“食べる力”がある人は、なにがあっても生き抜いていける
さいたま市緑区原山に、カフェ営業をしながら子ども食堂も行っている「古民家カフェ 藍」があります。
木材そのままの形を生かしたテーブル席や、いろり、畳のお座敷があり、手作りの陶芸品も並ぶ店内で、ハンバーグなどのランチセットやカフェメニューがいただけます。
実は代表の本間香さんは建築士として建築会社を運営しながら、カフェや子ども食堂の運営、埼玉県の子ども食堂ネットワークの代表も務めています。
元気でやさしい笑顔がトレードマーク。みんなから“カオさん”と呼ばれています。
子ども食堂というものを知ってから、ずっとやってみたいと考えていたというカオさん。
「夏休みに痩せてしまう子どもがいます。給食がないからです。浦和に子ども食堂は必要ないのでは、という声もありましたが、それなら浦和らしい子ども食堂をつくろうと考えました」
8人兄弟の長女として育ったカオさん。10人家族でにぎやかに囲む食卓でいろいろなことを学んだといいます。
「食べることは生きること。困難や壁にぶち当たっても、“食べる”ことができれば生き抜いていけるんです」
食べることの力と大事さを伝えたいと話してくれました。
人をつなぐ場、学ぶ場、生きる力を身につける場としての子ども食堂
カオさんの子ども食堂にはこんな特徴があります。
・陶器で食べる(モノを大事にするこころを育む)
・みんなで一緒に食べる(人と一緒に食べることの楽しさを知る)
・準備から片付けまでみんなでやる(ただお弁当を取りに来る場ではない)
・親以外の大人と関わり学ぶ(人との関わり、知ることの大事さ、その場を提供する)
※コロナ禍の今は、予約した人へのお弁当・食材の手渡しで対応しています。
「子ども食堂に行くことは恥ずかしいことと考える人も少なくありません。子どもを支援するためには子ども食堂のハードルを下げ、楽しい場にすることも大事」と話してくれました。
カオさんが切り干し大根や梅干し作りを、近所のおじいさんが大福の作り方を教えてくれます。手作りの楽しさに子どもたちは目を輝かせます。
ペットの殺処分をなくす活動から命の授業をしてくれる人、福島から防災の話をしに来てくれる人がいます。子どもたちはいじめや自殺はだめだということに気がつきます。
こんな風にいろいろな人が「私これできるよ」と力を貸してくれるそうです。
実際に子ども食堂のボランティアには、子ども、学生、地域の企業で働く人、新潟から駆けつける人、子ども食堂を始めようとしている人など、いろいろな方が参加しています。
子ども食堂で過ごし大きくなった子どもたちは、今度は自分にできることを携えて、次の子どもたちのために力を貸しに来てくれるといいます。
カオさんの子ども食堂がどんなバトンをつないでいくのか楽しみです。
◆取材を終えて 今回、私も娘(2歳)と一緒に子ども食堂のボランティアに参加させていただきました。娘は初めて会う大人に混ざって、ほぼ初めてのお手伝い。とても刺激になったようです。皆さんのお手伝いをするはずが、逆に多くの学びをいただき、このような場は本当に大事だと実感しました。こんな場所が身近にあるとなんだかとてもうれしく感じます。 取材日:2021年6月15、19日 小林聡美