人形の街として知られるさいたま市岩槻区。駅前をはじめ街には多くの人形店が軒を連ねています。毎年ひな祭りの時季に合わせて「まちかど雛(ひな)めぐり」を開催。今年(2023年)20周年を迎えます。
雛めぐりで「人形のまち岩槻」を地域ぐるみで活性化
岩槻には人形店の多さからも分かるように、その人形を作っている職人も多数います。
20数年前、全国的に雛めぐりイベントが始まる傾向にあり、岩槻にも人形やイベントに関する問い合わせが多々あったそうです。そこで、「人形のまち岩槻」をアピールするため、優れた職人がたくさんいることを知ってもらうため、そして中心市街地を活性化させるために岩槻でも雛めぐりが始まりました。
雛めぐりの3つのコンセプト「観る」「食べる」「創る」
岩槻の雛めぐりは、その名のとおり、自分の足で各店舗や料亭などに飾られているひな人形を観て歩くことがメインです。ルートは決まっていないので、スタンプラリーをしながら自由に見て回れます。お腹がすいたら、雛めぐりに参加している料亭や飲食店で雛めぐり限定メニューを味わうこともできます。
イベント期間中、岩槻人形博物館では「おひなさま絵付製作体験」や、「人形衣装でおひなさま体験」なども行っています。
見どころのひとつ「料亭ほてい家(や)」
「岩槻には新しいものもありますが、江戸時代のひな人形や、創作人形もあります。ひな人形と一口に言っても、いろいろな人形があるんですよ」と、まちかど雛めぐり実行委員会理事の水落(みずおち)恵一さん。
水落さんの案内で、見どころのひとつである「料亭ほてい家」を訪れました。店内に入るとエントランスにも、階段にもたくさんのひな人形が飾られていました。
ひな人形の飾り付け作業をしていた同店若女将の荒木由美子さんにお話を伺うことができました。
「20周年なので、岩槻の元祖である裃ひなを飾ろうと思いました。廃業してしまった人形歴史館・東久(とうきゅう)から譲り受けたものなのです。良い機会なので飾らせていただいています」と荒木さん。
裃ひなは岩槻に生まれた人形で裃を着用しています。豊作や養蚕祈願としても飾られ、農村部を中心に広く親しまれました。人形の座布団は1枚1枚手作りだそうです。
「ひな祭りのほか、5月の端午の節句、9月の重陽(ちょうよう)の節句もあります。端午の節句でも街中でイベントを開催予定ですので、ぜひ岩槻を訪れてほしいです」と荒木さんは話してくれました。
◆取材を終えて 取材時、雛めぐり参加店で季節限定メニューをいただきました。こんな楽しみ方ができるのも雛めぐりの時季ならでは。酒蔵資料館にはつるし雛やひな人形が飾られて風情があり、こちらもおすすめです。 取材日:2023年2月16日 水越初菜