行田市吹上「ものつくり大学」近くに、本物の電車を改装した食堂「マスタード・シード」があります。
マスタード・シードは、からしの種という意味。ゴマのように小さな種が大木になるように、店も大きく育ってほしいという思いを込めて名付けたといいます。
真夜中に群馬県館林市から運んできた電車
荻原英子(ふさこ)店長は、アメリカ映画のワンシーンにあこがれをいだいていました。それは廃車になった電車のレストランで、ローラースケートを履いたホールスタッフがにっこり微笑みながら働いているシーンです。
そんな英子さんの思いを知ったご主人が、群馬県館林市に廃車となった電車があるという情報を入手し購入。とはいっても、群馬県から運んでくるのは大変だったようです。
群馬県と埼玉県に許可を取り、夜中の指定された時間帯に陸送。まるで電車が道路を走っているようだったとか。
そしてこの店をオープン。電車の外観がおもしろいと評判になりました。今年(2022年)で28年目になります。
内装にもこだわり。電車の雰囲気そのもの
外観だけではなく、内装にもこだわっています。列車の車内を思わせる向かいあった座席に仕切り。まるで、旅行中に電車内で食事をしているかのようです。
店には家族やカップルのほか、鉄道ファンも訪れるのだとか。
手作りパスタにこだわる、イタリアの田舎の家庭料理風メニュー
「おしゃれなイタリアンというより、田舎風の家庭料理を目指しています」と荻原さん。ハンバーグもピザもすべて自家製で、パスタも、機械と手打ちによる手作りなのだそうです。
人気メニューは、大きなエビが丸ごと乗っている「ジャンボエビドリア」。玄米ライスまたはバターライス付きで1250円です。ほかに「イタリアンつけ麺パスタ」980円も人気。
「手作りパスタを食べに来てほしいですね」と荻原さん。
店から子どもの声がするのがうれしい
荻原さんは、コロナ禍を経験して、店存続の危機を感じたそうです。だからこそ、店を訪れる人ひとりひとりに感謝していると話してくれました。
何よりうれしいのは、店から子どもの声がすることだそうです。
「電車というだけで楽しみに来てくれる子もいますし、お子さんにもたくさん来てほしいです。子ども用の椅子も用意しています」
◆取材を終えて 「コロナ禍で、一時子どもの声が全くしない日々が続いたのがとても寂しかった。だから今は嬉しいです」と目を潤ませていた荻原さんが印象的でした。 電車の中も、列車を思わせるような内装でワクワクしました。 取材日:2022年4月25日 水越初菜