西武狭山線・下山口駅から徒歩15分ほど。県立狭山丘陵いきものふれあいの里センターは「荒幡富士市民の森」内にあり、指定管理団体「公益財団法人トトロのふるさと基金」が2006年から運営・管理しています。
同センターの管理地はセンターエリアのほか、テーマを持つ5カ所のスポットが点在。東西約13kmの連絡歩道で結ばれ、それぞれを巡ることができます。
センター棟には、展示室や観察バルコニーなどを併設しています。そこでは、狭山丘陵の豊かな自然と生きものについて学び、理解を深めることができます。
夏休みはスポット②「虫たちの森」がおススメ
5カ所あるスポットは、それぞれ季節ごとに合った楽しみ方があります。気候の良い春や秋は、各スポットを歩いて巡るのがおススメですが、暑い夏は、スポット②の「虫たちの森」をピンポイントで巡るのが人気だそうです。多くの人が、カブトムシやクワガタなどの甲虫類を探しに来るのだとか。また、涼しい雑木の森を散歩コースにする人も。
夏休みの自由研究のヒントがあるかも!
センターには夏休みの自由研究の相談に訪れる人も多いそうです。
「何を研究したらおもしろいですか?」という質問から、アリについて知りたいなど具体的な相談までさまざまだといいます。
「セミの抜け殻をつかったジオラマ仕立てがおススメです」と須賀さん。抜け殻を発見した場所や成虫が好きな場所を再現するそうです。
イベントも盛りだくさん
今年(2022年)の8月は「セミ観察会」、9月は「バッタを探そう」という企画を予定しています。セミ観察会は、夜の森でセミの羽化を観察するという企画、バッタを探そうでは、草むらにいるバッタを、手作りの釣り竿で釣って観察するのが目的だそうです。
5つの村の思いをひとつに「荒幡富士」
センターエリアには史跡もあります。センターから徒歩5分ほどの場所に、人造の山「荒幡富士」があります。
もともと荒幡村(現在の所沢市荒幡)は明治の町村合併で近隣の5村がひとつに合併されてできました。5つの村には小宮ごとに神社がありましたが、村民の人心統合のために新たに浅間(せんげん)神社を建立し、合祀(ごうし)するため、旧浅間神社境内にあった富士山をさらに大きくして移築することになりました。村民たちが力を合わせて手作業で移築。およそ15年の歳月がかかりましたが、1899年(明治32年)に完成しました。
荒幡富士は1923年(大正12年)の関東大震災により、8合目まで崩れましたが、2年をかけて修復されました。修復後5合目を標す石碑の発見により、5合目のみ石碑がふたつ並んでいます。
いきものふれあいの里センターがある狭山丘陵とは?
東京都と埼玉県の境に、およそ3500ヘクタールのラグビー場に広がる独立した丘陵地です。雑木林や谷戸、湿地といったさまざまな環境から形成されており、そこに暮らす生き物は、植物約1000種、昆虫類約1000種、鳥類約200種が見られます。市街地のなかに浮かぶ「緑の島」のように残された首都圏を代表する自然環境となっています。
「“住宅地のすぐ隣にある自然”というのが狭山丘陵の魅力のひとつです。気軽に訪れていただきたいです」と須賀さんは話してくれました。
◆取材を終えて 山道を歩いていると、ナラの木の幹にシートが巻かれているのを見たことがあると思います。環境問題となっている「ナラ枯れ」対策のためだそうです。幹に薬剤を注入することにより、“カシノガキクイムシ“の繁殖を防止します。 須賀さんによると、狭山丘陵はスタジオジブリ作品『となりのトトロ』にゆかりのある場所でもあるのだそうです。想像を膨らませながら巡るのもおもしろいですね。 取材日:2022年7月7日 水越初菜