【子育て】成長に合わせ、離してはならないもの、離さなければならないもの

子育て家庭支援センター施設長
   村野裕子さん

子育ては自分育て

私がこの連載を通して子育て真っ最中の方々に伝えたいことは、「子育ては自分育て」だということ。

「こどもに育ててもらう」とよく聞きますが、こどもを育てることで本来の自分自身を取り戻す作業をしているのかもしれません。
大人になるにつれて自分自身をごまかしてきたこと、見て見ぬふりをしてきたこと、そういったことが子どもを通して露呈し、時につらくなるのです。

子育てはたいへんです。人間を一人育てるのだからたいへんで当たり前。多かれ少なかれこどもに関することで悩み、落ち込み、それをこどもの成長の喜びとでプラマイゼロにしながら頑張っているママやパパがほとんどだと思います。
けれど、気持ちが落ち込んだまま復活できない人や、生きていくのさえつらくなってしまう人もいるかもしれません。それは、こどもを通して露呈した自分自身の問題です。

そうならないためにも、ぜひ「私は私。あなたはあなた」を忘れないでください。私はあなたにはなれないし、あなたも私にはなれません。一人一人が唯一無二の存在です。

こどもを産んで、まずは覚悟が必要です。親になる覚悟、一人の人間を育てる覚悟、それと共に「わが子は自分とは違う、一人の人間だ」という覚悟。
そのうえで、自分を軸にする生き方に切り替えましょう。

少し冷たい言い方に聞こえるかもしれませんが、親子であっても他人なので、すべてを理解できるわけがありません。
「なんでこんなことするのだろう」
「なんでこんなにうるさいのだろう」
「なんで泣いてばかりなんだろう」…。

子育て中に出てくるさまざまな「なんで?」は、決して本当のところは理解のできない疑問です。
なぜなら、こどもはこどもの気持ちで動いているし、自分とは別の人格を持っているからです。すべて分かり合える方が不思議です。

自分とこどもは別の存在だ、と認識したうえで、親と子は程よい距離感を保つといいですね。
程よい距離感とは、こどもの年齢や性格によって変わります。今回、最後に紹介する『ネイティブアメリカンの教え』も参考にしてみてくださいね。

こどもと親の関係性は、「こどもがどのように人間形成をし、将来どんな人生を歩んでいくか?」に少なからず影響を与えます。
それならば、いい影響を与えたい!と考えるのが親の気持ちです。
だからこそ親はわが子にあれやこれやと手や口を出したくなります。

けれど、こどもには生まれ持った“自分自身で育つチカラ”があります。
乳幼児のとき、大人のお世話の手はもちろん必要なのですが、その子なりにより良い方へ伸びていくチカラは、どのこどもにも産まれながらに備わっているのです。

親はこどもの“自分自身で育つチカラ”を信じましょう!
ついつい手や口を出したくなる場面も多いですが、その時々のこどもをしっかり見て、「自分がしようとしていることは余計なことではないのか?」と考えましょう。

こどもをほめるとき、叱るとき、さまざまな場面で大人の役割は変わります。
こどもの存在そのものを認めながら、「あなたはそこにいるだけで価値があるのだよ」と伝えていきたいです。もちろん、これを読んでくれているあなたも、ただここにいるだけで大きな価値があるのですよ。

生きていく上で本当にダメなことは何か? そんな問いをパートナーと共に考えることも大切ですね。
自分や他人を傷つける行為は決して許されるものではなく、断固拒否すべきです。そんなときはためらうことなくストレートに思いを伝えましょう。

私は、日ごろから多くの親子と関わる中で、世の中は「愛」にあふれていると感じることが多々あります。
自分自身やわが子、その周りの多くの人たち、起こるできごと、囲まれている自然や物など、多くのことに「好き」を見つけながら「大好き」に囲まれて生きていく。そんな「愛」にあふれた生活を皆さんも送ってみてくださいね。

こどもの成長に合わせて関わり方を変え、適切な距離感を

この連載の最後に、私が心にとめている『ネイティブアメリカンの教え』をお伝えします。
こどもの成長に伴い、大人側の関わり方を見直していくこと、適切な距離感がよくわかる言葉です。

ネイティブアメリカンの教え

乳児はしっかり肌を離すな
幼児は肌を離せ、手を離すな
少年は手を離せ、目を離すな
青年は目を離せ、心を離すな

ネイティブアメリカンの教え

乳児はしっかり肌を離すな
幼児は肌を離せ、手を離すな
少年は手を離せ、目を離すな
青年は目を離せ、心を離すな

乳児期から青年期まで、離してはならないもの、離さなければならないものがあり、そのタイミングを間違えないことが親子共に心地の良い距離感でいられる秘訣です。

皆さんとお子さんとの毎日が、少しでも幸せなものになりますように!との願いを込めて6回の連載をさせていただきました。
孤独な戦いのように思える子育て期。あなたの身近にも、きっと応援してくれる人の存在があるはずです。

つらくてどうにもならないとき、きっとあなたを支えてくれる人がいます。
決して一人ではありません。
私も全力で子育て中の皆さんを応援していますよ!