【プラチナ企業】株式会社矢口造園 より良い会社を目指した先にあったプラチナ認定

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ企業」

埼玉県は仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方を実践している企業を認定する制度を設けています。認定項目は9つあり、その該当数によって、企業はシルバー・ゴールド・プラチナの3区分の中で認定を受けます。
彩ニュースでは、7〜9つの認定項目に該当している「プラチナ企業」を取材し、企業としての考え方と、そこで働く人の姿を紹介していきます。
第 1 回目の今回は「株式会社矢口造園」です。屋外での作業を中心とする同社には、どのような働きやすさがあるのでしょうか。北本市にある本社を訪ねました。

#01 株式会社 矢口造園

創業:1969 年 
業務内容 : 個人宅・公園・会社等の緑地管理、個人宅の作庭、植栽・移植、剪定・伐採・伐根業務など。現在、北本市から指定を受け、市内全域の公園管理を担っている
特徴 : 仕事の効率化を図る独自システムの導入、資格取得の支援、健康への配慮など

企業担当者にインタビュー

代表取締役 矢口光太郎さん
北本総合公園事務局長 稲生 豊さん

代表取締役      矢口光太郎さん
北本総合公園事務局長 稲生 豊さん

代表取締役の矢口光太郎さんと、同社が管理する北本総合公園で事務局長を務めている稲生 豊さんに、職場づくりや会社の強みについて伺いました。(以下敬称略)

――プラチナ認定を受けるために取り組んだことはありますか。

矢口 私はプラチナ認定を目指したわけではなく、良い会社にしたいという気持ちでその時代に合った制度などを取り入れてきました。以前に比べ、人材への投資が増えたのは、より人を大事にするようになったからだと言えますが、それは、良い会社を作るうえで当たり前のことだと思っています。同じことばかりしていると会社は後退しますから、少しずつでも良くしていければいいという考えです。

代表取締役の矢口光太郎さん

さまざまな取り組みで従業員の負担を軽減

――近年、残業を減らすことができたそうですが、どのようにして実現させたのでしょうか。

稲生 毎日、現場ごとに従業員が分かれて仕事をしているのですが、早く終わるところがある一方、残業になる現場もあり、以前はかなり非効率でした。そこで、誰が、どこで、どんな機材を使って仕事をしているかが一目で分かる、独自の業務管理システムを導入しました。いわゆるデジタルホワイトボードですね。情報を共有することで、先に終えた従業員が遅れている現場へ手伝いに行くことができるようになったため、効率化し、残業も削減できました。

矢口 手元のスマートフォンで1週間先、1カ月先の予定も分かるので、仕事への心構えもしやすくなったと思います。

一人一人の動きを分かりやすくした、独自の業務管理システム。休憩室内のディスプレーでも確認できる

――その他、従業員のために行っていることはありますか。

稲生 仕事に関わる資格取得に必要な受験料を全額負担しています。有資格者が多いのは、会社にとっても良いことですからね。また、昼食用の仕出し弁当の費用補助や、熱中症対策として現場へ持っていけるよう、氷を入れたスポーツドリンクなどの用意もしています。こうしたことは、ほとんど社長の発案です。事前に私にも相談がありますが、「いいと思います」と答えるばかりです(笑)。

氷とスポーツドリンクを入れる大型水筒、クーラーボックス(左)と自動製氷機

――貴社の強みを教えてください。

稲生 大きな会社ではありませんが、プラチナ企業なので働きやすく、一度入社したら長く勤められます。造園業は、まちづくりを支える仕事です。私は仕事を通して、北本市というまちの価値を上げていきたいと思っています。

矢口 弊社は、ソフト面からハード面まで自然相手の仕事で力を発揮し、倒木の撤去など自然災害への対応においても強みが発揮できると自負しています。今後も「地域になくてはならない」と言われる企業であり続けたいです。

社屋の前に立つ、大塚聡子さん(左)と稲生 豊さん

社員にインタビュー

土・日が休みで子育てと無理なく両立
会社の支援を得て、ステップアップもできます

土・日が休みで子育てと無理なく両立 会社の支援を得て、ステップアップもできます

営業課長 大塚聡子さん

営業課長 大塚聡子さん

プラチナ認定された企業では、どのような人が働いているのでしょうか。
社員の方に入社のきっかけや働きやすさなどを伺いました。

「何かのプロになったほうがいい」との助言から造園業へ

――現在、どのようなお仕事をしているのですか。

大塚 お客様先へ出向いて、樹木の伐採・剪定など工事の見積もりを行ったり、ご希望に応じた新しい庭の設計を手掛けたりしています。実際に工事が始まった後は、お客様のご要望を現場の職人たちに伝える、橋渡し役も務めます。

――造園業界で働き始めたきっかけを教えてください。

大塚 15年ほど前、今後の仕事について相談した知人から「何かのプロフェッショナルとして腕を磨いていったほうが良い」と助言してもらったんです。同時に庭園デザイナーという具体的な職種も教えてもらいましたが、当時は、チューリップとパンジーくらいしか知りませんでしたから、あまり興味を持てなかったですね。

でも、幼かった子どもたちと散歩をしていると、さまざまな花や木が目に入るため、名称を調べたりしているうち興味が出てきたので、エクステリア(外構)や造園を行う会社で働き始めました。

――その会社で造園の知識や技術を身に付けたのですね。

大塚 最初は先輩に付いて仕事を教わり、間もなく独り立ちしました。同僚は良い方ばかりで居心地は悪くありませんでした。ただ土・日にも仕事が入ったりして、双子の子育て中だった私には厳しい環境だったので、約5年働いた後、転職することにしました。

求人が出ていなくても積極的に行動して正社員で入社

―――造園の仕事を探したのですか。

大塚 造園業は休みが取りにくいと思い込んでいたので、別の業種で探すことにしました。自宅から離れた会社の事務職に決まりかけていたとき、北本総合公園で開かれたお祭りに参加して、その公園を管理している矢口造園の存在を知ったんです。「指定管理者制度」(※)という言葉も、そのときに初めて知りました。

――偶然の出合いだったんですね。

大塚 求人は出ていませんでしたが、どんな会社なのか聞いてみようと思って電話したんです。そうしたら、ちょうど1人くらい採用を考えていたとのことで面接してもらえることになりました。

土・日は休みで、子育て中の人への理解もあると聞き、ぜひ正社員として働きたいと思いました。面接では自分の書いた図面を持参して、必死にアピールしましたね。

(※)公の施設の管理・運営を代行させる制度

自身のデスクで。庭の設計などは、専用ソフトを使ってパソコンで行っている

受験料の支給を受け、女性の少ない業界で強みとなる資格を取得

――入社後、社内の制度を利用しましたか。

大塚 受験料の支給制度を利用して「1級造園施工管理技士」「2級土木施工管理技士」(いずれも国家資格)、「植栽基盤診断士」(日本造園建設業協会認定)を取りました。

見積もりのために私がお客様を訪ねると「何しに来たの」という目で見られたりしたことが、資格を取ろうと思った大きな理由です。以前に比べて増えたとは言っても、女性が少ない業界ですから。
いろいろな質問にもきちんと答えられることを知ってもらいたいので、名刺には資格名を全て入れています。

――まだそうした風潮が残っているんですね。普段のお仕事ではどのようなことを心掛けていますか。

大塚 常にお客様側に立つことです。予算など、いろいろな面からお客様の利益を最優先に考え、アドバイスさせていただいています。「ありがとう」「良くしてもらって」と、喜んでいただけるとうれしいですね。

――今後の抱負を教えてください。

大塚 最近、高齢のお客様から手入れができないという理由で庭木の伐採依頼が増えています。これからは、ただ切るだけではなく育てやすい木を提案するなど、できるだけ木を減らさないように考えていきたいですね。

株式会社 矢口造園

住所 埼玉県北本市古市場2-266
TEL 048-591-4593

株式会社 矢口造園

住所 埼玉県北本市古市場2-266
TEL 048-591-4593

取材を通して

社屋の建つ敷地は広々としていて、緑豊か。温もりを感じる木造りの休憩室には、仮眠ができるドア付きのスペースが確保されていました。会社が費用を一部負担している仕出し弁当は、冬には固形燃料を使った温かいメニューも提供されるそうで、従業員への配慮が行き届いていることがよく分かります。

同社には、育児休業を取得した男性従業員が在籍中。また、中学生の職場体験の場として学校に協力するなど、地域貢献も行っているとのことでした。従業員だけではなく、地域の人たちのことも大切に考えている企業であると言えそうです。

取材日:2021年6月24日
矢崎真弓