埼玉県内にワイナリーがあることをご存じですか? なんと4軒のワイナリーがあります。
そのひとつが、「有機・発酵の里」として知られる小川町の「武蔵ワイナリー」。銀行員、経営者を経て、ブドウ農家とワイン醸造を始めた福島有造(ゆうぞう)オーナーが造るのは、添加物が一切加えられていない、シンプルでナチュラルなワインです。
農業研修を受けたことがきっかけ
「小川町で有機農業の研修を受けて、農業を始めました」と福島さん。小川町には有機農業生産グループがあり、多くの有機農家が所属しています。
「有機農業は環境が重要なので、やるならここ(小川町)がいいかなと思いました」と語ります。
農業経験がなかった福島さんは、興味があって、続けられる分野を目指すことにしました。酒造・販売するうえで、日本酒は新規での免許取得が難しいことがわかりましたが、ワインは新規で免許取得ができたそうです。
ワイン造りのために、2011年から荒れた地を開墾して、ブドウ作りを始めました。2013年に収穫したブドウから、2014年に初めてのワインが完成しました。
2019年にワイナリーが完成するまでは、ネット販売のみでしたが、売り上げを延ばすために「道の駅おがわ」のイベント会場を借りて「ワイン祭」を行うと、多くの来場者により、その日の売り上げが道の駅売店の記録を更新したそうです。 以降ワイン祭は開催場所を同ワイナリーに移して、これまでに7回開催。ワイン祭りによって徐々にその存在が知られるようになりました。
天候やブドウの収穫によって毎年変わるワインを楽しんでほしい
同ワイナリーの10カ所のブドウ畑では、小公子(しょうこうし)をはじめ、ヤマ・ソービニオン、メルローなど複数の品種を栽培しています。主力の「小川小公子」は、同ワイナリーを代表する定番のワインで、ベリーやカシスのような味わいを感じる商品です。
ブドウ収穫時期に雨が多い年は、ブドウが割れてしまい、酢のような酸味が入ってしまうこともあるようです。しかし、製造当初は評判が良くなかったワインが、年月をかけて熟成していくうちに、高評価に変わることもあるのだとか。
農産物であるブドウの収穫状態は毎年変わります。同ワイナリーのワインは、農薬や添加物を使わないため、天候などの影響をダイレクトに受けてしまいます。
「その中で、ベストを追求したワインの味やアルコール度数が毎年変わるのは当たり前です。それを楽しんでもらいたいです」と福島さんは語ってくれました。
100年先、200年先も存在して必要とされる会社にしたい
福島さんは、ワイナリ―運営と同時に、小川町にある日本酒の酒造の杜氏(とうじ)でもあります。
ワイン造りを始める前に、将来的にワインを造りたいので、勉強のために蔵人(くらびと)をやらせてほしいとお願いしたそうです。その腕前を買われ、当時の杜氏が引退するタイミングで、杜氏になりました。
長年銀行員として働いたのち、不動産事業経営を経て有機農業を始めた福島さん。今の思いを聞くと「食の安全をテーマに、100年先、200年先、もっと先も存在して必要とされる会社にしていきたいです」と話してくれました。
◆取材を終えて 毎年秋になると、紅葉狩りついでに県外のワイナリーを訪れていました。 埼玉県内にワイナリーがあるということを今回初めて知り、取材に伺いました。 店内では濃厚なブドウのジェラートも販売しているので、お子さん連れでも楽しめます。 また、工場見学は予約制で1人1000円。見学後に試飲もでき、ワインを買うと割引になります。 取材日:2021年10月17日 水越初菜