【小鹿野】森脇南海子講演会~バイクにしかできない魅力を伝える!~

2022年10月8日、地元飲食店「バイク弁当」主催によるバイクイベントが、小鹿野町で開催されました。バイク部品メーカー・モリワキ仕様のバイクに乗れる「チョイノリ試乗会」などのほか、モリワキエンジニアリング専務の森脇南海子(もりわき・なみこ)さんの講演会が行われ、新しく立ち上げた「ライド・エイド」について語りました。

バイクの素晴らしさを熱く語る南海子さん
多くのファンの前で、バイクの素晴らしさを伝える南海子さん

南海子さんは、2輪部品・用品の大手メーカー「ヨシムラジャパン」の創業者、吉村秀雄さんの長女として生まれました。父親の弟子だった森脇護(もりわき・まもる)さんと結婚し、モリワキエンジニアリング(以降「モリワキ」)を設立。2輪や4輪車用の部品開発や製造販売をしています。モリワキは、2010年2輪レースの世界グランプリや、モト2クラスのチャンピオンマシンMD600を開発製造し、鈴鹿サーキットで開催される8時間耐久レースの歴史において、欠かすことができない存在です。

「世界では、最高峰のレースや市販車レースでも、日本製バイクの安全性や信頼性が高く評価され、日本の若者が優勝すると国歌「君が代」が流れ、日の丸が揚がります。しかしその様子が日本のニュースに流れないことが、残念で仕方ありませんでした」と南海子さん。

世界中のサーキットで数々の伝説を残してきたバイク「モリワキZ1000」レプリカが店内に常時展示されています
世界中のサーキットで数々の伝説を残してきたモリワキZ1000レプリカ。バイク弁当の店内に常時展示されています

鈴鹿災害支援バイク隊「ライド・エイド」誕生!

南海子さんは、2016年に兵庫県神戸にて開催された「バイク・ラブ・フォーラム」に参加しました。同フォーラムは、経済産業省や4バイクメーカー、2輪関係団体が2輪産業の振興と、会議で定めた課題目標の進捗状況を発表する場で、毎年行われています。

その発表で南海子さんは、東日本大震災や熊本地震、阪神淡路大震災の際、バイク防災支援部隊が被災地に出向き、救助や支援物資の運搬など、ボランティア活動をしていたことを知りました。深く心を打たれ、この機会にバイクへのイメージを変えられると確信したそうです。バイクが世の中の役に立つことを知ってほしいという思いから、地元・鈴鹿で、防災支援バイク隊「ライド・エイド」の立ちあげを決意したといいます。

「発足当初は、ボランティア団体として立ちあげました。しかし受け入れてもらえるかという不安もありました」と南海子さん。ボランティア団体では、活動する人の心構えや装備の準備が不十分という理由から、被災地での活動を断られてしまうこともあるからだそうです。

そこで信用される団体となるため、今後どのように活動をしていくべきかを鈴鹿消防本部に相談しました。「話し合った結果、ライド・エイドに所属するトップクラスのライダーとOB20人を、日本初の大規模災害対応団員、鈴鹿消防団(非常勤公務員)として活動できるよう、あらたに鈴鹿市の条例を変えていただき、団体をつくる計画を立ててくださいました」と、南海子さんは声を弾ませます。

選ばれたライダー20人は、消防本部指導のもと応急処置などの講習を受けたのち、非常勤公務員の消防団「大規模災害対応団員」として晴れて2018年に、鈴鹿市から正式に認定されました。
「鈴鹿市消防本部の協力があったからこそ、大規模災害対応団員をつくることができました」と南海子さん。現在隊員たちは、毎月鈴鹿市の地理確認や救急対応訓練などを、消防署指導のもと重ねているそうです。

新団体には、全日本トライアル10連覇の小川友幸(おがわ・ともゆき)選手や世界で活躍していた全日本ロードレースでチャンピオンに輝いている高橋裕紀(たかはし・ゆうき)さん、全日本モトクロスチャンピオンの小島庸平(こじま・ようへい)さんなどのOBが所属しています。

ライド・エイドについて語る南海子さん
ライド・エイドについて語る南海子さん。バイクに対する情熱が伝わってきます

バイクにしかできない活動を全国に広めたい!

災害支援訓練で、オフロードバイクを乗りこなす選ばれたライダーたち
災害支援訓練の様子。被災地での活動はオフロードタイプのバイクが活躍します

ライド・エイドの出動実績はまだありませんが、予想される大規模災害に備え、訓練をしているとのこと。今後は、情報収集の訓練に注力する「鈴鹿市消防大規模災害対応団員」と、防災支援バイク隊の「ライド・エイド」が、スムーズに連携できるような対策を考えていくそうです。

「ライド・エイドの活動を知ってもらい、ほかの県でも災害支援バイク隊の活動を広めていきたい。そしてバイクの利便性や活用方法を鈴鹿から全国に発信していきたい」と南海子さん。

夢は、日本各地の災害支援バイク隊が、鈴鹿に集まり全国大会を開くこと。そしてバイクの技術を活かして、警察官や消防など日本を守る職業につきたいと思う子どもたちを増やしたいという大きな夢もあるそうです。

◆取材を終えて

南海子さんは講演の中で、「バイクにしかできない地域支援をすることでバイクに対するイメージを変えたい」と何度も繰り返しました。バイクは世の中の役に立つということを、ひとりでも多くの人に知ってもらいたいのだといいます。
バイクに対するイメージが良くなるように、ライダーひとりひとりが協力し合うことも大切なことなのだと感じました。

取材日:2022年10月8日
田部井斗江