安土・桃山時代から代々、米農家を営む小江戸南古谷農園。
代表の田中邦和さんは、栃木県の「NPO法人民間稲作研究所」で、化学合成した農薬や化学肥料を一切使わない、自然環境を生かした米作りを学びました。その経験を生かし、5年前から同農園でも地域に合った「地球にやさしい農法」をはじめました。白米栽培と並行して黒米(くろまい)とマコモダケの栽培も。
黒米は、その名のとおり見た目も黒い米です。
日本人が古代から食べていたといわれている古代米の一種で、白米に比べてタンパク質やビタミン、天然色素であるアントシアニンが豊富に含まれ、抗酸化作用があるといわれています。
マコモダケとは、「マコモ」というイネ科の植物で、タケノコのようなシャキシャキとした食感だそうです。
田中さんは、知人からお茶への加工を教わりました。「植物繊維が豊富なので腸内環境を整えてくれます。カフェインレスなので小さなお子さんでも飲めますよ」と田中さん。
やりたいことがたくさん。5つの計画のうち、1つ目が終わったところ
田中さんにとって、民間稲作研究所で学んだことを生かした栽培と、キッチンカーでの販売は、同農園をさらに発展させていく5つの計画のうちの1つ目なのだそうです。
2つ目の計画は、人が集まれる憩いの場所を作ること。近隣地域の高齢者をはじめ家庭菜園を営む人が、同農園で作物を販売しながらコミュニケーションを図れる場所にしたいといいます。その後3~5つ目の計画もあるのだとか。現在は1つ目の計画を終えたところだそうです。
田中さんが取り組むテーマに「農家の魅力をどのように後世に伝えていくのか」があります。近年の若者の農家離れに対し、自分になにかできないかと考え、まずは農家を知ってもらおうとキッチンカーでの販売を始めたそうです。
また、「未来の子どもたち、地球環境のために後世に伝える」というテーマも持ち、地域のこどもたちに、田植えや稲刈り体験ができる場も設けています。「子どもの時から土や自然に触れることの大切さを学び、体の免疫力をあげてほしいという思いでやっています」と田中さん。
仲間がいるから実現できている
黒米や真菰茶のほかにも、今年(2022年)からは黒米のクラフトビールの生産も始めました。「“黒ビール”ではなく、“黒いビール”というイメージです。さっぱりとした甘さで飲みやすいクラフトビールです」と田中さん。久喜市にあるビールの生産工場が製造を担っています。
農園のロゴやホームページを制作してくれたり、黒米ビールの製造を実現させてくれたり、手伝いに来てくれる仲間がいるからこそ、ひとつひとつ前に進むことができていると田中さんは語っていました。
◆取材を終えて 川越市内で行われたビールのイベントで、黒米のビールを知りました。爽やかで飲みやすいのが印象的でした。黒米のパウンドケーキは、小麦粉、バター、卵不使用です。 取材日:2022年10月14日 水越初菜