【ときがわ】この町をアウトドアタウンに!「キャンプ民泊NONIWA」「GRID」

新型コロナ対策で密集を避ける人が増えたことなどもあり、昨今、キャンプをはじめとするアウトドア活動がブームとなっています。一方、興味はあるけれど、何から始めていいか分からないという人も多いのではないでしょうか。

2019年6月にときがわ町に開設された「キャンプ民泊NONIWA(のにわ)」は、初心者向けのキャンプ施設。ファミリーでもソロでも、手ぶらで参加して道具の選び方や使い方、火の起こし方、テントの立て方などアウトドアの基本を教わることができます。

オーナーは、共にキャンプインストラクターの資格を持つ青木達也さん・江梨子さん夫婦。ときがわ町を気に入り、移住してこの仕事を始めました。江梨子さんは「インターネットでお勧めのキャンプ道具がたくさん紹介されていますが、自分のスタイルに合ったものがどれなのか分からず、選ぶのが難しいんです。私たちも困った経験があったので、キャンプを始めたい人を応援したいと思いました」と立ち上げのきっかけを話します。

日帰りキャンプから宿泊へ無理なくステップアップ

NONIWAは、二人が暮らす住宅の一部が民泊施設で、住宅前の庭がテントサイトです。

民泊施設内。道具のレクチャーを行うリビング(左)やキャンパー用のキッチンなどがあります

講習は、ステップ1が「日帰り」、ステップ2が「宿泊」です。「まず日帰り講習で、テントやタープ、テーブル、椅子など必要なキャンプ道具を実際に見て触って、自分たちに合うキャンプ道具を想像してもらいます。家族が多ければそれなりの量になりますから、今の車に積めるのかといったことも考える必要がありますね」と江梨子さん。参加者からは「現実を知ることができて良かった」といった声が聞かれるそうです。

家族がチームのように協力し合って準備をするのが、キャンプの醍醐味。それを味わってほしくて、最終的には家族みんなでタープやテントを立ててもらうようにしているとのこと。「最初あまり乗り気ではなかったお父さんが、講習の最後に『意外に楽しかった。宿泊講習も受けたい』と言ってくださったりするとうれしいですね」

景色の良い場所にあるテントサイト(左)と講習風景

宿泊講習では、必要な道具を全てレンタルし、キャンプ場で実際に1泊します。もちろん、さまざまな場面でサポートが受けられるうえ、外で寝ることに抵抗を感じた人や体調に不安のある人は民泊施設での宿泊も可能です。

キャンプ場の利用はメンバー制。講習を終えた人は登録となり、今後もNONIWAを利用することができます。メンバー制には、キャンパーが安心して過ごせるといった利点があるようです。

自然に親しむ人々が交差する新たな拠点がオープン

今年(2022年)10月10日、青木夫婦は同施設から程近い場所に、暮らしとアウトドアのお店「GRID(グリッド)」をオープンさせました。主導的に動いたのは、達也さんです。「NONIWAで活動するうち、ときがわ町をアウトドアタウンにしたいという目標を持つようになったため、アウトドアの視点から町の楽しみ方を提案していく場所としてお店をつくりました」と達也さん。

町の楽しみ方をイメージしたマップ(上)と、日常生活でもアウトドアでも使える道具が並ぶ店内

店内には、水筒やマグカップ、帽子、バッグなどのほか、不安定な地面上に置いても安定する脚付きの器や箸置きといった木製品も並んでいます。「ときがわ町は建具を中心とした木工加工が盛んなので、地元の作家と一緒に作ったオリジナル製品も扱っています。店名のGRIDは格子という意味で、建具からイメージして名づけました。町を訪れた人たちがここを中心として、格子のように交差してもらえるといいなと思っています」

二人が目指しているのは「私たちと同じような目線でときがわ町を楽しんでくれる人が増えてほしい」ということ。気負うことなく、自然体で町の魅力を発信しています。

「野あそび夫婦」のユニット名を持つ青木夫婦。ソロキャンプのハウツー本『ソロキャンプ大事典』を手掛けるなどアウトドア業界で幅広く活動中
◆取材を終えて

地元の人には見慣れた風景や当たり前の環境も、他から来た人が見たら価値が高いと感じることがあります。そこにさらに磨きをかけ、さまざまな方法でときがわ町の魅力を広く伝えているお二人自身こそ、町にとっての大切な“宝物”だと思いました。

取材日:2022年10月24日
矢崎真弓