【行田】2000年の時を経て咲く神秘の花 ~「古代蓮の里」~

7月上旬がおすすめ 早朝に咲く蓮を見に行こう 

朝に咲く行田蓮

行田市にある「古代蓮の里」では、行田蓮(ギョウダハス)を中心にさまざまな品種の蓮が栽培されています。蓮の花の開花シーズンは6月中旬~8月上旬の午前中です。行田市産業・文化・スポーツいきいき財団の吉本梢さんに、蓮の花を楽しむポイントについて伺いました。

「蓮の花は次から次へと咲いていきますが、開花している数が多い7月上旬がおすすめです」

蓮の花は4日間しか咲かないとか。1日目の朝におわん状になり、2日目の朝に色鮮やかに花弁が開きます。3日目になると花弁の色が少しずつあせてきて、4日目には花弁が完全に散ってしまい、中心の花托(かたく)のみが残り、実をつける準備に入っていくそうです。

「しかも、花は早朝に開き、数時間で閉じていきます。午後にはつぼみに戻ってしまうため、美しい姿を見るなら、午前中にご来園いただくと良いですよ。開花シーズンは朝5時から開園しています」

蓮の開花シーズンには、多くの来園者でにぎわう古代蓮の里。行田蓮を保護している理由は何でしょうか?

「焼却場を建設する時に、地中に埋まっていた蓮の種にたまたま傷がついて発芽し、どんどん増えていったのがきっかけです。調査の結果、増えた蓮はおよそ2,000年前のものと判明し、市の指定天然記念物として保護することになりました」

ここには、行田蓮をはじめ42種類の蓮があり、開花時期は品種によってバラバラです。施設には、専門家や研究者は在籍していません。職員だけで試行錯誤しながら、大切に育てています。

「自然に近い状態で見ていただきたいので、受粉を助けることはしていません。ザリガニなど生き物による被害や、病気の影響を受けてしまうこともあります。池の泥の中を直接見て状態を確認できたら良いのですが、それは難しく、その年その年で咲き具合が違うこともあります」

古代蓮の里で見られる美しい蓮の花は、職員の努力の結晶なのです。

年中楽しめるスポットで自由研究のタネが見つかる?

展望室から臨む古代蓮池(手前)と水生植物園(右奥)

古代蓮の里には高さ約50mの展望タワーが目印の「古代蓮会館」があります。展望室からは周辺の景色が一望でき、好天の日は富士山や浅間山まで見えます。展示室では、行田蓮が保護されるまでの変遷はもちろんのこと、蓮の生態についても知ることができます。図書コーナーの自然を学べる体感型の展示もあり、自由研究のヒントを見つけに訪れる子どももいます。

この里にはほかにも水鳥の池や釣り堀、子ども向け遊具もあり、誰もが緑の中で伸び伸びと過ごすことができます。
「秋から冬は、バーベキュー広場を運営したり、イルミネーションを点灯したりしています。初夏には蛍の放流や、梅の実の収穫イベントも企画しています」と吉本さん。
蓮の開花シーズンに限らず、年中楽しめるスポットです。

◆取材を終えて

蓮にはさまざまな種類があり、個人的には「人の手助けがないと咲けないんですよ」と教えていただいた「千弁蓮(センベンレン)」が開花した様子を見てみたくなりました。古代蓮の里に咲く42種類の蓮からお気に入りを見つけるのも、楽しみのひとつだと感じました。

取材日:2021年6月13日
塚大あいみ