【プラチナ企業】カネパッケージ株式会社 社員と自然環境に優しく手厚く

カネパッケージ外観

働きやすい職場づくりを実践「プラチナ認定企業」

埼玉県では、仕事と家庭の両立を支援するため、多様な働き方実践企業の認定制度を設けています。
彩ニュースでは、3区分された認定ランクの中で最高位の「プラチナ認定企業」を取材し紹介します。
今回は、「カネパッケージ株式会社」です。同社は、SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれる以前から、自然環境保護や地域貢献などさまざまな取り組みをしてきたことでも知られています。入間市にある本社を訪ね、お話を聞きました。

♯07  カネパッケージ株式会社
創業:1976年
業務内容 : 各種緩衝材の設計・試験・製造・販売、各種段ボール等の販売 ほか
特徴 : 有給休暇取得の奨励、育児・介護との両立支援、資格取得支援、フレックスタイム制、保養施設(リゾートホテル)の宿泊料負担など

【SDGsに関わる主な取り組み】

<環境対策>
プラスチック製から紙製への変更など梱包(こんぽう)材の素材見直し
梱包材のサイズ縮小
フィリピンでのマングローブの植林活動(現在1200万本) ほか

<再生可能資源の活用>
茶殻入りの紙製品の利用推進
卵殻入りのプラスチック製品の利用推進 ほか

<地域社会貢献>
段ボールシェルターや段ボール本棚の寄贈
ハンドベル演奏で福祉施設への慰問 ほか

<質の高い教育の提供>
従業員のマングローブ研究での博士号取得を支援
小学校での環境問題やモノ作りの授業 ほか

左の写真は「埼玉県SDGsパートナー」の登録証。右は素材を発泡材から段ボールへ変更した梱包材。これにより、CO2の排出量が約80%削減できたとのこと
は「埼玉県SDGsパートナー」の登録証。は発泡材から段ボールへ素材を変更した梱包材。これにより、CO2の排出量が約80%削減できたとのこと

企業担当者にインタビュー

総務経理部主任 神谷光代さん
業務部主任 市橋 忠さん

総務経理部主任 神谷光代さん
業務部主任 市橋 忠さん

所属部署で主任を務める神谷光代さんと市橋 忠さんに、福利厚生や職場環境などについて伺いました。(以下敬称略)

総務経理部主任の神谷光代さんと、業務部主任の市橋 忠さん
左から市橋さん、神谷さん

仕事も余暇も楽しめる職場環境

――御社は、福利厚生が充実しているそうですね。

神谷 「一生懸命、仕事をした後はリフレッシュしてほしい」という会長・社長の考えで、福利厚生が年々、充実しています。山梨県には保養施設があり、無料で宿泊できるため、若い社員も喜んで利用していますね。また、会社の全負担で福利厚生代行サービス会社と契約していますので、社員はレジャーや食事を安く楽しめるなど、さまざまなサービスを受けることができます。

市橋 サービスを受けるとポイントがもらえるのですが、それは個人でためて使って良いことになっているので、至れり尽くせりです(笑)。社長はよく「“徳のある会社、徳のある社員”を目指しましょう」と話しています。どちらかに徳(利益)が入ったら、もう一方の徳にもつながるという考え方ですね。

――いい環境ですね。「働き方改革」にも取り組んでいるのですか。

市橋 4年ほど前、事務職の社員の残業が増えたため、全体の仕事内容を把握することから始めました。そして限られた人に偏ることなく、社員全体にバランスよく業務を分配した結果、残業時間を3分の1程度に減らすことができました。

今年3月には、専門の講師を招いてセミナーを開催。男性社員に向け、積極的に育児休業や有給休暇を取るよう呼び掛けました。以来、「休んでください」と言うだけではなく、本人の希望を聞いて計画的に休む日を決めてもらうなど、休みやすい体制を整えるようにしました。

神谷 月1回、社会保険労務士を交えて「改善会議」と名付けた会議を開き、制度や働き方の見直しをしています。まだ古い制度が一部残っているため、話し合いながら今の時代に合ったものに変えていっています。どんどん働きやすくなっていくので、社員としては幸せですね。

1階フロアには、パッケージコンテストでの受賞や社会貢献における表彰などで得た、数多くの表彰状等が並んでいます
パッケージコンテストでの受賞や社会貢献における表彰などで得た、数多くの表彰状等が並ぶ1階フロア

――どのような社風ですか。

市橋 従業員の提案などは、大体話を聞いてくれますね。私は社長や常務から「会社案内」などパンフレットや資料等の作成を頼まれることが多いのですが、内容や作り方について提案すると、「いいですね」と言ってもらえます。ほとんど駄目と言われたことはありません。

神谷 社長と直接、話をしてすぐ実行に移せるのは、中小企業だからこそできることだと思います。また定年退職後、希望すれば働き続けることも可能です。以前、倉庫業務に就いていた77歳の方は、今、社内清掃で活躍してくれています。その姿を見ていると、自分も働き続けられそうだと思えますね。

――今後、取り組んでいきたいことを教えてください。

市橋 社内では、手書きの伝票など紙でのやり取りがまだ多いので、DX化(※)をもっと進めていきたいですね。

神谷 同じです。私の部署では在宅勤務ができるよう、少しずつ取り入れてはいますが、重要書類が多く、なかなかハードルが高い状況です。でも、社員や会社にとってメリットが大きいので、しっかり取り組んでいこうと思っています。

(※)DX化=デジタル技術による業務や組織等の変革

社員にインタビュー

社員の気持ちに寄り添ってもらえる職場で、やりがいを持って働いています

社員の気持ちに寄り添ってもらえる職場で、やりがいを持って働いています

設計部主任 荻野雄貴さん
営業部 石原圭亮さん

設計部主任 荻野雄貴さん
営業部 石原圭亮さん

20代の社員の方に、入社のきっかけや働きやすさなどを伺いました。

社員の設計部主任・荻野雄貴さんと営業部・石原圭亮さん
左から石原さん、荻野さん

仲間との密な連携で唯一無二の梱包材を提供

――入社のきっかけを教えてください。

石原 段ボール箱のメーカーに勤務していましたが、同じ梱包業界で海外展開をしている弊社に興味を持ち、3年前にこちらに転職しました。営業職は、自分の希望です。前職も営業だったので、経験が生かせると思いました。

荻野 大学を卒業し、新卒で入社しました。もともとモノ作りが好きだったことと、弊社の技術力に関心を持ったことがきっかけです。環境問題に取り組んでいる会社だという点にも魅力を感じました。

――どのような仕事をしているのですか。

石原 主な営業先は、医療機器メーカーです。MRI装置から呼吸器やメスといった小さな製品まで、安全かつ低コストで作れて運べる梱包材を提案しています。また例えば、お客様がSDGsの観点から「プラスチックではなく紙製の梱包材を」と望まれた場合は、それを設計部に伝え、要望に沿うものを作ってもらいます。

荻野 私の仕事は、営業担当が伺ってきたお客様の要望に応えたうえで、付加価値のある梱包材を設計することです。具体的には、運びやすさや製品の取り出しやすさなどですね。梱包材は、“縁の下の力持ち”。目立ちませんが、なくてはならないものだと思っています。

弊社の梱包材は、ほぼオーダーメードです。使う素材も数多くの種類から選びます。マニュアル化はできませんが、設計部6人の観点や個性が異なるため、同じオーダーでもさまざまな発想のものが出来上がりますし、それぞれ得意分野もあります。それも強みだと思います。

石原 弊社では、“包む技術で、お客様へ「驚き」と「感動」と「安心」を”のフレーズを掲げています。これは営業部と設計部の共通認識になっていますね。

振動試験機や圧縮試験機などの機器でテストする荻野さんと石原さん
社内には、振動試験機や圧縮試験機などの機器が充実。試験をしながら、二人で意見交換することも多いとか

――チームワークが良いですね。どんなときに仕事のやりがいを感じますか。

石原 同業他社の梱包材を使っていた医療機器メーカーから「出荷直前になって、強度が足りないことが分かったので作ってほしい」との依頼を受けたことがあります。納期も短く、ほかの会社なら断っていた仕事かもしれませんが、設計部と連携して対応し、先方の希望日より1日早く納品することができました。「うちならできる!」という自信がつきましたし、以来、そのお客様からは多くの注文をいただけるようにもなりました。

荻野 どうすればお客様に喜んでいただけるかを考え、設計していますので、出来上がったものを評価してもらえると達成感があります。

また以前、カードゲームのイベント用ケースを大手ゲームメーカーに提案し、採用された経験があります。目を引くよう、インパクトのある形状にしたのですが、実際にケースが店頭に並んでいるのを見たとき、この形で正解だったなと思いました。弊社の売り上げに貢献することができましたし、2020年日本パッケージコンテストで「POP・店頭販売包装部門賞」を受賞できたのも良かったです。

左の写真は、荻野さんが手掛けたカードゲームのイベント用ケース。右は、落下試験機を操作する荻野さん
荻野さんが手掛けたカードゲームのイベント用ケース(左)と、落下試験機を操作する荻野さん

好奇心や向上心を支援してくれる、うれしい制度も

――御社はどんな点が働きやすいと思いますか。

石原 大手企業に負けないくらい福利厚生が充実していると思います。私は社内のゴルフ部に入っているんですが、大会を開くときは会社が費用を出してくれます。いろいろな面で、社員の希望をかなえてもらえる会社です。

以前、「エッグドロップ」(※)の強度を確認したいという設計者の希望を受け、会社がヘリコプターをチャーターして、200m以上の高さから落としたこともあると聞きました。

(※)エッグドロップ=紙で作った容器に卵を入れて高所から落下させる実験

――それはすごいですね。

荻野 弊社には「チャレンジ制度」という制度があるんです。目的がはっきりしていれば、会社は基本的にオールOKの姿勢で、社員の向上心を後押ししてくれます。講習会の受講や資格取得の費用なども負担してもらえますね。私は品質に関する勉強をしたいので、近々、申請しようと思っています。

ほかにも、いろいろな経験をさせてもらえます。弊社が取り組んでいるフィリピンでのマングローブの植林活動に、従業員は必ず一度は参加します。私の場合、帰国後、視野が広がり、人や物に対してさまざまな見方ができるようになりました。こうした機会を与えてもらえるのは、ありがたいです。

――今後の目標を教えてください。

荻野 上司も話していますが、社内のDX化をもっと進めたいです。仕組みを見直して改善すれば、さらにお客様対応のスピード感も増すと思います。また海外拠点との連携をより強めていくことも考えています。

石原 AI(人工知能)の発達によってドローンやロボットが作られると、それらを配送するための梱包材が必要になります。今後は、こうした業界を営業ターゲットにして攻めていきたいですね。高価な製品を守る梱包材に付加価値を付けてご提案できれば、素晴らしいと思います。

ドローンを運搬するための梱包材と、展示会用に作成したビー玉を転がして楽しむおもちゃ
はドローンを運搬するための梱包材。は展示会用に作成した、ビー玉を転がして楽しむおもちゃ

カネパッケージ株式会社
住所 埼玉県入間市南峯1095-15
電話 048-753-3878

取材を通して

社員が伸び伸びと働ける職場環境づくりと、SDGsにつながる活動。同社は、どちらにも力を入れ、両輪のようにして取り組みを進めている企業です。例えば、営業で使う車をすべてハイブリッドカーに入れ替えただけではなく、社員が個人的にエコカーを購入した場合も補助金を支給しているそうです。

各部で主任を務める神谷さん、市橋さんは長く勤務しているからこそ、年を追うごとに職場環境が改善されていくのを実感されていました。また若手社員の荻野さんと石原さんは現在独身ですが、男性社員の育児休業取得が推進されているため、お二人とも「そうした状況になったら、ぜひ利用したい」と話してくれました。

社内には有志で作る「ハンドベル部」があり、本社への来客を演奏とともに出迎えているとのこと。現在は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、休止しているそうですが、ユニークで自由な社風であることが伝わってきました。次回、訪問する機会があれば、ぜひハンドベルの演奏をお聴きしたいと思います。

取材日:2022年6月10日
矢崎真弓