【プラチナ企業】株式会社tree 子どもも保育士も楽しく過ごせる保育園でありたい

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。
彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材し紹介します。
今回は「株式会社tree(ツリー)」です。3つの保育施設を経営している同社には、どのような働きやすさがあるのでしょうか。川越市にある保育園を訪ねました。

♯03  株式会社tree
創業:2018年※事業開始は1996年 
業務内容 : 小規模保育事業所A型「つぼみ保育園」、事業所内保育所A型「陽だまり保育園」、一時保育・学童保育・子育て支援「ナーサリー陽だまりのお家」
特徴 : 職員の子どもを預かる事業所内保育所完備、子育てと両立しやすい職場環境、職員の意見を生かした保育など

企業担当者にインタビュー

代表取締役 岡田佐知子さん

代表取締役 岡田佐知子さん

代表取締役であり、つぼみ保育園の園長でもある岡田佐知子さんに、職場づくりや保育方針などについて伺いました。(以下敬称略)

「保育園に通ってくる子どもたちはもちろん大切ですが、職員も大切です」と岡田さん

「保育士は大変な仕事」だと思ってほしくない

――子育てと仕事を両立しやすい職場づくりに力を入れていらっしゃるそうですね。

岡田 私自身、子育てをしながら長く保育士として働いてきましたが、子どもが小さいときは大変だった覚えがあります。また、たくさんの子どもと触れ合うことに楽しさを感じていた保育士の中には、出産後、仕事を辞めて自分の子と1対1で向き合い続けるのが辛くなる人もいるのではとも考えました。「大変」「辛い」ではなく、うちの先生たちには楽しく働いてもらいたいと思っています。

――具体的にどのような働きやすさや、楽しさがありますか。

岡田 職員の子どもは事業所内保育所「陽だまり保育園」や、学童保育の役割も持つ「ナーサリー陽だまりのお家」を利用することができます。働き方も選べるので、家庭の事情で正職員からパート職員になり、状況が整った後、正職員に戻った人もいますね。

当園では、もともと園児の数に対して規定人数を上回る保育士を配置しています。人数が多いと、より子どもたちに手を掛けられるだけでなく、保育士の急な休みに対応しやすいので職場としても良いと思っています。

毎日のスケジュールを決めつけず、保育士のアイデアや考えを取り入れた保育を行っているのも特徴の一つです。子どもたちを楽しませるには、まず保育士自身が楽しむことが大切ですからね。

――細かな決まりごとがないのですね

岡田 そうですね。“お集まり”(子どもを集合させること)の場所は、一応、決まっていますが、例えば別の場所で子どもたちが盛り上がって遊んでいたら、わざわざ移動させなくて良いことにしています。特に入園したばかりで、まだいろいろなことが理解できていない子どもを動かそうとするのは大変です。無理をしなくても、少しずつルールが分かってくると、子どもたちは自ら決められた場所に集まれるようになるものです。

園児と一緒に遊ぶ岡田さん

――子育てと両立して働いている保育士は多いのですか。

岡田 保育士16人のうち半数が子育て中です。年齢は30代が多いですね。当園を利用されている保護者の方と同じく、保育士も“働くお母さん”です。そのことを保護者の方に、ついアピールしてしまいますね(笑)

――経営されている3つの保育施設のうち「ナーサリー陽だまりのお家」だけ認可外なのはなぜですか。

岡田 認可外と聞くと良いイメージがないかもしれませんが、直接、保護者と話をして子どもを受け入れることができるので、あえてそうしています。「里帰り出産で川越に滞在している1カ月だけ、上の子どもを預けたい」という場合などにも対応できるため、必要な場所ではないかなと思っています。3園を経営することになったのは、保護者のニーズに応えると同時に、保育士が楽しく働ける場を増やしたいという思いもありました。

――今後の目標を教えてください。

岡田 最近増えている発達障害のある子どもへの対応など、一つのことにとらわれず、ニーズに合わせて保護者の方のお手伝いをしていきたいと思っています。職場づくりとしては、職員の親の居場所をつくりたいです。子育ての次は親の介護がありますから。保育園と隣り合わせでつくり、おじいちゃん、おばあちゃんたちと子どもたちが行き来できるのが理想ですね。

社員にインタビュー

保育士を大切にしてくれる保育園だから、仕事も子育ても楽しむことができます

保育士を大切にしてくれる保育園だから、仕事も子育ても楽しむことができます

主任保育士 加藤彩美さん
保育士   倉林咲美さん

主任保育士 加藤彩美さん
保育士   倉林咲美さん

プラチナ認定された同社で働く保育士の方に、入社のきっかけや働きやすさなどを伺いました。

左から倉林さん、加藤さん。倉林さんは、4歳児の母で現在第二子妊娠中。加藤さんは、8歳児と5歳児の子育て中

保育士が力を発揮できる“フリースタイル”の保育

――保育士という仕事を選んだきっかけを教えてください。

加藤 3人きょうだいの一番上だったこともあってか、年下の子どもと遊んだりするのが好きでした。その気持ちが続き、短大に進学して保育士の資格を取得しました。

倉林 私は小学生のときには、将来保育士になると決めていました。ただ資格取得のために短大で学ぶうち「大変な仕事かも」と思うようになり、迷いが出ましたね。それでも卒業後は、ある保育園に就職しましたが、やっぱり大変だったので結婚を機に退職しました。

――いつからこちらで働いているのですか。

加藤 つぼみ保育園が、まだ家庭保育室(認可外保育施設)だった10年ほど前からです。その間に2人出産しました(笑)。上の子の産休・育休が終わり、復帰するタイミングで事業所内保育所を作ってくださったので、預け先を探す必要がなくなり、本当に助かりましたね。一緒に働いていた先生が私の子どもを担当してくれることにも安心感がありました。

倉林 3年前からです。保育園を辞めた後、一時期コンビニでアルバイトをしたのですが、物足りなさを感じてしまい、やっぱり保育士を続けようと考え直したんです。5カ所ほど保育園を見て回った中で最も雰囲気が良く、ぜひ働きたいと思えたのが、つぼみ保育園でした。長男が当時1歳だったので、事業所内保育所があるのも大きな魅力でしたね。

――ほかにどんなところに良さを感じていますか。

加藤 決まりごとがあまりなく、提案して許可されれば、自分で考えた保育ができます。仮装した子どもたちが街を歩く、ハロウィーンの行事は、私ともう一人の保育士で考えて実行しました。事前に協力してくれるお店にお菓子を預けておき、「子どもたちが来たら渡してください」とお願いしたんです。子どもたちは喜んでいましたね。その後、毎年少しずつ変化をさせながら楽しんでいます。また先日は「冬至に足湯をやりたい!」と意見を出した職員がいて、タライで足湯をしました。基本的にフリースタイルなんです(笑)

倉林 以前勤務していた保育園では、時間で区切って保育内容が決められていたので、この自由さに最初は戸惑いましたが、子どもたちはワクワクする体験ができますし、私たちも楽しいです。それから、休んだ保育士の代わりに、普段担当していないクラスに入ってさまざまな子どもたちに関わる機会があるのもいいですね。これもあまり他にはないやり方だと思います。

――保育士の数が多いからこそできることかもしれませんね。

園児に食事の介助をする加藤さん。給食は園内で手作りしています

やりがいある仕事を長く続けられる環境

――当園で働く楽しさを教えてください。

加藤 子どもたちが楽しめそうなことを考えてやってみて、実際に楽しんでもらえるとうれしいです。同じことをしても笑う子もいれば、怒る子もいますし、日によって反応が違ったりもしますが、たとえうまくいかなくても「じゃあ、次は別のことにチャレンジしよう」という気持ちになれますね。機械にはできない仕事だと思います。

倉林 同じ理由で、とにかく楽しいです。自宅にいても、自然に「次は保育園で何をしようかな」と考えてしまうのは、楽しいからでしょうね。ここで働くことができて本当に良かったと思っています。

――今後、どのように働いていきたいですか。

加藤 今後、家庭の状況に合わせてパート職員にしてもらうことがあるかもしれませんが、落ち着いたら、また正規職員に戻ったりしながら仕事を続けていきたいと思っています。

倉林 現在、産休・育休中で2023年1月に復帰予定です。復帰後は、事業所内保育所を利用して、楽しく働いていきたいです。

●株式会社tree
・つぼみ保育園
住所 埼玉県川越市連雀町12番地10
電話 049-222-5778
・陽だまり保育園 ・ナーサリー陽だまりのお家
住所 埼玉県川越市大手町7番地8 スペース桜102
電話 049-277-4223

取材を通して

同社では、目指す保育園として「子どもが楽しく毎日通いたくなる保育園」「保護者が安心して預けられる保育園」「保育士が輝ける保育園」を掲げています。取材を通し、これらは実現されていると感じました。

住宅を改造した園舎は、気の置けない親戚宅のようなくつろぎ感があり、子どもたちは元気に遊び、笑い、楽しんでいました。
コロナ禍により、3園のうち1園を一時的に閉めざるを得なかったときは、保育士が手遊びや体操をしている動画を保護者へ配信したそうです。不安を感じている子どもや親への何よりの励ましになったことでしょう。
2度の産休・育休を経て、やりがいを持って働き続けている加藤さんと、離職経験がありつつも、今「仕事が楽しい」と繰り返す倉林さんは、まさに輝いていました。

近年、保育士不足が叫ばれていますが、同社には求職者が多いとのこと。それは保育士を人として大切にする岡田代表の姿勢と、飾らない人柄があればこそだと思いました。

取材日:2021年12月23日
矢崎真弓