【秩父】親子でみそポテトにこだわり続ける「みそぽてと本舗有限会社」

埼玉県秩父地方に古くから伝わるみそポテト。ジャガイモをふかして一口サイズに切り、小麦粉をつけて揚げ、みそダレをかけたものです。
農作業の合間など小腹がすいたときに食べる小昼飯(こぢゅうはん)の一つとして、秩父地域では当たり前のように食べられてきましたが、ほかの地域ではあまり知られていませんでした。

秩父名物が埼玉B級グルメ王に!

ほくほくのみそポテトは、秩父で一番人気がある小昼飯

みそポテトの知名度が上がったのは、2009年の「第5回埼玉B級ご当地グルメ王決定戦」で優勝してから。そのとき、秩父商工会議所からの依頼を受け、秩父市の代表として出店したのが、現「みそぽてと本舗」の新井広幸社長です。
しかし同社は初めからみそポテト専門店だったわけではありませんでした。

同社は1973年に「新井肉店」としてスタート。1977年には総菜部門を設け、みそポテトの販売を開始しました。
1984年からは地元スーパーの総菜コーナーに商品が並ぶようになりました。数ある総菜のなかでも一番人気はみそポテト。新井さんはみそポテトの冷凍食品化を考案し、遠方や道の駅などでの販売を成功させました。

2009年に秩父商工会議所から「埼玉B級ご当地グルメ王決定戦に出てみませんか?」と声がかかったそうです。このころはまだ、秩父以外の人にみそポテトはあまり知られていなかったので「小昼飯プロジェクトのPRとして参戦してみよう」と参加を決めたそうです。

その結果、みそポテトが優勝を飾り、その存在を広く知ってもらうきっかけになりました。
これを機に社名をみそぽてと本舗へ変更し、専門店としてスタートしたそうです。

みそぽてと本舗の新井広幸社長(左)と、2021年に建てられた同社の新工場

2015年世代交代! 専務真さんの決断

新井さんの息子・真(まこと)さんは、東京でサラリーマンとして働いていましたが、あるとき新井さんから跡を継いでほしいという話がありました。「サラリーマンの仕事が嫌になったわけではなかったので、かなり悩みました」と真さん。サラリーマンの仕事と自営業の仕事では考え方もやり方も違うため、大きな決断だったといいます。

跡継ぎを決めたきっかけは、子どもがいたことでした。「子育ては田舎の方が育てやすいと思いました。もちろんみそポテトの仕事も面白そうだと思いました」と真さん。家族で秩父に戻る決断をしたそうです。

真さんは、自ら営業やホームページの制作・更新などもこなしています。「ホームページを制作してから、大手飲食店チェーンからも声をかけてもらえるので、すごくありがたいです」とうれしそうに話してくれました。

同社では、皮むきは機械でおこないますが、ジャガイモを切る工程や串に刺す工程は手作業。機械作業では、どうしても手作りのようにはいきません。ひとつひとつを手作業で丁寧に製造することで、秩父で食べられている家庭の味に近づくのだそうです。
これからの目標をたずねると、「より多くの地域の人にみそポテトを食べていただけるよう努力していきたい」と力強く語っていました。

◆取材を終えて

みそぽてと本舗のホームページでは、みそポテトのレシピを秩父弁で紹介しています。
秩父弁が分からない人のために、標準語訳でも紹介されているので、秩父弁とレシピの両方が楽しめます。   

取材日:2022年1月26日
田部井斗江