自然に囲まれた川沿いにある長瀞オートキャンプ場は、テントサイトだけでなくグランピングコテージやバンガロー、共有施設も充実しています。
手伝いから始まった、理想のキャンプ場へ向けての活動
「最近ではファミリー層や女性のソロキャンパーも増えています」と長瀞オートキャンプ場代表の伊藤文子さん。同キャンプ場は伊藤さんの義父母が始め、当初伊藤さんはその手伝いをしていたそうです。
2015年頃より少しずつ、キャンプ場の管理を任せてもらえるようになり、伊藤さんは区画整理から始めました。
区画に番号を打ち、それまでのざっくりとした予約スタイルから、きちっと区画番号で予約を取るスタイルへ変更しました。
そうした取り組みは徐々に認められ、グランピングコテージやキャンプサイトを大幅にリニューアル。男女別のシャワールームやオムツ替え&授乳ルームなどもつくり、伊藤さんの思い描く、利用者がくつろげるキャンプ場のスタイルに近づけていったそうです。
台風で押し流されたキャンプサイト
伊藤さんの地道な努力が少しずつ実を結び、キャンプ場に多くの人が訪れるようになりました。しかしそんなとき、思わぬことが起きてしまいます。
2019年10月12日に関東を直撃した台風19号が、近くを流れる荒川を氾濫させ、キャンプ場を容赦なく襲ったのです。
「キャンプサイトは全滅でした。45棟あったバンガローも無傷だったのは2棟のみ。管理棟にまで水が押し寄せ、土砂に埋め尽くされてしまいました」と伊藤さんは当時を振り返ります。被害状況を目の当たりにした伊藤さんでしたが、迷うことなく復興させようと決心したそうです。
復興には多くのボランティアやクラウドファンディングの協力もありましたが、被害区域が広いうえ、キャンプ場の中に重機を入れ、作業できるようになるまでが手間取り大変でした。それでも「次年度の4月には再開させる」という目標をかかげ、「やるしかない」と、前だけを見て作業を進めたそうです。
再開に向け、予約を4月分から受け付けましたが、新型コロナウイルスが流行したため延期。再開は6月1日となりました。
キャンプマナーと環境問題を考えるキャンプ場へ
伊藤さんは被災したことで、キャンプ場としての使命や環境問題を考えるようになったといいます。
たき火の灰を片付ける、ゴミを持ち帰る、木の枝をむやみに折らないなど、利用者にマナーを守ってもらえるような対策を考えて実践しています。
「大きなことはできませんが、キャンプの良い部分だけでなく、キャンプマナーや注意喚起などを発信するようにしています。また今後、初心者キャンパー向けにフリーペーパーをつくり、キャンプの楽しみ方やマナーを覚えてもらえるようにしていきたいと思っています。そうしたことが、長瀞オートキャンプ場の役割だと考えています」と、笑顔で話す伊藤さん。
「環境問題×アウトドア」をテーマに、川の掃除をしてからキャンプを楽しむイベントも開催しています。
◆取材を終えて ゴミの持ち帰りは「普段はできているゴミの分別を、出先では何でも捨てたり、燃やしてしまう人に気がついてほしいという思いから始めました」と、笑顔で話してくれた伊藤さんの言葉が心に残っています。今後キャンプをするときは、マナーを守り、訪れたときよりもきれいな状態にして帰宅したいと思います。 取材日:2022年3月28日 田部井斗江