀(しょくにほんぎ)」巻四に記されています。

さっそく近くの山(祝山)に神霊の宿るところを建てて金山彦尊を祭り、祝典を挙げました。のちに遷(うつ)され、708年2月13日、聖神社が創建されたと伝わっています。
そして同年、和同開珎がつくられるのです。

聖神社には、創建当時に採掘された大小の和銅鉱石、そして元明天皇から賜ったと伝わる雌雄一体の銅製の蜈蚣(ムカデ)がご神宝としておさめられ、今に伝えられています。

聖神社ご神宝の和銅鉱石(左)と、銅製の雌雄一対の蜈蚣(ムカデ)

和銅採掘露天掘跡は和銅遺跡の中心

高さ5メートルのモニュメント「和同開珎」(右)と、そこから見える露天掘りの跡

和銅採掘露天掘跡は、地殻変動により「和銅」が発見され採集された場所で、和銅山の頂上から、下を流れる和銅沢まで、数百メートルにわたり採掘跡が残っています。
採掘跡付近は、秩父古成層と呼ばれる岩盤と、海底時代の推積層との断層面です。

和銅採掘露天掘跡へは、聖神社から案内看板に従い、歩いて15分ほど。「日本通貨発祥の地」と記された大きな「和同開珎」のモニュメントが目印です。

また和銅沢は、和銅が発掘された当初、この沢で自然銅を洗っていたことから「どうねんぼう」と呼ばれ、和銅沢でお金を洗うと金運がアップするとも言われています。

聖神社と招き猫の福ちゃん

聖神社の増田さん。「みなさまの金運アップを祈願します」

「和銅ゆかりの神社であるため、いつしか『金運の神様』『銭神様』と呼ばれるようになりました」と聖神社禰宜(ねぎ)の増田忠三さん。

同神社では、かわいらしい猫「福ちゃん」が迎えてくれることもあります。

福ちゃんはテレビ番組に出演したこともあり、福ちゃん目当ての参拝者もいるそうです。
「実は、福ちゃんの他にも採掘露天掘跡の山に4匹猫がいます」と増田さんは笑いながら教えてくれました。

聖神社で人気の猫「福ちゃん」
◆取材を終えて

「採掘露天掘跡に向かう山道で、かわいい猫に出合えて癒やされました」と話す参拝者も多いようです。聖神社から採掘露天掘跡までは、山道です。ゆっくりしたペースで歩いていれば、かわいい猫たちに出合えるかもしれません。

取材日:2022年3月29日
田部井斗江