コロナ禍を機に「家の中を片づけよう!」とした人は多かったのではないでしょうか。在宅ワークのためにスペースが必要になり、必然的に断捨離や整理整頓を迫られた人もいるでしょう。
世の中にはさまざまな整理術・収納術がありますが、「いろいろやってみたけど、できなかった」「続かなかった」という声も少なくありません。
「それは、あなたが“できない人“なのではなく、片づけ方法があなたに合っていないだけ」。
そう教えてくれたのは、ライフオーガナイザーの本間ゆりさん。雑誌や本にある整理術をそのまま実践するのではなく、そこに住む人が使いやすく戻しやすい仕組みをつくる片づけ法を提案しています。
片づけは自分らしく暮らすための手段
本間さんは一級建築士の資格を持ちつつ、ライフオーガナイザーとしても活躍。さいたま市を中心に片づけ講座や、学校PTAや公民館などでの講演も行っています。
「ライフオーガナイズは、その人の価値観や暮らし方を中心に空間を整えるので、まず、自分はどのように生きたいか、本当は何をやりたいか、という問いから始めます」と本間さん。
今の自分は仕事に打ち込みたいのか、勉強に集中したいのか、家事と育児と仕事をバランスよく回したいのか、育児最優先にしたいのか、自分の本当の気持ちを明らかにすることが第一歩だといいます。そして、それをするためには、場をどう最適化するのがいいのか考え、暮らしを整えていくのだそう。
「自分と向き合う作業なので大変ですが、この方法で片づけが出来るようになると、暮らしも自分自身も変わります」。
本間さん自身もライフオーガナイズに出合って、「自分が一番したいことは子育てなんだ」と気づくことができたそうです。
思い入れがある物は無理に捨てなくていい
その人に合った片づけ法を一緒に考えていく中で、思い出の品が捨てられないという声を多く聞きます。「昨今はできるだけものを減らす片づけや暮らし術が多いですが、無理に捨てなくていい」と本間さんはいいます。
「持っておくことで安心する人もいます。自分らしい暮らしや生き方を基準にして選択すればいいんです。そして持っておきたいなら収納や保存方法を考えましょう」
捨てるか残すか判断できない場合は、一度倉庫などにしまってみて、不便がないか、気持ちがどのように変化するか試してみるのも一つの方法と教えてくれました。
<片づけのコツ~大人~>
・判断基準は、自分のやりたいこと、自分らしい生き方につながるか
・一度にやろうとせず、場所や時間を決めて、少しずつ進めていくのがおすすめ
(やっていくうちに自分に合ったスタイルが見えてくる)
・迷ったら無理に捨てずに保留でOK
・完璧にしようと思いすぎないこと
・自分で判断できる物や場所から始めるとやりやすい
ちなみに「わが家では引き出しの中はざっと入れるだけ。ある程度わかる範囲で入っていればいい、というのが私たち家族の落としどころです。ここに入っているとわかれば、多少ぐちゃぐちゃしていても探し出せる。それが生活だと思っています」と本間さんは教えてくれました。
子どもには「一緒に片づけ」がおすすめ
小学校入学前の子どもはまだ一人で片づけるのは難しい年齢。「片づけなさい」と言うだけでは無理があるそう。親が一緒にやりながら、こういうものだと教えていくのがいいといいます。
「遊ぶ時はすごく散らかっていてもいい。保育園のように物の置き場所を決めてあげて、片づけ時間を設けて大人と一緒にやるのがおすすめです。片づけることでリセットし、気持ちいい空間を味わうことが大事です。親は面倒だったり、忙しくて一緒にやる時間はなかなかとれないかもしれませんが、これを繰り返すと片づけることが習慣になり、自然に子ども自身でできるようになります」
< 片づけのコツ~子ども~>
① 物の置き場所を決めてあげる
② 片づけ時間を決めて一緒に片づける
③ 整頓された気持ちいい空間を経験させる
④ ①~③をできるだけ繰り返す
※片づけ時間は寝る前や食事前に1日5分でもOK。
まずは週1回から始めてみるのも手。
「片づけなんてサクサク終わらせて、本当にやりたいことに時間を使いましょう。みんな片づけに興味をもちすぎよ! 一番大事なのは、自分らしくいられる心地よい住まいにして、自分で自分の人生を生きること」というのが本間さんからの一番のメッセージでした。
◆取材を終えて 「働いていたら、家事、育児していたら時間はないはず。だからできなくて当然。片づけなくても死なない死なない(笑)」とおおらかに話してくれた本間さん。「片づけはしなければいけないこと」という考え方に縛られていた自分ですが、なんだかほっとした気分になりました。気長に、自分にぴったりの片づけ法を探していきたいです。 取材日:2022年6月14日 小林聡美