【鴻巣】たくさんの新しい命を大空へ放つために~コウノトリ野生復帰センター 

 “赤ちゃんを運んでくる鳥”としてのイメージがあるコウノトリ。かつては身近な鳥といわれていましたが、現在は環境省より絶滅危惧種の選定を受けています。 

鴻巣市は、コウノトリに縁のあるまち。コウノトリが災いから人々を守ってくれたという伝説が残っていて、市の名前の由来の一つとされています。そんな鴻巣市に、2022年1月、コウノトリを飼育する「コウノトリ野生復帰センター 天空の里」がオープンしました。どのような施設なのか、鴻巣市環境経済部環境課コウノトリの里づくり担当の主任・池田礎英(もとひで)さんと、同じく主任の栗原莉沙さんにお聞きしました。 

 コウノトリ野生復帰センターの入館料は100円。ただし中学生以下は無料 

 「空」と「花」。ペアのコウノトリを飼育中 

 コウノトリの飼育のきっかけは、平成22年に「コウノトリを鴻巣市の空に羽ばたかせたい」と願う市民団体から約2万筆の署名が市に提出されたことでした。その後、市が計画を練り、同センターの誕生に至ったということです。 

「ここは、コウノトリを飼育し繁殖させ、放鳥することを目的とした施設です。同様の取り組みをしている場所が兵庫県、福井県、千葉県野田市にあり、鴻巣市は全国で4番目、市としては2番目になります。現在日本には、約300羽のコウノトリが生息していますが、さらに増やすために貢献していきたいと思っています」と池田さんは話します。 

同センターでは、現在2羽のコウノトリを飼育中。東松山市にある「埼玉県こども動物自然公園」から譲り受けたつがいで、雄は「空」、雌は「花」と名付けられています。 
入館者は、ガラス越しに2羽の様子をゆっくり観察することができます。 

飼育中のコウノトリ。青の足輪が雄、白が雌。体長1.1mで、羽を広げたときの長さは2mあり、その大きさに驚く人も多いとか。世話は専門の飼育員が担当 

コウノトリを通して学ぶ自然環境 

「餌は冷凍のワカサギやアジが中心で、室内とケージをつなぐパイプから水場に流し入れて与えています。時間が決められていますが、来館者も同じ方法で“エサやり体験”ができます」と栗原さんが教えてくれました。 

コウノトリに関する資料などが展示されている「観察コーナー」には、野生のコウノトリの餌になり得る、ミズカマキリやナマズなどが入った水槽も置かれています。 

「コウノトリが定着している水辺などには、さまざまな生き物が生息できる自然環境があるということを伝えています。当センターは、地域の自然について学べる場でもあります」と池田さん。 

「多くの人に見に来てほしいです」と話す主任の池田さん(左)と、栗原さん。「観察コーナー」には、コウノトリの剥製や資料などが展示されています 

コウノトリの飼育を始めて2年目の2023年4月、初の産卵を確認。しかし、なかなかかえらないため、調べたところ無精卵だと分かったそうです。「2羽で協力し合って巣作りをし、産卵後も交代で卵を温めていて、私たちも楽しみにしていたのですが、残念でした」と栗原さん。 

池田さんは「産卵時期は冬から春にかけての年1回で、卵がかえったら80日くらいで巣立ちを迎えます。また来シーズンに期待しています」と話しています。 

◆取材を終えて
ガラス越しに見たコウノトリは、大きくてきれいでした。自然の中で見かけたら、ちょっとうれしくなると思います。取材日の少し前、7月2日と6日には鴻巣市にコウノトリが飛来したとのニュースもあり、同市との縁を感じました。鴻巣市からコウノトリが飛び立つ日を楽しみにしています。

取材日:2023年7月19日
矢崎真弓