【プラチナ企業】株式会社メガネマーケット お客様の目と耳の健康を守るために

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材して紹介します。
今回は、埼玉県と千葉県に計6店舗を展開する「株式会社メガネマーケット」です。JR新白岡駅のすぐそばにある本店を訪ねました。

♯09 株式会社メガネマーケット
創業:1991年
事業内容 : 眼鏡、補聴器、コンタクトレンズ販売
特徴 : 育児中の社員へ保育手当の支給、ワークシェアリング(短時間勤務制度)、資格取得のための費用支援など

企業担当者にインタビュー

代表取締役 久賀きよ江さん

取締役営業部長 丸山謙一さん

代表取締役 久賀きよ江さん

取締役営業部長 丸山謙一さん

お話を伺ったのは、代表取締役の久賀きよ江さんと、取締役営業部長の丸山謙一さんです。職場環境についてお聞きする前に、まず同社の立ち上げの経緯や店づくりのポイントなどを尋ねました。(以下敬称略)

久賀さん(左)と丸山さん

悩みに寄り添う眼鏡店として開業

――御社を起業したきっかけを教えてください。

久賀 会社員として眼鏡業界で働いていたのですが、当時は女性が定年まで勤めるのが難しい時代でした。このまま居てもやりたい仕事ができそうにないと考え、40歳という節目で眼鏡店を開業し、再出発することを決めたんです。仲間と共同経営の形で始め、前職の会社と商圏が重ならないよう、千葉県野田市に1号店をオープンさせました。

――どのような店を目指したのですか。

久賀 私が東京のデパートの眼鏡店に勤務していたとき、お客様から「他の店で眼鏡を作ったけど合わない」とか、「ずっと眼鏡をかけていると目が疲れる」といった声をたくさん聞いていたので、そうした悩みにしっかり対応できる、地域に根付いたお店を目指しました。ちょうどそのころ、ディスカウントの眼鏡チェーン店が増え始めていましたが、私の店を必要としてくれる人はいると思っていましたね。

――反応はいかがでしたか。

久賀 新聞に折り込みチラシを入れる費用がなかったので、社員で手分けをして、当時の野田市の全3000~4000世帯に1年間ポスティングを続けたところ、たくさんのお客様に来ていただくことができました。“待つ”のではなく、自分たちが動くという販促手段も良かったようです。目標の倍以上の売り上げを達成し、1年半後には隣接する流山市に2店目を、そのまた1年半後に同じ市に3店目をオープンし、その後、埼玉県にも出店しました。

現在、久賀さんは、中小企業の経営者で構成する「中小企業家同友会全国協議会」の女性部連絡会の代表も務めています

的確な度数設定で、使い続けられる眼鏡を提供

――開業以来、なぜ多くの人に支持されているのだと思いますか。

久賀 自社では、販売する眼鏡について「長く使っても疲れない」「体に負担がかからない」ことを重視しています。若い方は流行で眼鏡を変えたりしますが、年齢を重ねると、自分に合った眼鏡をずっと使い続けたいと考える方が多いです。体の一部になりますからね。

一般的に度数を設定する際、担当者は検眼機のみに頼りがちですが、自社にはお客様の話をよく聞いたうえで自分の技術や知識を生かし、細かく調整できる人材がそろっています。私たちのビジョンは“目と耳の健康を守る”ことです。検眼の場で「見えた」から良いということではなく、お客様がこの眼鏡を長くかけたときにどうなるか、想像する力を大切にしています。

また、落としても壊れにくいなど、素材や加工にこだわった眼鏡を扱っているため、長く一つの眼鏡を使いたい方に選んでいただけているのかなと思います。

検眼機を操作する丸山さんは、勤続20年のベテランです

丸山 私たちは眼鏡を販売した後、お客様に定期的に眼鏡の具合をお聞きするなどのフォローも行っています。また今年(2022年)、眼鏡にかかわる民間資格「認定眼鏡士」が、国家資格「眼鏡作製技能士」(※)に移行したため、当社の社員たちも挑んでいるところです。

(※)眼鏡作製技能士=視力測定、レンズ加工、フィッティングなどの技能を持った、眼鏡作製の総合エキスパート

職場環境について

子育てと仕事の両立ができるように新しい制度を導入

――子育て中の社員に「保育手当」を支給しているそうですね。いつ始めた制度なのですか。

久賀 7年前、女性店長が産休・育休後に復帰したことがきっかけで始めました。0歳児は保育園の保育料がとても高いため、会社で一部を負担することにしたんです。初めてのケースだったので、それまでは思いつかなかったのですが、実情を見て整えました。

丸山 保育手当は、子どもの年齢に応じて金額を下げながらも、学童保育を利用する小学5年生まで支給されます。優秀な人材が出産を機に退職してしまうのは、当社としてはもちろん、日本経済全体としても、もったいないことですからね。

――短時間勤務制度もあるそうですね。

丸山 はい、保育園のお迎え時間に合わせて退社できます。また、子どもの発熱で急に休むときなどは、私が代わりに店に出たり、他の店の社員に応援に行ってもらったりしています。子育て経験のない若い社員が多いのですが、優しい性格の人ばかりなので、みんな自然に動いてくれますね。そうした“他人に寄り添えること”が接客でも生かされ、会社の業績に反映されているのかもしれません。

さらに育児中の社員は、保育園が休みの日は休みを取ることができます。旦那さんが不規則な時間帯で働いている場合などは、どうしても女性社員に育児の負担がかかってしまいますので、それを会社としてどうバックアップできるかを考えています。“社員は家族”という社長の教えもありますが、社員の子どもは自分の親戚の子のような感覚になりますね。また私自身、3人の子どもがいることも子育て中の社員への理解につながっていると思います。

――手厚いですね。この制度を利用している社員は多いのですか。

久賀 残念ながら、一例目以降、結婚する社員がいないので利用されていないです(笑)

資格取得に必要な費用を会社が支援

――他にどのような制度がありますか。

丸山 資格取得のための費用は、会社の全額負担です。私が持っている「認定補聴器技能者」(※)の資格は、受験前に講習を4年間受ける必要があり、トータルで20万~30万円の費用がかかりましたが、全て会社が出してくれました。

イヤホン型や耳かけ型の補聴器ではなく、オーダーメイドの「耳穴式」補聴器を作る場合、お客様の耳の中に器具を入れたりするので有資格者が行うのが基本です。資格があると、お客様に安心していただけますね。

(※)認定補聴器技能者=聞こえの測定から補聴器の選択・調整、装着後のケアまで総合的な技能を持った、補聴器のプロ

(左)奥が「耳穴式」、手前が「耳かけ型」補聴器。右は違いを説明する丸山さん

久賀 聞こえ方は、そのときの体調によって違ってきますから、お客様の耳の状態を本当に理解していないと補聴器の調整はできないです。眼鏡の度数調整よりも、専門性は高いですね。小まめなチェックが必要なので、お客様は来店しやすい店で購入するのが一番いいと思います。

――今後の抱負を教えてください。

丸山 現在、高齢で気軽に来店できなくなったお客様のために、社員が訪問して補聴器の電池を代えたり、預かってきて修理して届けたりしています。ただ、まだきちんとした仕組みづくりができていませんので、これから専任の社員をおくなどして整備しようと思っています。

私が目指しているのは、「自分の子どもを働かせたい」と思える会社です。実際に働かせるという意味ではなく、それくらい職場環境の良い会社にしていきたいです。

久賀 単なる眼鏡店ではなく、お客様にとって、目と耳の健康を守るための相談ができる、パートナーになりたいです。それは、開業時からずっと変わりません。

社員に対しては、それぞれの心や生活を豊かにできる会社でありたいですね。みんなには幸せでいてほしいですし、「ここで働いていて良かった」と思ってもらうことができたら一番いいと思っています。

「こども眼鏡館」(左)を併設している「mono club メガネマーケット新白岡店」

株式会社メガネマーケット
mono club メガネマーケット新白岡店(本社併設)
住所 埼玉県白岡市新白岡4-14-5 ルネ・アイン1階
電話 048-038-9388(本社)

取材を通して

相談ができるお店として、多くの人に支持されているメガネマーケット。社長の久賀さんは、気さくで明るい女性でした。そして悩みに寄り添う心は、眼鏡を必要とする子どもたちへも向けられていました。

同社では、子ども用眼鏡の専門店「こども眼鏡館」も展開しています。接客時、スタッフは子どもの目線に合わせて話しかけているとのこと。また母親とペアにできるものやキャラクター柄など、多くの種類をそろえて選べるようにしているため、小さな子どもも嫌がらず、楽しく眼鏡をかけることができ、親の安心にもつながっているそうです。

丸山さんは、自身がお手本となって動く上司。ある日、来店後に疲れて帰宅できなくなってしまった高齢のお客さんを車で送っていったことがあるそうです。送迎サービスの整備前で、丸山さんとしては少々思い切った行動でしたが「お客様を助ける姿を見て、社員たちに学んでほしい」という気持ちがあったと話してくれました。

お二人は「うちの社員は優しい人が多い」と口をそろえていらっしゃいました。社員の皆さんは、もともとの性格に加え、上司たちの姿から日々新たな“優しさ”を学んでいるのではないかなと思います。

取材日:2022年9月5日
矢崎真弓